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21話
☆☆
空は同じ空でもいろいろな名前を持っていて、どんな名前の空だって変わらずに美しかった。
空を見上げるだけで以前の私は幸せになることができた。
私は空を見るのが本当に大好きだった。
でも……彼を失ってわかった。
私は空を見上げるのが好きだったわけじゃない。
私は彼と一緒に見上げる空が好きだったんだ。
私は空を見上げ、同じ空の下にいる彼を想うのが好きだったんだ。
だから……彼のいなくなった世界で見上げる空は私を幸せにしてくれることはない。
以前はあんなに温かくて美しかったのに……
今は冷たくて儚い……
今の私はどんな空を見上げても、ただ悲しくなることしかできない。
私が見上げている空は、彼と見上げていたあの頃と変わらないはずなのに……




