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真紅の髪の

ベルカイム王国を抜けて、北東方向に進んだところに女性が歩いていた。真紅の髪は背中まで伸びており、ウェーブがかかっていた。服装は肌の露出が多く、妖艶であった。彼女はギルドマスターから依頼を受け、ある小さな村に向かって歩いていた。


川を渡り、森を抜け、10分ばかり歩くと目的の村へ着いた。

村の中心からすぐ左にある家を彼女はノックした。ドアが開いた。不安げな顔をした男性が出てきた。


「ああっ!お待ちしておりましたディアーヌ様!どうぞこちらへ...。」


まるで神にすがるようにその男性は頼みこんだ。

ディアーヌは微笑みながら会釈し、家へ上がった。


家に上がるとそこには一人の少年が苦悶の表情を浮かべてベットに横たわっていた。


「二週間前に息子のザールが魔物に襲われてしまって...。幸い命は取り留めたのですが、魔物の爪に毒がついていたらしくて...お願いします...!どうか息

子を助けてください!」


そう父親が言うと、ディアーヌは治療を開始した。彼女が自らの手を少年の頭の前にかざすと、少年の体が光に包まれた。


しばらくすると、少年を包む光が消え、少年は起き上がった。


「ん...父...さん...?」

「ザール!!もう体は大丈夫なのか!?」

「うん、もう全然苦しくないよ!」

「そうか!よかった!本当に良かった!」


父親は涙を流しながら息子を抱擁した。


「ありがとうございます!本当にありがとうございます!!」


深く頭を下げる父親にディアーヌは会釈し、家を出た。


無事依頼を解決したディアーヌはベルカイム王国へ戻ってきた。依頼完了の報告をするために寄り道をせず、街を淡々と歩き、ギルドに向かっていた。


ギルドに戻るとディアーヌは景気よく言った。


「こんにちわ〜♡ヒーラーのディアーヌでぇす♡依頼達成の報告をしに来ましたぁ~♡」

「ご...ご苦労さまです。」


受付嬢が鳩が豆鉄砲をくらった様な顔をしていたが、ディアーヌは淡々と奥の部屋へと向かっていった。


ただひたすら淡々と歩みを進めていき、ギルドマスターがいる部屋まで来た。ドアをノックする。入室の許可が出る。


「こんにちわ〜♡ヒーラーのディアーヌでぇす♡ギルドマスター、御用ですかぁ〜?♡」


「あ、ああ、そうだ。お主に話したいことがあっての...。」


ギルドマスターは受付嬢ほど困惑しなかったが、若干、返事がしどろもどろになった。


何を企んでいるのかわからないが、ごく自然な動作をしているかのようにディアーヌは何かを企んでいるような笑みを浮かべながら、ギルドマスターに近づき、肩に腕を回した。今度こそギルドマスターは驚いた。


「な、なにをしているのだ...。」


「えぇ?ああん、これですかぁ?これはただのスキンシップですよぉ♡」


「いや、その、まあ別に悪いと言っているわけではなくてね...。2人っきりの密室でこう密着されるとだね...。この状況を見た第三者は、わしがギルドマスターという権力を活かしてお主を誑かせているみたいに見えちゃうと、わしは思うんだよね...。そうなるとわし、速攻で牢屋行き、いや、ヘタしたら極刑ってことも...。」


ギルドマスターは続けた。


「まあ、とにかくとんでもないことにになっちゃうからできればその控えて欲しくての...。ギルドの掟はどこ行っても厳しいからのぉ...。ましてやギルドの長ならなおさら...。」


「えぇ〜?大丈夫ですよぉ〜♡ギルドマスターのぉ〜オズワルド様にぃ〜んアポを取れる方はそうそういないですよぉん♡」


「いやでも以外とそうでもなくての...。」


オズワルドがそう言い終わると、ドアをノックする音が部屋に鳴り響いた。


「言ったとおりじゃろ?だから...って何で腕にしがみついてるんじゃ?」

「私、突然の事でびっくりしちゃってぇん♡」

「えぇ...?」


ドアをもう一度ノックする音が聞こえた。


「あれ?オズワルド様?いらっしゃらないのかな...?いやでも物音が聞こえたような...。」


部屋の外からドレイミーの声が聞こえてくる。


「まずい!ディアーヌ離れるのじゃ!」

「オズワルド様の手きれーい♡」

「お、お主、そんなこと言っとる場合ではないぞ!」


部屋の外からドレイミーの声聞こえる。


「いらっしゃらないかもしれないけど一応確認しておこう...。」

「お、おおお!ま、待つのじゃ!ドレイ...」


オズワルドの声はドレイミーに届かず、ドアが開かれた。


「失礼します...。オズワ...ッ...!?」


ギルドマスター室に広がっていた光景、それは赤髪の美女とイチャイチャを繰り広げる英雄オズワルドの姿だった、と、ドレイミーは錯覚した。


しばらく静寂が続いた後、赤髪の美女は艶めかしい声でこう囁いた。


「うふふ...見つかっちゃいましたね...オズワルド様♡」


「し、失礼しましたッ!。」


ドレイミーは急いでドアを閉めた。


「お主!?な、な、な、何を言っとるんじゃ!?!?ってそれよりも...。」


ドアが閉まったあと、部屋の外からドレイミーが走って逃げるような足音が聞こえた。


オズワルドは数十年ぶりに全力で叫び、走った。


「おおおおおおおおおお!!!待ってくれえ!!ドレイミィーーーー!!!誤解じゃあああああああああ!!!」


オズワルドはとにかく叫んだ。叫び続けた。

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