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転生暗殺者のゲーム攻略  作者: 武利翔太
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第一話 ゲームスタート

 俺は転生したのがわかってから、全力で情報を手に入れようとした。

 家の人間━━つまりは現在の俺の家族━━にバレずに情報を集めるのはかなり大変だったが、なんとか成し遂げた。

 幸い何故かはわからないが、文字が理解できたのは大きかったな。

 

 その結果わかったのはここが地球という惑星の日本という国だということ。

 世界の中でも有数の先進国でありながら、他の国よりも比較的治安が良いらしい。

 数年が経つと言葉を理解できるようになり、家族の会話から様々な情報を読み取れるようになった。


 そして、なんだかんだで俺が産まれてから十五年の歳月が流れた。

 俺は━━全力で第二の人生を満喫した。


 何言ってんだ、と思うかもしれないが、俺に非はない。

 この世界が楽しすぎるのが悪いのだ!

 争いも犯罪も無く、(あまね)く全ての人間が安寧を享受できる世界のなんと素晴らしきことか!

 この世界を理想郷と呼ばずしてなんと言う!

 

 そんなこんなで俺は平穏な人生を歩んできた。

 それに今の俺はルーンガリア王国の暗殺者アレン・フォードではなく、日本のごく普通の高校生男子の大崎(おおさき)蓮也(れんや)だ。

 前世の記憶はあるが、アレは今の俺では無い。

 アレン・フォードという人間はあの瞬間に消えたのだ。

 ならば、前世のことなど忘れて━━とまではいかないが、割り切って楽しむのが道理というものだ。


 そうやって生きてきた十五年間の中で最大の転機がまもなく訪れようとしていることを、俺はまだしらなかった。


          ◇ ◇ ◇


「蓮也! ゲームしようぜ!」


 俺は通っている高校の昼休みに突然そう言われた。

 言っているのは茶色に近い黒髪が特徴的な少年。

 名前は緑川(みどりかわ)晃生(こうせい)

 クラスメートで俺の親友だ。


「いいぜ、何する? 十回ゲームか? それとも指スマ? シンプルに腕相撲も盛り上がるよな」


「いや、そういうんじゃねーよ!」

 

 晃生は大袈裟とも言えるほど、大声でツッコみ、天を仰ぐように仰け反った。

 俺のくだらないボケもきっちりツッコんでくれる気の良い奴だ。


「冗談だよ。例のVRゲームの話だろ?」


 俺は晃生の言う“ゲーム”がなんのことかわかっていた。

 晃生は━━というか、日本中のゲーマーは最近とあるゲームにのめり込んでいる。

 その名も『アナザー・ワールド・オンライン』。

 最新鋭のVR技術を用いたゲームの最高峰。

 なんでも、その完成度の高さ故に本当にもう一つの世界でもう一人の自分を操っているような感覚とのこと。

 晃生はそれを俺にもしてほしいらしく、こうして何度も誘ってくるのだ。


「そうだよ、それ! 蓮也も一緒にしようぜ! もう春香(はるか)優希(ゆき)は始めてるしさ!」


 春香と優希とは俺と晃生の友人でクラスメートの、月城(つきしろ)春香と中条(なかじょう)優希のことである。

 俺たちは中学の時に出会って仲良くなってから、大体この四人で遊んでる。

 

「うーん、してもいいんだが……VRゴーグルって高いだろ?」


 俺が今までしていなかったのはそれが一番大きい理由だ。

 VR技術が発達し、より安価に普及しだしたとはいえ、未だにVRゴーグルは一台ニ万はくだらない。

 全財産の約八割をゲーム費用に割いている晃生はともかく、普通の高校生が気軽に出せる金額じゃない。


「ふふふ、案ずるでない蓮也」


「何そのキャラ」


「俺もバカじゃない。それくらい考えているとも」


「無視かよ」


 晃生はそう言うと、自分のカバンをあさり、一つのビニール袋を取り出した。


「これが答えだ!」


 ババーンという効果音が付きそうな動作でビニール袋の中身を俺に見せつける。

 そこには新品のVRゴーグルが入っていた。


「というわけで、これをお前にやろう」


「え? いや、いいよ。これをそんな簡単に貰えるかよ」


「ならばこれでゲームをするのだ!」


 晃生は無理やり俺にビニール袋を押し付けて、何処かへ走り去って行った。

 慌てて追いかけようとするが、それと同時にチャイムが鳴った。

 

「まあ、そのうち返すか」


 俺はそう思ってビニール袋をしまい、自分の席についた。


         ◇ ◇ ◇


「結局返せなかった……」 


 家に帰ってVRゴーグルを取り出し、ずっとにらめっこしている。

 マジでこれどうしたらいいんだ……?

 晃生は俺に『アナザー・ワールド・オンライン』をしてほしいんだよな?

 ここまでされてしなかったら、俺はただ友達にVRゴーグルを買わせたクズ野郎になってしまう。

 流石にそれは嫌だ。

 

「うーん……」


 散々悩んだ末に俺が出した結論は『ゲームを始める』ということ。

 まあ、元々興味はあったし、ちょうど良い機会だし、始めてみることにした。

 あとは……なんだかんだ、俺もアイツらとゲームがしたいんだ。


「さーて、そんじゃ始めるかな」


 俺はVRゴーグルの電源を入れ、装着した。


         ◇ ◇ ◇


「おお……すげぇ」


 『アナザー・ワールド・オンライン』を起動した俺の目の前に広がるのは、いかにも電脳空間といった青い四角で構成された空間。

 思わず声が漏れてしまうほどのリアリティだ。

 日本中のゲーマーが熱中するのも頷ける。

 しばらく辺りを見渡していると、突然小さなディスプレイが現れる。


「んーと、なになに……『キャラクターデザイン』と『ステータス設定』? あと『キャラクターネーム作成』か」


 俺はこの手のゲームをしたことが無い。

 つまり、これから何をしたら良いのかがわからない。

 とりあえず、適当に『キャラクターデザイン』のほうのボタンをタップする。

 すると、現れたのは青い人型のマネキンっぽい何か。

 例えるならエ○ーサロ○パスのCMの青い人みたいなやつ。

 それと同時に様々なボタンがあるディスプレイも出てくる。


 色々といじくってわかったのは、これでゲーム内の外見を変えられるということ。

 体格は変えられないっぽい。理由は知らない。

 それと変えられるパーツは実に多種多様。

 髪型や髪や目の色などはもちろんのこと、肌の色に目の形に鼻の形に耳の形に全体のバランス調整に……挙げ句の果てにはホクロの位置や爪の長さまで変えられるという。

 

 そういえば晃生にキャラクターデザインの豊富さも売りの一つと聞いた。

 確かに女子とかには人気なのだろうが……俺からしたら面倒なことこの上ない。

 

 血迷ってもう適当に設定してやろうかと考えた時に、『現実の姿を反映する』というボタンを見つけた。

 発見するやいなや、俺は一切の躊躇なくそのボタンを押し、『完了』のボタンを押した。

 これでキャラデザは終わり、っと。


 次はステータス設定。

 ステータスの項目はHP、MP、STR、VIT、AGI、DEX、INTの七つ。

 初期数値は全て一律で二〇。

 ステータスポイントを割り振ることで上げることが可能で、スタートボーナスとして二〇ポイントが配布されている。

 これは始めた後でも割り振れるらしいので、一旦放置しておく。


 そして何より重要なのは配布スキル。

 武器系スキル、魔法系スキル、サポート系スキルから合計三つまで選べるようで、ここで今後のプレイスタイルが決まる。

 ちなみにここまで全て晃生からの受け売りである。

 さて何を選ぶかな。


 ……全く思い付かない。

 もう三十分ほど考え込んでいる。

 戦闘メインのスキルを取るのは決めたが、近接戦闘主体にするか、魔法主体にするかでも変わるし、それぞれの中でもかなり細かく細分化される。

 よし、ならば全部すればいい。

 つまり、武器系も魔法系も取ればいいのだ。


 それならばと浮かんだ戦闘スタイルは前世の俺━━つまり、アレン・フォードのスタイルである。

 アレンのスタイルは短剣と魔法を併用して相手を翻弄し、強力無比な一撃を確実に叩き込むというもの。

 前世のスタイルを今世のゲームで再現する。

 転生者ならではのロマン溢れるプレイスタイルだ。


 そうと決まれば即実行。

 武器系スキルは短剣スキルは無かったので、【剣技】というスキルを選択。

 魔法系スキルでは【風魔法】を選択する。

 【風魔法】を選んだのは前世でも風魔法を使ってたから。

 一応攻略サイトを見てみると、【風魔法】は威力と射程は他の魔法より劣るが、速度が高く支援系魔法に優れているらしい。

 翻弄のためだからあまり威力は必要としていないし問題無い。


 あともう一つスキルを取れるが何にするか……。

 色々見てみると【隠蔽】というスキルを発見した。

 能力は発動から二〇秒の間相手から見つけられにくくなるというもの。

 俺が目指すは暗殺者に近いスタイル。

 これがあればよりそのスタイルに近付くだろう。 

 他も見てみるが、一番良さそうなスキルはやはりこれだった。

 最後のスキルに【隠蔽】を選択し、『完了』のボタンを押す。


 最後にキャラクターネーム作成。

 これは迷うことは無い。

 プレイスタイルを決めた時点でもう決めていた。

 俺はキャラクターネーム欄に『アレン』と書き込み『完了』をタップする。


 ディスプレイには『しばらくお待ちください』の文字。

 終わった……いや、始まるのか。

 さーて、半ば強引にすることになったが、どうなるのやら。

 まあ、全力で楽しむとするか。

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