プロローグ 転生
新連載です!楽しんでいただければ幸いです!
とある王国のとある屋敷に一つの足音が響く。
他の音は無く、静寂が支配する屋敷を一人の男が静かに、ゆっくりと、しかし確かな足取りで進んで行く。
向かった先はなんだかよくわからない意匠が施された豪華な扉のある部屋。
男はそれを一切の躊躇なく開いた。
「だ、誰だ、貴様はッ! 吾輩はルーンガリア王国公爵のザムド・ヘルマンであるぞ!」
部屋の中には禿げ上がった頭の小太りの男がいた。
ヘルマン公爵は思わず声を荒げるが、男は無視して歩みを進める。
「おい、聞いているのか! 貴様は一体━━」
「黙れ。いちいち喚くな」
小さいながらよく響くその声に、ヘルマン公爵は怖じ気づく。
「な━━」
それでもなお声を上げようとするが、それはたった一筋の剣閃によって霧散する。
男の振ったナイフに喉を掻き切られ、声を出すこともできず命を落とした。
それがザムド・ヘルマン公爵の最期であった。
「つまらん」
扉を開ける時も殺す時も全く感情を出さなかった男はぽつりと呟いた。
◇ ◇ ◇
「はぁ……」
俺は屋敷を出て思わず溜息をついた。
今回の仕事は公爵の暗殺。
王国要人への裏金や領民への圧政など叩けばホコリしか出ないような人物でありながら、なかなか殺されないことから、多少は骨のある仕事かと思ったが、ただ今まで依頼が出ていなかっただけのようだ。
この程度の仕事はもう飽き飽きだ。
しばらく歩くと、見覚えのある男が立っていた。
「相変わらず見事な手際だな、アレン・フォード。世界最高の暗殺者の称号に偽り無しか」
そう言ったのは、黒服に黒い帽子を被り、サングラスをかけた中年の男。
俺の雇い主のクロと名乗る男だ。
本名は知らない。
「早く報酬を寄越せ」
「そう急くな。すぐに渡してやるさ。━━もっとも、お前の予想とは違うかもしれんがな」
それはどういう……という言葉を俺は飲み込んだ。
クロの言葉と同時に四方から魔法が展開される。
それによって俺の身体は雁字搦めにされ、周囲を魔法の檻で囲われた。
「ククク、お前でもやはり仕事終わりは気が緩むんだな。悪く思うなよ」
クロが唐突に告げた言葉に、俺は動揺する……ことは無い。
俺の心中を巡るのはたった一つの感情。
━━ああ、やっぱりか。
予感はあった。というか、確信していた。
魔法使いを発見してからはそれを考えないようにしてた。
でも、わかってた。
暗殺者は利用するだけ利用して捨てる物。
悲しくはない。そういうものだって知ってるから。
悔しくはない。罠には自分から掛かったから。
もう何もかもどうでもいい。
「じゃあな、アレン・フォード。名前くらいは覚えておいてやるよ」
「どうでもいい。やるなら早くしろ」
「……そうかよ。━━殺れ」
クロの言葉を皮切りに俺に魔法の雨が降り注ぐ。
魔法が俺の身体を焼き、抉り、切り裂き、破壊する。
尋常ではない痛みが全身を駆け巡るが、俺はそれにすら関心を持てなかった。
やがて、瀕死で動かなくなった俺を放置してクロ達は消えた。
俺はもう痛くもなんともなかった。
自分の意識やら感覚やらが消え去っていくのを感じる。
これが死ぬってことか。
死んだらどうなるんだろう。
……まあ、どうでもいいか。
意識がもう限界だ。
この世とはお別れだな。
……もし、来世があるなら……願わくば……平穏な世界を……
そして、俺の意識は闇に消え去った。
◇ ◇ ◇
「ん……?」
俺は目を覚ました。
意外と生命力高いんだな……それか、日頃の行いがいいからか? まあ、それはないか。
しかし、起き上がれないな……思ったより重症のようだ。
だが、首や腕の先くらいは動く。
怪我の状況を見ようと、腕を軽く上げたが俺の目に写ったのは━━なんとも小さく弱々しい腕。
まるで赤ん坊のようだ。
……赤ん坊?
待て待て待て! 明らかに変だ!
いくら重症でも幼児退行するはずが無い!
一体なぜ……いや、前に潜入した教会の連中から聞いたことがある。
稀に前世の記憶を持って産まれてくる子供のことを。
確か、その通称は……転生者。
つまり、俺は……転生したってことか?
━━はあああああああああああ!?
今後の投稿についてのお知らせ。
私はこの作品の他に一つの連載ともう一つの新連載をしており、学生業の傍ら趣味として書いています。
しかし、同時に三作品を連載するのは大変なため、新連載の二つは十月までの評価などで重点的に連載するのを決めようと思っています。
大変身勝手なことなのは承知しておりますが、なにとぞご理解ください。
今日から五日間は毎日投稿を致します。
もし、もう一方を重点的に連載することになっても、今後投稿しないわけではないのでご安心ください。
もしまだまだ読みたいと思っていただいたら、下の★マークでの評価やブックマーク等をしていただけると嬉しいです。
下にもう一つの新連載のURLを貼っておくので、読んでいただけると嬉しいです。
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