毛皮のフード
「付け心地はどうかしら?」
エルザが尋ねた。
「すっごいもふもふで暖かいよ〜!」
リーヴィアはもふもふしていた。
(かわいい...。)
エルザは心の中で思っていたが、気持ちを切り替え尋ねる。
「効果の方はどう?」
「うん!確かに凄いよ!寒さを殆ど感じないよ〜!」
「それは良かった...効果は本物のようね。」
もふもふを十分堪能したところでリーヴィアが尋ねる。
「この毛皮のフード、どっちが付ける?私、このくらいの寒さなら我慢できるから、エルザ付ける?」
「いえ、大丈夫よ、着込んでるから。遠慮しないでもいいのよ。」
「そう?ごめんね、ありがとう!」
話が済んだところで二人は探検を再開した。
探索をしていると8階で再び宝箱を見つけた。
宝箱を開けると刀身が赤く燃え盛っている剣が入っていた。エルザがアナライズを唱える。
炎の剣
刀身が常に燃えている不思議な剣。炎を弱点とする魔物に有効。
剣を振るうと激しく燃え盛り、鞘に収める時などは炎はほとんど静まる。
「術式が組み込まれているわけではなさそうね...。説明にある通り、不思議な剣ね。」
「魔法で燃えてる訳じゃないんだ。」
「うん、私もそう思ったんだけど違うみたいね。」
リーヴィアは炎の剣を手に取る。
「不思議な剣だなぁ〜、あっ見てエルザ!剣を振ったら本当に炎の勢いが増したよ!」
「ほんとねぇ...これはかなり冒険の手助けになるんじゃないかしら。」
「鞘に収める時は炎が静まる...これなら触れるかな?ちょっと触ってみよ〜!」
リーヴィアは剣の刀身に触れた。
「わっ!あったかい!エルザも触ってみて!」
「どれどれ...うん、確かにあったかい...。」
「これで暖が取れるね!」
「ふふっ、そうね。」
「うん?エルザ嬉しそうだね。」
「リーヴィアの喜んでいる姿を見るとね。自然と私も嬉しくなるのよね。」
「そうなんだ〜。」
リーヴィアは続けた。
「私もエルザに喜んでもらえてうれしいよ〜!」
「ふふっ...」
炎の剣で暖まりながら二人は楽しくお喋りをしていた。
「そういえば結構歩いたよね〜...そろそろ休憩する?。」
「そうねぇ...そうしましょうか。」
2人は周囲にあった大きな石を炎の剣で少し温めてからそれに座った。
「ふぅ〜今何階登ったぐらいかな〜...」
「そうねぇ...8階ぐらいだったかしら。」
「あれ?まだそのくらいしか登ってなかったっけ?」
「ええ、一階ごとの階層が広いから、結構進んでいるように感じるけど、実際はそんなに進んでないのよね。」
「この塔って何階ぐらいあるんだろう?」
「雲まで突き抜けてワケだから、何百階クラスじゃないかしら。」
「ひょえ〜!まだそんなにあるの〜!」
「まあ、本来の目的はこの塔のボスを倒すことだから探索は気が向いたらでいいんじゃないかしら。」
「あっそうだったね、探索に夢中だったからつい忘れてたっけ。」
「これだけくまなく塔内を歩いているわけだから、そろそろボスと出くわしてもおかしくないと思うんだけど。まあいいわ。」
「ボスって手強いかな...。」
「この塔探索前はちょっと厳しかったかもしれないけど、今の状態なら間違いなく勝てるわ。」
「えっ...そうなの?」
「大賢者の施しを受けた防具と、あのとても便利な炎の剣があればもうこの塔に怖いものはいないわ。」
エルザは続けた。
「もともと氷の塔探索中に多少は強い装備を手に入れて、それを使ってボスを倒す算段で塔に入ったわけだから、以前問題なしね。」
「そっか〜、エルザがそこまで言うなら問題ないね〜!」
「ええ、もう装備の力に頼るだけでいいんだけど、一応作戦を考えておきましょう。」
「うん!」
二人は作戦会議を始めた。エルザが作戦の大まかな流れを話す。
「...っていう作戦なんだけど...。」
「うん...。」
「リーヴィアが嫌なら私が代わりにその役をやるわ。」
「いや、大丈夫!私に任せておいてよ!」
「そう?ごめんね。お願いするわ。」
作戦会議を終えた二人は自分たちの生い立ちについて語り合った。
「すごーい!!じゃあエルザはその学年で一番成績がいいんだ!」
「え、ええ...まあ。」
エルザは照れていた。
「だから魔法学院で習う魔法はすべて完璧に扱えるわ。」
「頼もしいなあ〜」
少し間を開けたあとエルザが聞いた。
「リーヴィアはアルトの村から来たんだよね?」
「うん!そうだよ!小さい村だけど緑豊かな...」
リーヴィアが話している途中、猛烈な吹雪が突然吹き荒れた。辺りにホワイトアウトが発生した。
「うっ...エルザ...こ、これって...。」
「ええ、間違いない。ボスの登場よ!」
二人のいる20メートル先に杖を持った魔物が立っていた。
「じゃあ、リーヴィア、お願い!」
「うん!任せて!」
炎の剣を構え、リーヴィアは杖を持った魔物に向かって走り出した。