透過の魔女
「ごめんください、私は冒険者のディアーヌと申します。どなたかいらっしゃいますか?」
ディアーヌがそう言った。
するとドアが開き、一人の女性が物静かに歩み出た。
「こんにちは...。」
女性はゆっくりとお辞儀した。
「4人の冒険者の皆さん、ここまで来るのに、さぞお疲れでしょう...。よろしければ中へどうぞ...。」
女性には妖艶とは異なるどこか不思議な魅力があり、4人は引き込まれていった。
「じゃ、じゃあせっかくなんで...すみません失礼しま~す。」
ドレイミーはそう言った。
「ゆっくりお休みになってください...。」
女性は笑顔で迎い入れた。
「そういえば、自己紹介がまだでしたね...。はじめまして、この森に住んでいる魔女です。森の近くの村の住人からはよく『透過の魔女』と呼ばれています...。お見知りおき下さい...。」
透過の魔女はそう言うと深いお辞儀をした。
「えっとドレイミーです!よろしくおねがいします!」
とドレイミーは挨拶したが、
(うおおおああああああ!!!透過の魔女さん、胸でっっっっっっっっか!!!!)
と心の中でツッコんでいた。
透過の魔女は大層豊満であった。
ドレイミーに続けて三人も自己紹介するをした。
透過の魔女の髪は背中の真ん中辺りまで伸びていて、色は金色だった。瞳は吸い込まれそうな翡翠の色をしていて、頭に紅色の花の髪飾りを付けていた。また、肌の露出が多い、深みがある紫色のイブニングドレスを着ていた。
「あ、あの...透過の魔女さんは、普段何をされているのですか?」
リーヴィアは聞いた。
「普段は独自の薬の開発を行っております...。魔女達の集まりである『魔女会』で共有する資料を元に薬を開発しています。」
魔女は続けた。
「それの私の代表作がこの『透過薬』なのですけど...あの、よろしければどうぞ...。」
「あ、ありがとうございます!」
リーヴィアは透過薬を貰った。
「飲むと体が透明になる薬です。効果は1時間程ですね。」
「へぇぇすごい!でも本当にいいのですか?貴重な薬ですのに...。」
「いえ、レシピと調合方法を知っていれば毎日1回使っても大丈夫なくらい大量生産出来ますから、無くなったら私を訪ねてください。」
魔女は話を続けた。
「薬の研究をやるならここが一番ですが、ここに住んでいると人との交流が極端に少なくなってしまうのですよね...。魔女と言えど、たまには人とおしゃべりがしたいですね...。」
透過の魔女は微笑みを絶やさないでそう言った。
「あっ、あと、友人に誘われてたまに王国貴族主催のパーティーに参加しますね。その友人は硬化の魔女って言うのですけど...。」
「硬化の魔女?」
ディアーヌは聞いた。
「はい、彼女は私と違ってあらゆる場所に出かけていますね。パーティーなら何でも参加しちゃうような人なんです。あっ...ちょっと待ってて下さい...。」
透過の魔女は家の奥へ行った後、一つの地図を持って戻ってきた。
「この◯の書いてある所に彼女はいます。もし、この近くに用があったら是非訪ねてみてください。彼女も自分が開発した薬をいつか試してみたいといっていましたので。」
「そうなんですか、では機会があったらお会いしますね♡地図、ありがとうございます♡」
ディアーヌは地図を受け取った。
「いえいえ、あっエルザさんとドレイミーさんは魔術師でしたよね?こちらに来てみてください、奥にいいものがありますよ。」
「え、あっはい!」
「わかりました。」
透過の魔女に呼ばれた二人は家の奥の書斎へと案内された。
「確かこの辺にあったはず...あっありました。これです。」
透過の魔女はある書物を取り出した。
「これは、え...!?まさか...!?」
「はい...、炎の上級魔法、『メテオ』です。硬化の魔女が私にくれたのですけど、私は攻撃魔法を使えないので持て余していたんですよね...。」
透過の魔女は続けた。
「それに調べて見たらどうやら出回っている数が非常に少ないらしくて、もったいなくて捨てようにも捨てれなくて...。もし良かったらこれも持っていって下さい。」
「い、いいのですか!?」
エルザは驚きながら彼女に聞いた。
「ええ、もちろん。これほど貴重な物を私が持っていても仕方ありませんから...。」
「あ、ありがとうございます...!それでは大切に扱わせて頂きます...!」
エルザは透過の魔女にお礼をした。
「いつも冷静なエルザさんがあんなに驚いているとは...。とんでもない魔術書なのかな...。」
ドレイミーは二人の様子をただ眺めていた。
「あっドレイミーさんもどうぞ。まだ2つあるので一つはドレイミーさん、もう一つはギルドが所持していただければいいと思います。」
「あ、ありがとうございます!....うん?このサインは...」
「大賢者の1人、レクシエルのものですね。」
「なにイイイイィィィィ!!!???大賢者ですとおおおお!?!?!?」
ドレイミーはたまげていた。