第二話 レッツハンティング!
ようやく読み込みが終了し、俺は光に包まれる。
光が晴れると、目の前には美しいレンガ作りの家が建ち並ぶ街が広がっていた。
この街の名前は無いが、プレイヤーの間では『はじまりの街』という愛称があるらしい。
まるで中世ヨーロッパのような美しい街並みに俺は息を呑む。
「こりゃすげぇな……。日本中で話題になるのもわかるわ……」
見てみると俺の服装も変わっていた。
Tシャツにジーパンという極めて平凡な服の上に黒い外套を羽織っている。
周りを見るとどうやら服は現実世界と同じようなものがあるらしい。
そして腰には一本の剣が革製の鞘に入れられて装備されていた。
初期配布装備と呼ばれる武器らしい。
多分俺が【剣技】スキルを選んだから剣なんだろうな。
なかなか初期ボーナスが手厚い。
初心者の俺には嬉しいかぎりだ。
さて、このまま街を眺めるのも悪くないが、目指すは暗殺者スタイル。
まずはステータスの割り振りといこう。
アレン
Lv1
HP 20/20
MP 20/20
STR 20
VIT 20
AGI 20
DEX 20
INT 20
装備
頭 【空欄】
体 【空欄】
右手 【初級者の剣】
左手 【空欄】
足 【空欄】
靴 【空欄】
その他 【空欄】
【空欄】
スキル
【剣技Ⅰ】【風魔法Ⅰ】【隠蔽】
EXP 20
「おおー……」
ステータスの表示が全くわからず、四苦八苦しながらいじり続けること約十分。
ようやく青いディスプレイが現れ、ステータスを確認することができた。
思わず意味のない言葉が漏れる。
このEXPというのを割り振るとステータスが上がることがわかった。
一ポイントにつきステータスが五上がるから、合計で一〇〇は上げることができる。
とりあえず最優先で上げるべきなのは、STRとAGI。
速ければ攻撃は受けないから、VITとHPは現状必要ない。
DEXは生産系のスキル持ちに補正がかかるが、生産系スキルを持って無い俺にはいらない。
MPとINTは魔法に関するステータス。
一応魔法も使うから、少しは上げておいたほうがいいくらい。
優先順位としては他よりは高いほうかな。
色々考えた結果、AGIに八、STRに六、MPとINTにニずつ割り振ることにした。
残りの2ポイントはこれから獲得するスキルとかに応じて振り分けるから一旦保留。
これで最初にすべきことは全部終了。
さて、これからは━━やはりモンスター討伐だろう。
EXPはレベルを上げることで貰えるようで、さらにそれを割り振ってステータスを上げられるらしい。
攻略サイトにも『まずはレベル上げから』と書いてあったし、少なくとも間違ってはないはずだ。
防具も武器もお金が初期数値の三〇〇〇ゴールドしかないから買えない。
お金を稼ぐためにもモンスター討伐に行くしかない。
というわけで、街中にあった掲示板を見て依頼を選択する。
この近くはホーンラビットというモンスターがいるらしい。
説明によると、攻撃力も防御もあってないようなものらしく、初級者はまずこれを狩るらしい。
なら俺もこれにするか。
掲示板に書いてあった近くの森へと向かう。
俺としては普通に歩いているつもりだが、他の人を次々と追い越してしまう。
AGI六〇というのは速い部類に入るのだろうか。
そんなステータスのおかげか目的地にはわりとすぐに到着した。
特に疲れとかはないので、すぐさまホーンラビットを探す。
前世は魔法でモンスターの位置も特定できたが、ゲームでは決まった使い方しかできないからそうはいかない。
暫しの間、森を散策し、ようやくホーンラビットを発見した。
一体だけのようで、夢中になって草を食べている。
あんな小動物を攻撃するのは少々心が痛む……って、俺前世で人殺ってるじゃん。
何を今更って感じだな。
そう考えると特に何も思わなくなった。
もしかすると、俺はおかしいのかもしれん。
「キュイ?」
ホーンラビットは俺が攻撃しようとすると、こちらに気付き、首をかしげたような仕草をする。
やめて、罪悪感ハンパないから。
「おおおぉお!」
俺は覚悟を決めて、大声を上げながら剣を大きく振りかぶる。
ただし、少しホーンラビットからずれるように。
ホーンラビットは跳躍で剣を避け、俺から距離をとる。
そして、助走をつけて俺に角を突き刺さんと迫る。
━━やっぱりなぁ!
俺は剣を右手で逆手に持ち替え、ホーンラビットの首辺りに剣を振り抜く。
ホーンラビットは自らの勢いも相まって、首を切り裂かれた。
派手に赤いエフェクトが飛び散り、ホーンラビットはドロップアイテムの角と革を残して、光となり消え去った。
ふー……ホーンラビットの動きが予想通りで助かった。
まさかここで前世の経験が生きるとは。
野生動物ってのは大体が逃げてからの反撃に能力の比重を割いている。
そして、どんな生物も攻撃の最中……つまり、自分が狩る側と思っている時が一番無防備になる。
だから、一度わざと攻撃を外して隙を見せた。
相手の反撃を誘うために。
どこまで再現されてるかわからないから、半分賭けだったが上手くいってよかった。
[経験値が一定に達しました。アレンはLv1からLv2にレベルアップしました]
[熟練度が一定に達しました。【剣技Ⅰ】が【剣技Ⅱ】にレベルアップしました]
[【剣技Ⅱ】に到達したことにより、アーツ〈パワースラッシュ〉が開放されました]
[条件を達成しました。スキル【天賦の暗殺者】を獲得しました]
なんか今の戦闘で色々上がった。
アーツだのスキルだの……よくわからないが、一つ一つ見ていくか。
じゃあまずは〈パワースラッシュ〉から。
〈パワースラッシュ〉
能力 剣系の武器で与える斬撃ダメージを1.2倍にする
使用制限 クールタイム一分
獲得条件 【剣技】をLv2にする
アーツ系は多分スキルのレベルを上げると獲得できるんだろうな。
またこんなのが取れるんだろうな。
まあ、これは前座にすぎない。
本題は【天賦の暗殺者】だ。
なんかヤバい予感がするんだよなぁ……。
【天賦の暗殺者】
能力 攻撃をクリティカルヒットにする
使用制限 一日三回使用可能
獲得条件 最初の戦闘をクリティカルヒットのみで討
伐成功する
おいおい、これヤバい気がするんだが……。
さっきの戦闘でのクリティカルヒット通知で、クリティカルヒットは通常の攻撃ダメージの一・三倍になることがわかった。
三回までの使用制限があれば壊れスキルではない……のか?
いやまあ、取れたんだったら大丈夫なんだろう。
そう考えることにしよう。
まあ、なんやかんやあったが、俺の今世での戦闘は無事に終わった。
この時の俺はまだ知らなかった。
この【天賦の暗殺者】がほかの壊れスキルによって壊れスキルになるとは知る由もなかった。