第十八話 第二層進撃
掲示板にあった『種類を問わず一体三〇〇ゴールド』という依頼を受け、すぐさま密林へと向かう。
やがて辿り着くと、大量の木々が目に飛び込んできた。
一本一本が第一層の森の木よりも高く太い上に、その木々が密集している。
機動力第一の俺には少々厳しいな。
木を斬れるか試してみたが、表面に傷がつくことすらなかった。
どうやらここら一帯は破壊不能らしい。
破壊できたら、ちょっとは楽になったかもしれないんだがなあ。
イラついて木を足蹴にしていた俺の耳が、近づいてくる音を感じ取った。
これは……羽音?
しかも、一匹や二匹じゃない。多分一〇匹近くはいるだろう。
俺は【黒月】を抜き、臨戦態勢に入る。
現れたのは体長一メートル前後くらいの大きな蜂。
普通と違うのは胸から生えた一対の脚の先が剣になっていること。
その剣は個体によってさまざまであり、グレートソード、バスタードソード、ブロードソードなど一般的なものから、ショーテルやエストックなどのマニアックなものまである。
コイツらの名前はソードビー。
第二層で最も出現数の多いモンスターだ。
先頭のソードビーが脚の剣を突き出し、俺に突撃してくる。
俺は半身になって回避し、【黒月】を跳ね上げるように振るう。
斬撃は頭と胸の間に吸い込まれるように進み、ソードビーの頭を吹き飛ばした。
なるほど、機動力と攻撃力重視の超攻撃特化型か。
俺と同じようなタイプだが、そのどちらも俺に圧倒的に劣る。
だが、この数で一気に来られると面倒だな。
ソードビーは俺の心中を読んだのか、俺を包囲するように散開しだした。
囲まれるのは流石にマズイな。
「〈ウィンドカッター〉!」
俺は包囲の一匹へ魔法を放つ。
距離があったからために、ソードビーには避けられたが、包囲網に穴を空け脱出することに成功した。
だが、そこで俺の頭に一瞬電流のようなものが走った。
俺は倒れ込むように地に伏せる。
上に視線を向けると、俺の頭があった空間にエストック型のソードビーの脚が向けられていた。
コイツ、木の後ろに周り込んでやがったのか。
そういえば、俺が最初にソードビーを認識したのも音からだった。
探索スキルを無効化するスキルみたいなのを所持しているのか?
だとしたら、かなり厄介だ。
当然ではあるが、俺の回避は相手を感知しないことには始まらない。
そのために探索スキルガン積みした上で【遠視】で視力を底上げしている。
起点となる探索スキルを封じられては、回避も反撃もままならなくなる。
一番最初は音で感知していたが、もう周囲を囲まれ、羽音が四方から聞こえるため、音はもうあてにならない。
さっきは直感でなんとか避けられたが、あんなもん偶然だ。何回もできるわけがない。
俺はニヤリと笑った。
探索スキル縛りのノーダメ殲滅チャレンジってとこか?
上等だ、やってやろうじゃねえか。
ソードビーの数は八匹。
全力でやれば大した問題は無い。
「〈ウィンドニードル〉!」
俺は辺りに魔法をばら撒く。
ソードビーの速度を持ってすれば、回避することは容易いだろう。
だが、それは関係無い。そもそも当てる必要は無いのだから。
俺は全力で跳躍し、ソードビーの一匹の眼前に迫る。
AGIは速度だけではなく、攻撃以外の足で行う行為の全てに補正がかかる。
装備込みで二百近い俺のAGIなら、垂直跳びで数メートル跳ぶくらいは簡単なことだ。
ソードビーは発達した顎をガチガチと鳴らしながら、脚の剣を振りかぶる。
俺はそれが振り下ろされるより速く、ソードビーを袈裟斬りにする。
ソードビーは外骨格のせいで多少防御力はあるようだが、俺の攻撃を防ぐには脆すぎる。
残り七匹。
すぐに近くにいたソードビー二匹が剣を振るう。
確かに空を飛べない相手なら、足が着く前に斬るのが最適解だ。
身動きできない相手を見逃すのは馬鹿としか言えないからな。
もっとも俺はそれには当てはまらないが。
「【飛翔走】!」
俺は空を蹴り、ソードビーの間合いから逃れる。
空が飛べないなら走ればいいじゃないとでも言うべきか?
俺は身体を反転させ、【飛翔走】で急降下し、剣を振るったソードビーの片割れを斬り裂く。
残り六匹。
「ギヂィイイイイ!」
俺が地面に足を着けたのとほぼ同時に、ソードビーが奇妙な鳴き声を上げる。
お前声出せたんかい。いや、ただ顎打ち付けて鳴らしてるだけか?
ソードビーが甲高い鳴き声を発しながら、翅を激しく振動させ、鎌鼬のようなものを放った。
俺の〈ウィンドカッター〉みたいな魔法か?
俺は悠々と回避するが、その先に他のソードビーが周り込んでいた。
なるほど、俺の行動を制限するためか。
虫の分際で頭使った行動しやがって。
ただ自ら近づいてきてくれたのはありがたいな。
ソードビーの振るった剣を避けながら頭を掴み、ゼロ距離で魔法を打ち込む。
残り五匹。
残ったソードビー達は、俺から距離を取りながら鎌鼬を撃ち続ける。
もう近づく気は無さそうだな。
だが、撃ち合いでも負ける気は無いぞ。
「【飛刃】✕3!」
俺は武器を【紅炎の短剣】と【蒼氷の短剣】に持ち替え、空気の刃を放つ。
【飛刃】は〈ウィンドカッター〉に比べれば威力は劣るが、速度と範囲では上だ。
ソードビーは今までより明らかに速い斬撃を避けられず、比較的近くにいた二匹が斬り刻まれた。
残り三匹。
「「ギヂギヂギヂィ!」」
残っていた内の二匹がヤケになったように、奇怪な声を上げながら俺に迫る。
何かスキルでも使ったのか、今までよりも速く鋭い。
だが、どれだけ速くても近接戦闘じゃ俺に敵うはずがない。
「〈クイックスラッシュ〉」
俺は【黒月】を抜き、一閃する。
ソードビーはその剣や外骨格で抵抗することも許されず、二匹共に上下に両断された。
残り一匹。
〈クイックスラッシュ〉は【短剣技】のアーツの中で、単純な速度なら最速を誇るアーツだ。
威力は大して高くないが、蜂を両断するぐらいなら訳は無い。
俺は剣を抜いた勢いを利用して振り返る。
すると、いつの間にか周り込んでいたソードビーと視線がかち合った。
コイツらは相手の視界から逃れると、一回相手の後ろに周り込む。
これだけ戦えば猿だって理解できる。
「〈正拳突き〉!」
俺は全身の力を込めて、ソードビーの顔面に拳を放つ。
ソードビーは脚の剣を交差させて防ごうとするが、俺の拳はそれを容易く砕き、顔面の甲殻すら破壊してソードビーの顔を貫いた。
ソードビーが光の粒となって消えていく。
完全撃破。ミッションコンプリートだ。
[経験値が一定に達しました。アレンはLv27からLv28にレベルアップしました]
[熟練度が一定に達しました。【短剣技Ⅲ】が【短剣技Ⅳ】にレベルアップしました]
[【短剣技Ⅳ】に到達したことにより、アーツ〈バックスタブ〉が開放されました]
[熟練度が一定に達しました。【暴風魔法Ⅲ】が【暴風魔法Ⅳ】にレベルアップしました]
[熟練度が一定に達しました。【格闘術Ⅱ】が【格闘術Ⅲ】にレベルアップしました]
お、レベルアップしたか。
前なら二、三レベくらいなら上がってたんだが、このレベルになると少し上がりにくくなってくるな。
そろそろ本格的なレベリングに取り組むべきかね。




