第九十九話 死の終焉
ギリギリ滑り込みセーフ!
週一投稿を保ててる……いいぞ、いいペースだ頑張れ私!
※次話をまだ書き始めてすらいない者のセリフです。
長々と無意味なことを繰り返させられていたフェイタリアとの戦いも、ダメージを与える手段が判明したことで自動的に佳境に移る。
フェイタリアのHPがどれだけあるかはわからないが、他のステータスから考えても決して多くはないだろう。
であれば、殺すことは容易いはず。
しかし、当然それはフェイタリアも理解している。
それ故に、死から逃れるために全力で抵抗するだろう。
……というか、現在進行形でされている。
『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!』
半狂乱になりながら大鎌を振り回すフェイタリア。
その速度は大して速くもないが、スキルによりその攻撃全てが俺にとっては致死となるために近づくことが難しい。
冷静でいるより、頭のネジ吹き飛ばしたほうが強いとか生物としてなんかおかしい気も……いや、コイツ一応アンデッド区分だから生物じゃねえか、ならセーフなのか?
まあ、そこはどうでもいいや。
殺す手段があるなら手っ取り早く突っ込んだほうがいい。
「セキ、目眩ましで炎バラ撒け!」
『御意』
俺の指示でセキが羽ばたき、炎の羽をバラ撒く。
浄化系の伴わない攻撃はフェイタリアに当たることはなく、当然のようにすり抜ける。
だが、フェイタリアも生き物……生き物? 多分生き物である以上、視界を遮られては攻撃することは難しい。
だからこそ、そこに近づくチャンスが生まれる。
「おら、これが怖いんだろ!?」
俺は聖水の入った小瓶を剣先でカツカツと叩きながらフェイタリアに接近していく。
フェイタリアもこれが危険であることを認識したのか、それを見た瞬間俺から離れようとする。
さっきまでの威勢はどうした、俺から逃げられるわけがねえだろうがボケェ!!
「ハイハイハイハイ!! 逃げてんじゃねえよ腰抜けアンデッドがよ!!」
「なんかアレンのテンションがぶっ壊れたウサ……」
「ストレス溜まってたんですかね……?」
フレミッシュとディステルが後ろでなんか言ってるが、そんなもの知ったことか!
今までの憂さ晴らしだ黒モヤガイコツ!
俺とセキで魔法で撃ちながらフェイタリアを取り囲む。
放った魔法は当然すり抜けるが、フェイタリアは攻撃が効かなくても反応する。
弱点がバレていつでも致命傷を喰らいかねない今なら尚更だ。
「こうなったらしゃーない。俺も混ぜろウサー!!」
「私は援護に徹します! クロ!」
さっきまでは観戦していたフレミッシュとディステル、そのテイムモンスターのクロも参戦する。
しかし、あくまで主軸は俺とセキだ。
回避能力が高いやつじゃないと下手を打てば死ぬ可能性もあるからな。
しかし、俺とセキ、フレミッシュにクロと手数自体は増えているが、有効打は当然のようにゼロ。
隙を見計らって聖水をぶっかけてやろうと思っていたが、中々当てられる機会がない。
フェイタリアも弱点であることがわかっているからか、誰かが手に持った時点で全力で警戒している。
恐るべき危機回避能力、もしかしたらプレイナーの編隊が返り討ちにあったのも弱点がわかっても、単純に当てられなかったからかもしれない。
そして、何より最悪なのは……この状況でもひっくり返せる手札がフェイタリアにあることだ。
『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!』
フェイタリアが聞くに堪えない絶叫を上げる。
それと同時に、フェイタリアの全身が黒い霧のようになって崩壊した。
これは……さっきの透明化能力!
だが、この霧はさっきは出てなかったはず……なんだこれは、という俺の疑問は俺自身のステータス画面を見たことで解決した。
「なるほど、そういう感じか……!」
俺のステータス画面を見てみれば━━HPが削れている。
おおよそ五秒に一ポイント分削れてる感じか?
ダメージの感じが状態異常に似てる……となれば恐らくこのダメージの発生源はフェイタリア……いや、正確にはフェイタリアを構成してる負の魔力そのもの。
普通の瘴気と大差ない程度なら服用してる聖水のお陰でダメージを抑えられるはずだが……フェイタリアの能力かなにかで強化でもされてるのか?
それはまあどうでもいい。
重要なのは透明化能力を使われたこと。
これこそが俺の考えていた『この状況をひっくり返せる手札』。
「セキ! 空だ!」
『御意!』
つまりは━━俺の想定内。
「フレミッシュ! ディステル! 聖水だ! ありったけ……いや、二、三本だけ残して真上にぶん投げろ!!」
「……? あ、なるほど! 了解ウサ!!」
「私はこれでもダメージ受けないので全部投げます! あとはお任せします!!」
俺の声に反応してフレミッシュとディステルが聖水の入った小瓶を自身の真上に投擲する。
俺もそれに続いて小瓶を投げ……セキにサムズアップして合図とする。
セキはそれを見て小さく頷いた。
『“炎嵐纒”━━【空裂赫翔】!!』
セキが炎と風を纏い、高速で回転する。
旋回と魔法によって発生した風が炎をあおり、勢いを強めた炎が風を巻き起こす。
相乗効果によりどんどんと火力と速度は大きくなり……セキが羽ばたいた瞬間、大気はパンッ!! と音を立てて爆ぜた。
それは大気の壁を突破した音。
音速を超えた証であり、その衝撃波が大気を揺らす。
当然フェイタリアには攻撃が当たるはずもない。
しかし、今回の狙いはダメージではない。
大気が揺れるということは、空気を伝って衝撃が奔るということ。
衝撃が奔るということは、空中に浮かんでいるものはその衝撃を受けることになるということ。
つまり、今この状況では━━空にある小瓶が割れるということ。
空中の小瓶が割れ、中身の聖水が撒き散らされる。
フェイタリアが透明化したとしても、姿が見えないだけで確かに存在はしている……はずだ。
だとしたら、弱点である聖水が雨のように降り注げば━━
『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!?!??!』
「やっぱりそうなるよなぁ!!」
周囲に響き渡る絶叫。
辺り一面から聞こえるようにも感じるが……よくよく聞けば声が一箇所に移動しているのがわかる。
『ア゛ァ゛……』
聖水の雨を逃れるために死神のような姿を晒すフェイタリア。
そして━━声を頼りに先回りして、残り一本の聖水の小瓶を握っている俺がいる。
それで、ようやく王手。
「これで、詰みだ」
フェイタリアは咄嗟に大鎌を振り下ろすが━━その前に聖水の小瓶を握り込んだ拳をフェイタリアの身体に突き刺し、握り砕く。
体内で炸裂した聖水によってフェイタリアは腹から弾け飛んだ。
『━━━━━!!!』
先程までの醜い絶叫もなく、声なき声を上げて……フェイタリアは黒いモヤとなって崩壊していく。
黒き死の具現は、そのまま光ではなく黒の塵となって風に乗って消えた。
わりとさっくりとした決着。
まあ、ギミックの割れたギミックボスなんてこんなものだと思う。




