最強ショートショート2
グオオオオオ
黒いドラゴンが森が震えるような咆哮を出しながら空を飛んでいる。
その下には鎧を着た男たちと杖を持った術者がおり、弓矢と術式で攻撃する。
しかし、ドラゴンには全く効いている様子はなく、炎の息によって返りうちにされていた。
ドラゴンは人間を憎み、自身の呪いの根源となる城を破壊するため、速度を上げて飛んでいく。
「召喚術者が亡くなった召喚獣は危険って本当だったんだなあ」
ドラゴンの背中で男は寝転ぶ。
ドラゴンは速度を落とした。
(お前は誰だ? いつの間にそこにいた…?)
男の頭の中に声が入り込む。どうやらこのドラゴンから発せられているらしい。
「ドラゴンともなると、人の言葉を理解できるのか。一つ勉強になったなあ。」
(お前は誰だと聞いている!)
「名乗るほどの名はないさ… ちょっと王様に頼まれててさ、城を襲撃するのやめてくれない?」
グオオオオオオオオオ
ドラゴンはその一言でさらに大きな咆哮をあげた。
(今更、何を!! お主らが勝手に呼び出して! 必要なくなれば捨て! 私は永遠の苦痛を強いられ…)
「はいはい、わかったわかった。交渉は決裂だな…」
直後、ドラゴンは急激に速度を上げる、緩めるを繰り返す。
どうやら背中から男を落とそうとしているらしい。
「俺がお前の背中で寝転んだ瞬間に勝敗は決してるから…」
男は諭すような口調で言う。
男の背中は氷の術式でしっかりとドラゴンの背中とくっついている。
かなり強固な氷でスピードを上げるくらいでは振り解けない。
ドラゴンがそれに気づき、岩肌に自身の背中をぶつけようとしたとき、自身の異変に気づいた。
(体が重い… 何をした… 貴様…!)
ドラゴンは思うように飛べずそのまま地上に降り立つ。
(これは… もう… 動けぬ…)
「お前の体温を奪っただけだ。図体がでかくてちょっと時間がかかったが」
(先に岩肌に自身の体をぶつけるべきだったか…)
「それならそれで別の手を打つさ」
(人間… 風情が…)
そのままドラゴンは眠ってしまう。
「やっぱり、ドラゴンっていってもヘビに羽が生えただけか、一つ勉強になったなあ。」