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氷の塔、体を寄せ合う2人

ベルカイム王国を北西方向に進むと、氷の塔が見えてきた。全長は雲を突き抜ける程高く、少し青みがかっていて、全体が少し傾いていた。


塔の目の前に辿り着いた。塔全体の表面が薄い氷で覆われていて、冷気が漏れ出ている、触ると冷たい。


「魔法が使われているとは言え、かなり大規模で尚かつ繊細な操作が出来る氷魔法の術者でないとこんな事は出来ないわ…。」


「誰が作ったのかな...」


「魔王本人か、側近の部下でしょうね...」


エルザは続けた。


「ただこの塔の管理者は流石にその者達ではないだろうし、そうならばリーヴィアの勇者の剣の能力が発動する程度の魔物しか出て来ない。気楽に行きましょう」


エルザは淑やかに笑った。クールビューティー感が満遍なく伝わってくるキラースマイルだった。同性の私ですら少し胸が高鳴るほどに。


「う、うん...そうだね!」


私は少し動揺した。

このままクールビューティー視線ビームをもろに受け続けたら、きっと私はエルザに惚れてしまうので、直ぐに塔の中へ入ることにした。しかし、ここ最近視線ビームを撃たれる回数が多過ぎる。本気でみんな私を惚れさせようとしてきてない...?流石に気のせいだよね?


 塔の門は開けっぱなしになっていて、そこから入れた。中は氷系統の魔物が闊歩していて、直ぐに襲ってくる気配はないようだ。

「襲って来ないならわざわざ迎え討つ必要は無いわね。さっそく探検しましょう♪」


エルザは上機嫌だった。


「うん、そうだね!」


私も上機嫌だった、ついこの間まで村娘だったから、冒険することがとっても新鮮に感じるのかも知れない。


氷の塔一階を探索していると、塔の冷気に耐えることが出来る、蝙蝠のような魔物が私達を襲って来た。


「魔物は温厚な方が珍しいから、こうなるのは当たり前ね。リーヴィア、早速お願い!」


「わかった!」


私は早速、勇者の剣を振り上げ、念じた。剣が眩く光ると、忽ち魔物は攻撃を止め、私達から離れていった...。


「流石ね、リーヴィア。誰も傷つけずに見事に魔物を撃退したわ。」


「ありがとう。でも凄いのはこの勇者の剣だよ。私はとてもまだまだ戦えないよ。」


「いえ、勇者リーヴィアとして勇敢に冒険し始めたことが偉大よ。勇者になったとしても力を誤った使い方をする者もいるって聞いたこともあるし。」


「そ、そう?そんなに褒めて讃えてくれるとな、なんだか照れちゃうなぁ...///嬉しいけど。」


「ふふっ...もっと誇ってもいいはずよ。あっ...リーヴィアあそこに宝箱があるわよ。」


エルザが北西方向を指差した。


「ホント!?行こ行こ!」


エルザの手を取りつつリーヴィアは走った。不意打ちに近い大胆な彼女の行動に、虚をつかれたエルザの顔は少し赤らんでいた。


2人で小走りで宝箱の前まで来た。宝箱の外装を調べてみると鍵がかかっていなかった。


「じゃあ...開けてみるね...。」


「うん、お願い。」


リーヴィアは宝箱を開けた。中に入っていた物は鮮やかな緑が印象的な野草だった。


「エルザ...これは...?」


「ヒララギソウ...普通の薬草ね。駆け出しの冒険家がお世話になる薬草。」


エルザは続けた。


「まあ、よくある事ね。宝箱に入っている物全てが貴重な訳じゃない、私も最初に開けた宝箱の中身は厳重に保管されたヒララギソウ5個だったもの...。」


「そういうものなんだ...。」


「ええ、こう言うのは気持ちを切り替えて次を探すのが一番ね。」


二人はヒララギソウを手持ちに加えた後、再び探索を始めた。


塔の階段を2回登って少し歩いたところ、リーヴィアがエルザに話しかけた。


「それにしても冷えるね...」


「そうねぇ確かに冷えるわね。」


少し間を開けた後、エルザが提案を出した。


「じゃあ...くっつけばいいんじゃない?」


「えっ...どういう」


リーヴィアが喋り終わる前にエルザは彼女に抱きついた。


「えっ!?えっ!?エルザ!?」


「寒い時はやっぱりこうするに限るでしょ?」


「そ、そうだけど...まだ心の準備が」


「でも、はやく暖まりたいじゃない?」


エルザが身体を寄せれば寄せるほど、リーヴィアは高揚し、顔が火照る。エルザは更に続けた。


「私、リーヴィアの事、大好きなんだけど...リーヴィアは私の事好き?」


「もちろん、私もエルザのこと大好きだよ!ただこの状況だとちょっと違う意味に聞こえるような...」


「ちょっと違う意味ってどういう意味?」


「そ、その...えっと...。」


リーヴィアは言葉に詰まり、顔を更に赤らめた。

その様子を見てエルザは静かに囁いた。


「...かわいい。」


とどめを刺すかのようなエルザの言葉でリーヴィアの顔は真っ赤になった。


「ごめんなさい、からかい過ぎちゃった。悪ノリが過ぎたわ。」


エルザは満足したかのように身体を離した。


「それにくっついてちゃ歩けないし...」


リーヴィアはまだ状況が理解出来ずに混乱していた。


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