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転生暗殺者のゲーム攻略  作者: 武利翔太
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第四十一話 見た目と速さは比例しない

「よし、この辺でいいかな」


 セーブポイントの設定を済ませた後、第三層の街から出てすぐ、リヒトがそんなことを言った。

 この辺になんかあるのかと思って辺りを見回すが、あるのは岩やさしてレベルの高くないモンスターだけだ。

 俺ならばともかく、かなりの高レベルプレイヤーのリヒトが進んで狩るようなモンスターには思えない。

 ましてや、今は『進化のクリスタル』を手に入れるために外に出たのだ。

 ここで足を止める理由がわからない。


「なんかあるのか?」


「別に何かがあるわけじゃねえよ。まあ、大人しく見てろって」


 そう言いながら、リヒトは腰のポーチに手を入れて……別のポーチを漁りだした。

 小さく「あれ、どこやったっけ……」って聞こえた。

 この世界でも片付けできない悪癖は健在か。

 リアルな世界だからです、ってか? 捨ててしまえそんなリアリティ。


「あ、あったこれだ」


 ようやく見つけ出したらしいリヒトの手に握られていたのは小さな宝石。

 見た目的に近いのは琥珀だろうか。

 手のひらに乗る程度の大きさで、その中心には淡い金色に近い光が灯っていた。


「それは?」


「『テイムジュエル』。簡単に言うとモン○ターボール」


 なるほど、モンスターを入れることができる宝石ってことか。

 あと、そんな説明でも理解できるモ○スターボールって偉大だよね。


「そんじゃ出すぞ。召喚(サモン):“グランド・ホース”」


 リヒトが手に持った宝石を握り砕く。

 すると、砕け散った破片が光に変わり、宝石の中心にあった金色の光と合わさり、一つの像を形作る。

 そうして現れたのは一頭の馬。

 体毛は黒、(たてがみ)(あぶみ)は金色で、神話に出てくる神馬(しんめ)を思わせる堂々たる立ち姿である。


「すごいな」


「だろー? スプルって言うんだ。俺の自慢の愛馬だぜ!」


 リヒトが満面の笑みで馬……スプルの首元を撫でると、スプルは満更でもないように「ブルルッ」と嘶く。


『初めて見る顔だな。吾はスプル。リヒトの忠実なる従魔である』


「喋れんのかい!!」


 いや、喋ってるっていうよりは頭に直接言葉を流してるって感じか?

 いわゆる念話と呼ばれるものだ。

 頭に直接話される感覚はなんとも言い難いが、俺の前世には近しいものがあったから感覚は慣れてる。


『初めての念話で最初の指摘がそことは……やはりリヒトの知己とは、なかなか奇異な人間ばかりだ』


「そんなまとめ方で異端認定されてもな……まあいいか。俺はアレン。よろしくな」


『こちらこそよろしく頼む』


 スプルが俺に鼻頭を擦り付ける。

 こういう姿を見てると完全に馬なんだが、雰囲気がなんとも(いかめ)しい。

 ……前世で見た国王とか教皇がこんな感じだった気がする。


「コイツで移動するのか?」


「いんや、それは流石に無理」


『リヒトを肯定する。四人くらいならば背負えぬでもないが、乗るには面積が足りぬ』


 そりゃそうか。

 スプルの大きさは普通の馬とさして変わらんし。


「じゃあどうする気だ?」


「こうするんだよ〜、召喚(サモン):“デミ・フォレスト・ドラゴン”」


 今度はユカが小さな宝石……テイムジュエルを握り砕く。

 そこから現れたのはドラゴン。

 翼は無いがシャープなフォルムをしており、脚部が大きく発達している。


「私のテイムモンスターのグリーネだよ。お金貯めて頑張って買ったんだー」


 ユカがドラゴン……グリーネの頭を撫でる。

 グリーネも嬉しそうに目を細めている。


「コイツに乗ってくのか?」


「うん、いつもは私とハキルがグリーネに乗ってるんだけど……アレンくんも乗れるかな?」


 ユカが「できる?」とグリーネに尋ねるが、グリーネは申し訳無さそうにゆるゆると頭を振った。

 いつも二人しか乗せてないなら仕方ないだろう。

 さて、どうするか……って、別にそこは悩んじゃいないんだよな。


「俺は走るよ。そのほうが速い」


 空気がシンと静まりかえる。

 あ、ハキルが「お前は何を言ってるんだ」みたいな目で見てくる。

 やめろ、俺は意外と繊細なんだぞ。

 繊細な奴はそんな不審者装備着て歩き回りませんとでも言いたいのか? これ以上の装備が無いんだよ。あと顔も隠さなきゃいけないし。


「えっと……ホントに大丈夫?」


「おう、お前らよりレベルは下だろうが、一応AGI偏重型だぞ」


 なんせ『暴剣』率いる蜂の群れから逃げおおせたくらいだ、そこいらのモンスターには負けん。

 ちなみに、蜂の群れとのリアル鬼ごっこ(マジで死ねる)は俺が今世で体験したクソゲーランキング第三位だ。


「ならいいけど……無理ならちゃんと言えよ?」


「分かってるよ。そん時はスプルの後ろにでも乗っけてもらうさ」


 多分必要無いだろうけど、という言葉を飲み込む。

 あんまり言い過ぎると、嫌味っぽくなるから加減を見極めるのが重要なのだよ。


「よし行くぞスプル!」


『御意』


「行くよグリーネ!」


 三人がそれぞれテイムモンスターに乗って走らせる。

 うん、中々の速度だな。

 特にスプルはまだ余力がありそうだ。

 グリーネが速度型じゃないからそれに合わせてるのかな?

 それはともかく、この程度の速度なら問題無いな。


「そんじゃあ……よーい、ドン!!!」


 数回の屈伸運動を済ませ、思い切り地面を踏み込む。

 出遅れたせいで若干距離が開いてしまったので、【瞬脚】のみを使用して初速を上げる。

 その結果……横の景色がコマ落としのように飛んだ。


「んなぁ!?」


「はやっ……!?」


 おっといかん、追い抜いてしまった。

 【瞬脚】のせいでAGIが爆上がりしてるから、その分も考えて減速して……


「悪いな、最近速度上がったからちょっと調整ミスった」


 前にメイさんの店で買った【加速の指輪】にしたからAGI上がってるんだよな。

 あそこまでとは思わなかったけど。

 ……さて、先程のように冷ややかな視線を感じるのは気のせいではないだろう。

 実際リヒトとハキルは引いてるし。

 あ、でもユカは笑って……いや違う、これ呆れて笑うしかなくなってるやつだ。


「なんかお前……いや、もういいや」


 なんか知らんけど諦められた。Why?


         ◇ ◇ ◇


 馬とドラゴン、そして人間()が走ること十分少々。

 とある山のふもとに辿り着いた。

 そして、その山には洞窟のような穴が空いている。


「ここが?」


「おう。ここがアレンご希望の『進化のクリスタル』が獲得できるダンジョン」


 リヒトはそこで一旦言葉を区切り━━


「━━『昇位迷宮』だ」


 ━━実に楽しそうな表情で笑った。

○テイムモンスターについて

 【従魔】というスキルを使用することでモンスターをテイミングすることが可能。ボスモンスターなど一部を除いてレベルと強ささえあれば理論上全てのモンスターをテイミングできる。ただそれ自体に戦闘力は無いため、一部の戦闘型プレイヤーがサブスキルとして取得することが多い。また、テイミング後テイムジュエルに入れた状態なら取引が可能。一度テイムされているモンスターを購入した場合、そのプレイヤー自身に【従魔】スキルは要求されない。

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