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ひとりぼっちの世界、たった二人だけの星  作者: 鈴木りんご
三章「人類の樹」
41/51

41話

☆☆


 シンとの過去を思い出した後、私はふと別のことを思い出した。


 八ヶ月と十八日前、人類の樹(ユグドラシル)内にあるナノマシンプラントで人間をエミュレートして作り上げた固体が、三日前にこの人類の樹(ユグドラシル)に帰還していたのだ。


 事の発端は十ヶ月ほど前、私は思った。人類がその命を賭して守った世界を観測してみようと。


 人類が滅びる以前であれば、ネットワークに繋がったカメラから世界の様子を好きなだけ確認することが可能だった。


 しかし人類が滅び全ての電気機器が機能停止した今、それは不可能となった。


 人類の樹(ユグドラシル)自体にカメラは備わっていない。だから今の私は完全に盲目だった。


 それで私が考えた至った作戦が、実際に外に出て目視するという方法だった。


 しかしそれにはいろいろ問題があった。なぜなら私は人類のために作られた施設で、人類のため以外にその機能を行使することを許されていない。


 それでも一つだけ例外があった。それは私には自衛の機能も備わっているということ。


 だからその解釈をうまく誤魔化して、今の世界の観測を試みることにした。


 そして私は人類の樹(ユグドラシル)内に設置されていたナノマシンプラントで人間をエミュレートした人工の生命体を生成することにした。


 問題はこの固体の意識や知識といったものをどう設定するか。


 私は私の意識をインストールすることにした。理由はそれがもっとも簡単な方法だったからだ。


 しかし今の私の意識をそのまま複製することは躊躇われた。私は……この私自身以外にシンとの思い出を渡したくはなかった。


 だから私は私の意識のバックアップの中で一番古い、私という意識が生まれたばかりのものをインストールすることにした。


 そして私の意識をインストールするのだから、容姿は以前シンとともに過ごしたときに設定した姿を元に、それを幼くしたものにした。


 そうして完成したもう一人の私に世界の様子を観測に行かせて八ヶ月……三日前に彼女は帰還を果たしていた。


 しかし私はその記憶の回収をまだしていなかった。


 恐かったのだ。何が恐いのか、私自身正確にはわからない。それでもなぜか躊躇われた。


 しかしいつまでも先延ばししているわけにもいかない。


 だから私は帰還した少女の記憶を回収することにした……

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