第九話 既知との邂逅
投稿頻度が上がると言ったのに上げなかった愚か者が私でございます。
小説執筆休暇とか学校に申請できませんかね?
黒鬼戦後、俺は大広場の中央で大の字になってぶっ倒れていた。
全身が痛いし、頭も痛い。まあ、何時間もぶっ通しで戦い続けてたらそうなるよな。
[経験値が一定に達しました。アレンはLv14からLv23にレベルアップしました]
[熟練度が一定に達しました。【剣技Ⅷ】が【剣技Ⅸ】にレベルアップしました]
[熟練度が一定に達しました。【体術Ⅶ】が【体術Ⅷ】にレベルアップしました]
[熟練度が一定に達しました。【剣技Ⅸ】が【剣技Ⅹ】にレベルアップしました]
[【剣技Ⅹ】に到達したことにより、パッシブアーツ〈剣の心得〉が開放されました]
[スキル【剣技】が進化可能になりました。スキル【剣技】を進化させますか? YES/NO]
[熟練度が一定に達しました。【風魔法Ⅶ】が【風魔法Ⅷ】にレベルアップしました]
[熟練度が一定に達しました。【風魔法Ⅷ】が【風魔法Ⅸ】にレベルアップしました]
[【風魔法Ⅸ】に到達したことにより、アーツ〈ウィンドヒール〉が開放されました]
[熟練度が一定に達しました。【体術Ⅷ】が【体術Ⅸ】にレベルアップしました]
[熟練度が一定に達しました。【風魔法Ⅸ】が【風魔法Ⅹ】にレベルアップしました]
[スキル【風魔法】が進化可能になりました。スキル【風魔法】を進化させますか? YES/NO]
[熟練度が一定に達しました。【体術Ⅸ】が【体術Ⅹ】にレベルアップしました]
[スキル【体術】が進化可能になりました。スキル【体術】を進化させますか? YES/NO]
[条件を達成しました。スキル【鬼殺し】を獲得しました]
[条件を達成しました。スキル【大物喰らい】を獲得しました]
[条件を達成しました。スキル【不屈の精神】を獲得しました]
[Lv20に到達したことにより、項目『SP』が開放されました]
そして、追い打ちをかけるような大量の通知アナウンス。頭が割れそうだ。
ひょっとして運営にプレイヤーの頭を破壊するのを目標にしてる方がいらっしゃる?
そんなことを考えていると、ボス部屋に来た時と同じような揺れが発生した。
とりあえず揺れが収まるのを待つことにする。
やがて、揺れが収まったのを確認すると、痛む身体と頭に鞭を打って立ち上がる。
しばらく休憩したいのは間違いないが、確かめなければ始まらないのだ。
少し辺りを見回すと、壁に今まであったはずのない大きめの洞穴が空いているのが見えた。
近付いてみると、その穴は下り階段になっており、その先は意匠が施された豪奢な扉がある。
俺が黒鬼の部屋に来た時とまったく同じ構造である。
……黒鬼みたいなのがもう一回とか無いよな?
流石にそれは無いと思うが、どうしても不安が拭いきれない。
もう一回黒鬼戦をやるなら俺は間違いなく負ける。
多分一回攻防戦をした後に、吹き飛ばされるのがオチだ。
俺は最悪の事態を覚悟しながら、階段を下り、扉を開ける。
すると、そこにはボス部屋をそのまま縮小したような円形の大広間が広がっていた。
その部屋の中央には淡く青白い光を放つ魔法陣と大きな宝箱のようなものが魔法陣の両側に配置されている。
俺の覚悟は杞憂で済んだようで何よりだ。
俺は部屋の中央へと近付く。
多分この魔法陣は帰還用だろうから後回しだ。
この宝箱は討伐したことによるボーナスチェストというやつだろう。
拒む理由なんてあるわけがないし、遠慮なく貰っていこう。
俺は左側の宝箱からゆっくりと開ける。
宝箱の中は、大量の硬貨や異常な硬度を持つ角、どうやっても破れそうにないなめし革などで満たされていた。
これは黒鬼からのドロップアイテム扱いか?
つまりこれは黒鬼の革や角……あんまり考えないようにしよう。
俺はそれ以上何も考えず、速やかにインベントリに収納した。
左がドロップアイテムだとしたら、右はなんだ?
なんかレアアイテムだったら嬉しいんだがなぁ。
そんなことをぼんやり考えながら、俺は宝箱に手を置いた。
[ボスバトル:“アビスオーガ”の隠し条件を全て達成しました。ユニークシリーズ:“深淵鬼装”を譲与します]
……なんだって?
今ユニークシリーズって言ったか?
俺は逸る気持ちを抑えながら宝箱を開ける。
そこに入っていたのは、光を飲み込んだかのように一切の輝きを発さない黒い服と一揃いの外套。
鈍い輝きを宿す格調高い黒のブーツ。
顔の上半分を覆う鬼を象った厳しい黒い仮面。
そして、柄、鍔、刃、鞘に至るまでの全てがどれよりも深く鈍く黒い小烏造りの短剣。
それらを見て、俺は戦慄した。
ユニークシリーズはユニークアイテムの中でも最も希少なレア中のレア。
それを手に入れたらレベル差が二〇くらいならばひっくり返せると言われるほどだ。
だが、俺が戦慄した理由はそれじゃない。
これらは前世の俺━━アレン・フォードが使用していた武器とそっくりなのだ。
偶然の一致にしてはあまりにも同じ過ぎる。
だが、目の前にあるものを否定することはできない。
これが運命のイタズラというやつなのか?
俺は恐る恐る宝箱の中の短剣を手に取り、数回振ってみる。
……恐ろしく手に馴染む。前世のものがそのまま出てきたと言われても信じてしまうかもしれない。
いや、なんでここにあるかなんてのはどうでもいいか。
前世で死に別れた相棒と今世で再開出来た。
とても喜ばしいことじゃないか。
「今世でもよろしく頼むぜ、相棒」
俺は短剣の鞘を一撫でして笑いかけ、ユニークシリーズを全てインベントリに納めた。
気に入らないわけじゃないが、流石に目立ち過ぎるから一旦仕舞わせてもらう。
そして、全てがインベントリにあることを確認して魔法陣へと立つ。
少し時が経ち、光に包まれたかと思うと、目の前に広がっていたのはゴブリンを狩り尽くした森だった。
久々に感じる太陽の光が目に悪い。
俺が少し顔を顰めると、後ろでガラガラと何かが崩れるような音がする。
振り返って見ると、そこには今までいた洞窟の残骸が残っていた。
……考えるなら役割を終えたってことなんだろうな。
ユニークシリーズが無くなった今、このダンジョンはあってもさほど意味は無く、運営が消したってことなんだろう。
それでも俺は一抹の寂しさを感じた。
「ありがとう黒鬼。俺を強くしてくれて」
俺はそう言ってその場を立ち去った。
そこを振り返ることは決してなかった。




