第十二話 スキル取得
早く書き終わったかわりに少々短めです。
メイさんの鍛冶屋を出た後、俺はスキルショップへ向かった。
スキルショップとは、言葉通りスキルを買うことができる店のことだ。
もちろん全てのスキルが買えるわけではないが、必須級のスキルを揃えられるため、プレイヤーにはとてもありがたい場所だ。
「えーと……あ、ここか」
慣れないマップを見ながらの移動だったため、少々不安だったが、無事に辿り着くことができた。
スキルショップの見た目は、他と大差ない少々古ぼけたレンガ造りの建物である。
その扉を開けると、そこに広がるのは壁一面の大小さまざまな棚とそれに整然と並べられた巻物。
中も外見同様に古ぼけたような内装だが、ゲームだからか一切の汚れやホコリは無い。
まあ、そんなことはさておき、早速スキルの選定に取り掛かろう。
「さーて、どれにすっかな〜」
俺は巻物を一つずつ取り出し、効果を確認しながら吟味していく。
まずはステータス強化スキル。
HPを上昇させる【身命】と、MPを上昇させる【精強】は絶対に必要だ。
ステータス強化スキルはこの二つしかないので、これで終了。
次に耐性スキル。
俺の防御力はまさに紙、いや、紙のほうがマシなレベルの防御力しかない。
そのため、ダメージを受ける=死亡となるこの状況では、ほんの僅かでも保険が欲しい。
実は耐性スキルのほとんどは一定数ダメージを受けることで獲得できるが、俺はそれもできないのだ。だって死ぬから。
さて、そんな耐性スキルだが、俺が調べた限りだと非常に面倒くさい性質を持っている。
それはどんなことがあろうとも、細分化されたスキルから始まるということだ。
意味がわからないだろうから、実際のスキルを例に挙げよう。
物理攻撃に関する耐性スキルには【斬撃耐性】【刺突耐性】【打撃耐性】の三種類がある。
そして、それらを統合強化したスキルに【物理攻撃耐性】が存在する。
前述の三種類はそれぞれ対応する一種類しか軽減できないが、【物理攻撃耐性】は全ての物理攻撃を軽減可能だ。
だが、いきなり【物理攻撃耐性】を取得することはできない。
スキルショップで購入できるのも、条件達成でのスキル取得も、【斬撃耐性】【刺突耐性】【打撃耐性】のいずれかになってしまうのだ。
簡単に言うなら、三種類の物理攻撃耐性スキルを取得し、SPで強化することでしか【物理攻撃耐性】は獲得できないということだ。
そういうことなので、耐性スキルはそれぞれ一種類ずつ買わなければならない。
合計で耐性スキルは一八個という数になってしまった。
ああ、金が飛んでいく……。
まとめて買えたら三個で済んだのになあ……。
そして、探索スキル。
これは文字通り探索のためのスキル。
耐性スキルと同様に多くの種類があり、それぞれ感じ取れるものが異なる。
例えば【空間探知】は空間の揺らぎを感知し、動くもの━━モンスターやプレイヤーなど━━を感じ取ることができる。
だが、これ一つでは罠などの探知できないものもある。
だから、パーティ単位で複数の探索スキルを取得するのだが、俺は一人なので全部のスキルを取得することにした。
ちなみに、全部の探索スキルを一人で取ることはほとんど無い。
探索スキルは脳内に一定範囲のマップが表示され、複数取ると脳の処理が追いつかなくなるからだ。
もちろんそれは俺も知ってる。
だが、一撃喰らったら即死の状況では、不意打ちや奇襲の対策は必要不可欠。
色々と悩んだ末に全部取ることにした。
他にも汎用性の高いスキルや【紅炎の短剣】と【蒼氷の短剣】に付いていた【飛刃】などを選ぶ。
最終的に購入したスキルの数は三〇個に及んだ。
一人でやる以上、どうしてもさまざまな状況に対応せねばならず、スキルも膨大な数になってしまう。
「まいどあり。また来ると良い」
店員のおじいちゃんNPCのお決まりのセリフを聞き、俺は店を出た。
スキルの巻物は違うスキルなら別のアイテムとしてカウントされるので、インベントリでは嵩張ってしまう。
仕方なく両腕で抱えるようにして持つが、不安定なことこの上ない。
早いとこ使ってしまいたいが、どこにするか……
そう考えていると、店を出た拍子に躓いて、巻物の一つを落としてしまった。
それと同時に巻物が転がり、開かれた状態になってしまう。
「あー、面倒くせえなぁ」
そうぼやきながら、俺は巻物を拾おうと手を伸ばす。
そうして巻物に手が触れた瞬間、巻物の文字が淡く輝き、宙へ浮かび上がる。
それらは少し宙を漂ったかと思うと、俺の身体に集まり、沈み込むように吸収された。
後に残った巻物にはもう何も記されていなかった。
俺はなんだったのかと少し考えて、あることに思い当たり、ステータスを開く。
そこには今まで無かった、そして購入したスキルの一つである【飛刃】が記載されていた。
俺は他の巻物を開く。
すると、再び巻物の文字が光を帯びて空に浮かんだ。
「今のはスキル取得のエフェクトか……」
俺は感嘆の息を吐く。
単なるスキル取得であるというのに、それにまでここまで美しいエフェクトを付けるとはな。
どうやらこのゲームの開発陣は、なかなかの猛者揃いのようだ。
俺は何度も巻物を開き、その景色を見飽きるまで繰り返し眺めた。
俺が気付く頃には、巻物は無くなり、ゲーム内時間で一時間が経過していた。
夢中になっているときは、時間が経つのが早いことを改めて実感し、今日はログアウトした。




