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ひとりぼっちの世界、たった二人だけの星  作者: 鈴木りんご
三章「人類の樹」
29/51

29話

☆☆


 一人は嫌だった。


 一人でいることが寂しかった。


 でも……私は全てだった。私だけだった。私以外なんていなかった。みんなが私だった。


 だから私はたった一人。どうしようもなく一人ぼっちだった。


 しかし彼だけは違った。


 彼は私たちの枠組みからこぼれ落ちてしまった欠片。


 彼は私ではなった。


 だから私は彼と友達になることができた。


 だから私は彼を好きになることができた。


 以前の私は一人は嫌だった。


 一人でいることが寂しかった。


 でも今は違う。


 彼がいないことが嫌だった。


 彼がいないことが寂しかった。


 だから想う。


 彼のことを想う。


 他にするべきことも、したいこともない。


 だから、ただ彼のことを想う。


 彼と過ごした過去の思い出にすがる。


 素晴らしい日々だった。


 毎日が太陽の光を浴びた宝石みたいにきらきらと輝いていた。


 彼と過ごす時間は楽しくて、彼と別れた後も明日を想うだけで幸せになることができた。


 そんな日々を思い出す。彼と出会った最初のときから順に想い、巡っていく。

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