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転生暗殺者のゲーム攻略  作者: 武利翔太
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第百三十五話 『ギルティア・ハイレイン』

ひっさびさの週一更新。

夏休みに入ったし、これからの流れは固まってるのでわりと早めに書けるかも。

「うわぁ……派手なことするなぁ……」


「何やってるのよあのおバカ……!!」


 ユカが屋敷の被害を一ミリも考えていない爆撃を敢行していた頃、突入班の一組であるハキルとリズが揃って頭を抱えていた。

 否、その片割れであるリズは苦情を浮かべてこそいるもののどこか楽しげな雰囲気を漂わせており、真の意味で頭を悩ませているのはハキルのみである。

 だが、ハキルはすぐに思考を切り替え、とりあえずユカはあとでシメるとだけ心に決めて自身に与えられた役割を遂行する。


「ハキルならわかっているだろうが、我々の役割は陽動。その場で大暴れして少しでも人員を割かせるのが目的だ。他の人員との合流に関しては考えなくていい」


「そして、誰かが助けに来てくれることも期待するなってことですよね?」


「理解が早くて助かるよ。それじゃあ行こうか」


「了解です」


 二人が最後に確認程度の言葉を交わすと、それが終わるのを見計らったかのように屋敷から二度目の爆音が響く。

 それを合図として二人は同時に駆け出し、各々の任された持ち場へ向かう。


「〈ブラスト・バッシュ〉!!」


「〈狂華一閃〉」


 ハキルは炎を纏う大盾で一階の壁を殴り砕き、リズは鞭で窓の装飾を絡め取って飛び上がり、その窓を鞭で突き破る。

 そうして、両者は屋敷の中へと侵入……というより吶喊し、中にいたギルティア連盟の構成員たちと相対する。


         ◇ ◇ ◇


「ダッハッハ、相変わらずやってんなー!!!」


「アイツ本当にバカなんじゃねえのか……?」


 同じく突入組であるリヒトとタイガもまた、その爆撃を見て各々の感想を漏らす。

 リヒトは腹を抱えて大爆笑し、タイガは呆れたような溜め息を吐く。

 だが、ひとしきり笑った後にリヒトはスッと立ち上がる。


「あー、笑った笑った。よし、そんじゃ突っ込むか」


「切り替え早すぎて怖えよ……合図の爆音は今鳴ったな。行くぞ」


「おう!」


 二人は二度目の爆音が鳴るのと同時に、一斉に屋敷へと駆け出す。

 AGIの差ゆえにリヒトのほうが先行して屋敷の間近まで行き着き、そこで踵を返してタイガと正面から向き合うかたちとなる。


「おっしゃ来い!」


「頼むぞ!」


 タイガはそれを見てさらに加速し、リヒトが組んだ両手を足場として踏み込む。

 リヒトもタイガの足を手で受け止めた瞬間に全身を大きく反らして持ち上げ、タイガを二階まで跳ね上げる。


「〈闘気・赤〉、“赤破(せきは)”!!」


「〈グリッター・ストライク〉!!」


 タイガの赤い闘気を纏う拳が二階の窓を突き破る。

 リヒトは全身を反らした勢いのままに身体を一回転させ、サッカーのオーバーヘッドキックのように光を纏う足で壁を蹴り砕く。

 サーカスのような曲芸じみた挙動でダイナミックに屋敷に突撃した両者は、ギルティア連盟のメンバーに対しても大暴れを敢行する。


◇Side:アレン◇


 未だに屋敷を焼き続ける一度目の爆撃の後に、二度目の爆音が響く。

 音自体は派手だが、さっきの爆撃と比べれば炎自体は少ない。

 音だけ派手な魔法でも使ったのか……それなら最初のやつもそれでよかったんじゃ……?

 いや、火を消すための人手を割かせるという意味では効果的なのか……言い逃れできるような要素をしっかり残しているあたりが若干ムカつくな。


 だが、二度目の合図の後に何かが壊れるような音もしたし、突入班は問題なく屋敷に侵入できたんだろう。

 俺たちは三度目の合図を待ってから侵入すれば……


「アレン、裏口から逃走者が出たぞ」


 おっと、どうやらそうもいかないらしい。


 俺たちが裏口から侵入する最たる目的は『首魁の速攻制圧』や『敵を抑えられる物品の押収』。

 それが俺たちにとっての勝利条件となるように、相手はそれが敗北条件となる以上、それを防ぐために逃走を謀るのは当然だ。

 三度目の合図でも相手が逃げ出すための準備は整えるには短いくらいの時間のはずだが、予想よりも相手の動きが速かったということだろう。

 そんなときのために、俺たちは裏口から逃走者が出た場合のみ合図を待たずに屋敷に侵入することが許されている。


「わかりました。逃走者の数は?」


「三人。武器は持ってるが、でかい荷物を抱えてるみてぇな様子はねえな」


「それじゃ行きましょう」


「よし来た」


 その言葉を合図として、俺たち二人は同時に隠れていた茂みから飛び出した。

 その音で向こうも俺たちに気づいたようだが、向こうが反撃するよりも俺が肉薄するほうが早い。

 声で他のやつが寄ってきても面倒だ、速攻で叩き潰す。


「ああ!? どっから湧い━━」


 まずは一人目、声を出そうとしていたやつを掌底でアゴをかち上げて黙らせる。

 続いて二人目、とりあえず近くにいたやつのこめかみを裏拳で打ち抜いて昏倒させる。

 三人目は俺が動くより先にセレンさんが麻痺毒付きの矢を投擲して動きを止めている。

 硬直した隙に俺がそいつのみぞおちに正拳を叩き込んでチェックメイトだ。


「お疲れ。どうする? コイツら縛り付けとくか?」


「いや、流石に時間が無いです。とりあえず身体検査して何も持ってなさそうならそこら辺に転がしときましょ」


「りょーかい」


 転がってる奴らの身体をまさぐってみるが、特にめぼしいものは持ってなさそうだ。

 となれば、もう用はないのでそこら辺の茂みに放り投げて隠しておく。

 大分雑に扱ってるが、まあこれくらいじゃ死なんだろ。


 逃走しようとしていたのはさっきの三人だけだったらしく、他に出てくる様子はない。

 扉に近づいて聞き耳を立ててみるが、中からこちらへ近づく足音も無い。

 もうしばらく待機してもいいが……中に突撃するほうが早いか。

 地下に籠もってる奴がいるかもしれないし、それを制圧するためには俺たちも中に入るべきだ。


「屋敷に突入します。予定通り、俺が前でセレンさんが後ろ。地下に入ってから強い奴と会敵したら俺が引きつけてセレンさんが探索続行で」


「わーってる。そんで、どっちが死んだら生き残りは一階組と合流、だろ?」


「できれば、ですけどね」


「俺らにしろ向こうにしろ、生きてることを願おうぜ」


「そうっすね。行きましょう」


「おう!」


 最終確認を済ませてから俺とセレンさんは裏口の扉を開け、地下を目指して走り出す。

 第四層の森の屋敷と構造は大差なく、廊下の両側に部屋が並ぶかたち。

 地下の入口は一階中央付近の部屋の中にある階段、屋敷の見取り図からそこまでの経路は記憶してる。

 潜入は速度が肝心、最短最速で駆け抜ける。


「んな、テメェらどっかブボォ!?」


 ザコと会敵したときはアゴやみぞおち、鼻なんかをぶん殴って抵抗させる間もなく鎮圧する。

 【万能感知】のおかげで罠や扉の裏からの奇襲なんかも防ぐことができる。

 といっても、居住区でもある場所に罠を仕掛けるはずもなく、まだ反撃の準備が整っていないらしく奇襲の類もなく地下の入口までたどり着くことができた。


「奥に人は?」


「【万能探知】には反応なし。気配とかも感じないです」


「オーケー、なら進もう」


 俺は扉を思い切り蹴破り、その奥へと進んでいく。

 地下の構造は上と大差ないが、最奥に修練場として使えそうな広い広間がある。

 そこに何かを保管している可能性を考慮して、一応そこを終着点として進むことにし、そこから戻って探索を始める。


 しかし、ここでも人間……というか、生き物らしき反応はない。

 ここまで来ても反応がないと、いっそ不気味だ。

 さっきの陽動で構成員全員がそっちに行った……だとしても、有事のために少しは浮かせておくべきだろ?

 そもそもここを本拠地とすると、予想してたよりも人員が少ない。

 本拠地というのが誤情報だったという可能性も……っ!?


「セレンさん!」


「え? うおっ!?」


 言葉で説明する暇はない、俺はセレンさんの服を引っ張って強引に身体を下げさせる。

 それと同時に俺も身体を下げながら、腰に差した短剣に手を掛ける。


 ━━瞬間、近くの扉から爆ぜるような破壊音が響いた。


「どぅあ!? 何事!?」


「セレンさん、予定通りに!」


「え? ……あ、そういうことか! 了解!」


 先程の会話の通り、セレンさんを先に進ませ、俺は爆音の発生源に相対するように構える。

 そこには、二メートルを超えるほどの体格の屈強な大男が立っていた。

 手にはそいつの身の丈と変わらないくらいの大剣、身体には急所を守る程度の革鎧、そして顔には何も描かれていない白い仮面をつけている。


 さっきのやつよりは数段強い、それは間違いないが……何か違和感を感じる。

 なんというべきか……上手く言うことができないが、どことなくチグハグ(・・・・)な感じだ。

 なんでそう思ったかは自分でも整理できないが……目の前のコイツが異質なのは確かだ。

 だから、俺は問いかけることにした。


「ずいぶんとやる気だな。名乗ってくれると有り難いんだが?」


 そもそもコイツが会話に応じるタイプなのかどうかもわからんが、まあダメ元だ。

 聞ければ御の字、聞けなくても叩き潰してから聞けばいい。

 そう思っていると、大男はおもむろに俺の問いに答えた。


「━━ギルティア・ハイレイン」


「━━!! こっちが当たりか!!」


 それを聞いた瞬間、俺は【思念のイヤリング】を起動させて通話を開始する。


『こちらアレン、地下でギルティア・ハイレインと名乗る男と会敵! 外見は仮面をつけて大剣を持った大男、取り巻きらしき者の姿はない、こちらで制圧を行う!』


 これで通達はよし、万が一俺が逃がしても他の奴らが捕まえるだろう。

 ひとまず俺はコイツを速攻で抑えて━━


『はあ!? おいアレン!! それマジ!?』


『っ!? うるせえ!!』


 だが、俺の思考は痛覚オフでも耳が痛くなるほどの大声で遮られた。

 リヒト……? いきなりどうしたんだ?


『マジだよ! こんなこと嘘ついてどうする!』


『そりゃそうだけど……いや、そうだよなー……でも、だとしたらよ━━』


 俺がそう言うと、リヒトはひとしきり悩んだような声を漏らしたかと思えば、


『━━俺の目の前にいるギルティア・ハイレインは誰だよ!?』


 ━━信じがたい言葉を聞いた。

 さらに、それに追い打ちをかけるような言葉が続く。


『んえ!? タイガのとこにもギルティア・ハイレインがいる!? じゃあどれが誰だよ!?』


『こちらリズ。私の前にもギルティア・ハイレインと名乗る者がいる。仮面をつけた双剣使いで体格や身のこなしから女だと思われる。それと、ハキルもギルティア・ハイレインと名乗る大槌使いと会敵したらしい』


 なんだ、何がどうなってる?

 今の話だけでも、俺の前の奴を含めて五人のギルティア・ハイレインがいることになる。

 影武者か? それとも分身みたいなスキル……いや、今はそれを考えてる暇はねえ!


「チッ! 嫌なタイミングで仕掛けてきやがって!」


 俺が通話をしながら思案していると、目の前のギルティア・ハイレインは大剣を振りかざして俺に迫る。

 床や壁の破損なんて全く気にせず、鉄塊みたいな大剣を振り回す。

 グダグダ考える隙なんてやらねえってか……!

 なら考えるのは後回しだ。

 とりあえず今は……コイツを全力でブチのめす!

四周年何書くかな……

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