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転生暗殺者のゲーム攻略  作者: 武利翔太
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第四十五話 害虫駆除

 砂から頭と思われる部分と胴体の一部を出し、鎌首をもたげるように俺達を見据えるクソデカ砂漠ムカデ……名称としては『ギガントデザートワーム』らしい。ホントにクソデカ砂漠ムカデじゃん。

 それに相対するは平均身長は一七〇センチにも満たない、大ムカデから見ればゴミのようなサイズのプレイヤー四人。

 見た目から言うならば、大ムカデがプレイヤーを蹂躪して終わる見るまでもない戦い、否、戦いとして成立もしないだろう。


 しかし、武器に防具、魔法にスキル、数多の前提条件が変わればその結末も当然のように変化する。


「まずは私からね。〈タウント〉」


 その言葉と共に前に出たハキルが、大盾を前に突き出してスキルを発動させる。

 大盾から放たれた光はムカデにまとわりつき、大ムカデは煩わしげに身体を捩らせる。


「ほらほら、こっち来なさい!!」


 ダメ押しに煽るように大盾を片手斧で叩く。

 それで大ムカデは怒りが頂点に達したのか、目を血走ったように輝かせながらハキルに向かって突進する。

 言ってしまえばただの体当たりでしかない攻撃だが、その体格に相応しい質量を持ってすれば、人間一人をミンチ肉にすることなど容易いだろう。

 しかし、明確に死を与える脅威が眼前に迫ってもハキルに怯えた様子は無い。

 その顔に浮かぶのは━━愉悦を伴った笑みのみ。


「〈フルスウィングバッシュ〉!!」


 ハキルが選んだのは防御でも回避でもなく迎撃。

 武器とするのは片手斧ではなく大盾。

 右手を大きく後ろに引き下げて溜めを作り……弾かれるかの如き速度で突き出された大盾が大ムカデを強く打ち据え、大きく弾いた。


「相変わらず殴りごたえのある硬度してるわね」


 いつものハキルからは考えられぬ好戦的なセリフはそっと聞き流すことにした。


「リヒト! 作戦は!?」


「囲んで殴れ! 作戦は以上だ!」


『作戦は異常だ』の間違いではなかろうか。

 だが、シンプルでわかりやすいのは大歓迎だ。


 リヒトの指示を受け、ハキルを除いた全員が大ムカデを包囲するように散開する。

 さてここで問題、ハキルによって弾かれた大ムカデ君が体勢を整えないまま隙を晒しているとどうなるでしょうか?

 正解は━━


「オラオラブッ飛べ!〈クレセント・シャイン〉!」

「〈ヒートジャベリン〉!」

「〈ゲイルランス〉!」

「【詠唱破棄(スペル・キャンセラー)】【二重詠唱(ダブル・スペル)】……〈ダークネス・ハウリング〉!」


 ━━『包囲されて集中砲火を喰らう』でした。


 三日月型の光の刃、火と風の槍、二重になった闇の衝撃波。

 五つの魔法が同時に着弾し、大ムカデが身体を地に伏せる。


「ユカ、何が掛かった?」


「ええっと……一個は〈毒〉……は意味無いから置いといて……あ、もう一個〈鈍足〉引いた! ラッキー!」


「よーし、囲め、殴れ、ぶっ叩け!」


 蛮族もかくやと言わんばかりの号令で全員が駆け出す。

 〈鈍足〉という名前からして多分AGI下げるデバフなんだろう、言われてみれば大ムカデの速度がいささか落ちている……ように見える。

 元から大して速くもないから意味無くないかコレ。

 まあ、それはともかくとしてあとはコイツを始末する算段だが割とどうにかなりそうだ。

 俺の魔法で揺らぐくらいの耐久力なら【一撃必殺】込みの火力で破壊できる。


「これからどうする気だ?」


「頭が届く位置に来れば一撃で()れるから、頭を下げさせるとこからだな」


「なら、俺が頭を叩く。怯ませるか頭の位置を固定してくれ」


「それじゃあちょっと準備しようかな。その辺は私の仕事だからね」


「じゃあ私が怯ませるわ。【隠蔽】」


 瞬間、ハキルの気配が若干薄くなる。

 【隠蔽】……他人が使うのを見るのは初めてだが、こんな感じなのか。

 そして、ハキルが気配を消したことで大ムカデの意識……ゲーム的に言うならヘイトは他の三人に分散される。

 その間を繋ぐのは俺の役割だ。


「【飛刃】!」


 大ムカデの頭にクリーンヒットした斬撃が甲殻に傷をつける。

 ダメージはほぼ無いだろうが、いきなり攻撃を食らったことに対して腹を立てたのか、その犯人……つまりは俺に視線を向ける。


「ヘイヘイヘイ、お~にさんこちらっ、手の鳴るほうへっ♪」


 実際に呼んでいるのはムカデだが、やはりキレたようで俺に明らかな怒りの形相をみせる。

 煽り耐性絶無かよコイツ。


 俺は【飛翔走】を使用して空中機動に移行する。

 数値ならコイツの数倍はあるだろうAGIを最大限に活用し、大ムカデの頭の周りをグルグルと回り続ける。

 すると、大ムカデは攻撃する場所を見極められないのか、その場に苛立たしげに睨みつけるだけで一向に攻撃してこない。

 おいおい、そんなんじゃダメだろ。

 たかだか自分の数倍くらいの速度なんだ、目で追って偏差撃ちでもして見せろ。

 うちのパーティのリーダーはちょっと前になんかのFPSで爆走中の車の運転手の頭を狙撃してたぞ。


 そんな昔話はさておき、注意を引き付けるという目的はほぼほぼ達成できてる。

 大ムカデからしてみれば俺は『大したダメージを与えてこないくせに自分の周りを飛び回り続けるクソウザい虫けら』だ。

 そんな相手がいたら苛ついて殺したくなるし……周りが見えなくなる(・・・・・・・・・)のも仕方ない。

 その代償を思い知らせるのは俺ではないがね。


「〈ブラスト・バッシュ〉!!」


 砂漠の戦場に再び轟音が響く。

 しかし、それを成した者は違う。

 二度目の轟音を生み出したのは━━【隠蔽】を発動させて大ムカデの身体の根元に走り込んでいたハキル。

 炎を纏うぶん殴られた瞬間に爆裂する大盾とかいう炸裂装甲(リアクティブアーマー)もビックリなアーツで大ムカデの胴体の甲殻を爆砕……あれ【破壊属性】持ちかよ、殺意高過ぎじゃね?


 爆裂打撃で大ムカデが怯む。

 時間にすれば一秒そこら、俺が頭の上に回り込んでぶっ叩くにはいささか短いが、この隙のために魔法を待機させていた奴がそれを発動させるには十分だ。


「【詠唱破棄】、〈アース・バインド〉、〈ダーク・チェイン〉! あ、追加で〈アクア・ジェイル〉も使っとこ」


 待ち構えていたユカの宣言で魔法が起動する。

 大地から生えた砂の腕が、黒いモヤを纏う闇の鎖が、そして酷く付け足し感のある水の檻が大ムカデを縛る。

 レベル七〇オーバーの完全魔法特化型が使う拘束魔法、それが三つともなれば純粋なステータスのみに全リソースをブッパしたみたいな大ムカデも簡単には抜け出せない。

 どうにか抜け出そうと身体をくねらせても、多少魔法が揺らぐ程度で砕ける兆候すら見せない。

 そんな憐れな姿の大ムカデを見て、俺とリヒトは互いに頷き……即興で確殺陣形を組み上げる。

 悪いな、敵性反応生物に大して情け容赦かけるような奴はこのパーティには居ないんだ。


 【飛翔走】で空を踏みしめて大ムカデの頭上に跳躍、魔法のエフェクトや身動ぎする大ムカデを避けながら頭部に飛び乗る。

 俺の役目はコイツの頭を伏せさせること。


「盛大にぶちかますぞ!! 〈エアプレッシャー〉!!」


 俺が選んだ魔法は〈エアプレッシャー〉。

 ダメージ性能はカスであるがノックバック性能のみが異常に高いというちょっとおかしな能力をした魔法を持ってして、大ムカデの頭をぶっ叩く。

 あまりの衝撃にさしもの大ムカデも耐えかねたようで、常に高い位置を維持していた頭が少しずつ下がっていく。

 そして、その頭の下には……黄金の騎士剣を抜き放った白鎧の騎士がいる。


「合わせろよアレン!」


「いや、お前が合わせろよ」


 頭の下は見えないんだよ……と言おうとしたのだが、その言葉は飲み込むことになる。

 リヒトの騎士剣から光が溢れ出したからだ。

 ああ、これなら確かに頭の上からでも見えるわ。


 さて、あとは俺の攻撃態勢を整えるだけだ。

 狩りはまだまだ続くため、一日制限のスキルは使わないでおく。

 【隠蔽】【ハイドアタック】そして【一撃必殺】。

 追加でアーツを発動させればこの大ムカデの頭くらいなら叩き割れる。

 さあ、幕引きだ、盛大に葬ろうか!!


「沈めクソムカデ!! 〈フェイタル・スラッシュ〉!!」


「派手にぶっ飛ばすぞ! 〈シャイニング・ブレイバー〉!!」


 俺の短剣とリヒトの騎士剣、二つの剣閃が大ムカデの頭を挟み潰す。

 盛大にダメージエフェクトを撒き散らしながら大ムカデの巨体が爆ぜ、それでもなお収まらない光の刃の余波が吹き出し……って待て待て待てぇ!?


「おわぁ!?」


 消えかけた大ムカデの頭を蹴ってどうにか光の剣域から逃れる。

 あっぶねぇ、敵倒したのに味方の攻撃の余波で死ぬとか笑い話にも……なるな、ゲームだったらケラケラ笑いながら話せることだ。


[経験値が一定に達しました。アレンはLv53からLv55にレベルアップしました]

[熟練度が一定に達しました。【風纏戦技Ⅰ】が【風纏戦技Ⅱ】にレベルアップしました]

[【風纏戦技Ⅱ】に到達したことにより、アーツ〈風纏〉が開放されました]


 お、一気にニレベルアップ?

 すげえな、一体倒したくらいじゃほとんど上がらなくなってたのに。


「どうだ? レベル上がったか?」


「今通知来たよ。一気にニつ上がった。これはすごいな。普段はうるさいが、一気に上がると嬉しいもんだな」


「その通知消せるぞ」


「え、マジで?」


 リヒトに言われた通りに設定を操作すると、『レベルアップアナウンスの有無』という項目があった。

 やっぱちゃんと設定とか見とくべきなんだな。

 開発陣にプレイヤーの頭を破壊することを目的にしている狂人はいないようで何よりだ。


「さあ、これで第一回レベルアップツアーが終わったわけだが……もちろんまだいけるよな?」


 リヒトがニヤリと意地の悪い笑みを浮かべる。

 ここまで分かりやすい挑発されたら……乗るしかないよな?


「当たり前だろうが。まだまだ行くぞ!」


 俺は同じように笑いながら次なる獲物へと意識を向けた。

 ちなみにリヒトのレベルアップツアーは何度も休憩を挟みながら現実時間で一〇時間ほど行われた。

 アイツ体力無限かなんかなの?

 なおハキルとユカは三時間くらいで離脱していた。

さあさあ、今日は書くことが多いぞ!


○この狩り場が知られていない理由について

 理由は二つ。一つは単純にムカデが強いこと。リヒト達はザコみたいに扱ってますが、適正レベルのプレイヤーが戦えば簡単にモグモグされるくらいの力はある。もう一つは砂漠という環境が戦いづらいこと。足さばきが自由にできないというのは前衛プレイヤーにとっては死活問題。特に速度特化型は強みが完全に死ぬ。だけど、リヒトとハキルはどうにでもなるし、アレンに至っては空中跳んでるから何の意味もない。


○大盾スキル

・〈タウント〉

 簡単に言うなら挑発スキル。ヘイトを自身に向けて他を守るためのスキル。

・〈○○バッシュ〉

 大盾系統の攻撃スキル。大抵の武器とは違いSTRではなくVITを参照してダメージを与える。そうじゃないとVIT特化型が死ぬため当然とも言える。けど、大抵の大盾使いはオフハンドに別の武器を持つからSTRも上げる。大盾両手に持つ奴もいる。


○【詠唱破棄(スペル・キャンセラー)】【二重詠唱(ダブル・スペル)

 どちらも魔法使いがよく使うアクティブスキル。MPを消費して詠唱無しで詠唱アリと同じ威力を出したり、同じ魔法を二回撃ったりする。他にも単純に魔法の能力をあげる【魔法強化(マジック・ブースター)】なとが存在する。

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