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友達の家のドアを開けた時、相手の父親が強襲してくる確率を求めよ。

メリーはハンゾーに恋してる訳ではないです。クラスにいる足の速い男の子のことが気になる、ぐらいのものだと思ってください。


「起きて、ハンゾー」


何だよ…まだ朝早いだろ...もうちょっと寝かしてくれ。具体的には、あと一時間ほど。



「起きないと斬っちゃうよ?」

「やめろ、どこ斬ろうとしてんだ」



そこ斬ったら男として死んじゃうから。未使用のまま死ぬとか悲しすぎる。



「冗談、本気では言ってない」

「嘘つけ、絶対本気だったろ」

「そんなことより、もう時間。キリカは下で待ってるから用意して」

「もうそんな時間か」


キリカはもう行ってるんだな、気を使って寝かしてくれたんだろう。


「あの」

「なに?」

「着替えるから出ていって」

「大丈夫」

「俺が大丈夫じゃないから」

「朝からお盛ん、けど私はそんなに安くない」

「そういう意味じゃねえから!」



とっととメリーを追い出し、着替える。まだそんなにこの身体になって時間が経ってないのに中々出来上がってきたな、いい調子だ。


「じーっ」

「おい」

「いい体、実に好み」

「安い女じゃないって言ってなかったか」

「筋肉の前には無力、無念」

「俺のせいみたいに言ってんじゃねえよ」



こりないな、こいつも。まあいい、見られて困るものも無いからな。着替え終わったから下に降りる。



「ハンゾー、おはよう」

「おはよう、キリカ」

「ごめんね?気持ち良さそうに寝てたから」

「気を使ってくれたんだろ、ありがとな」

「むむ…夫婦のような会話、やはりハンゾーは男色?」


最近は否定もできない、キリカという存在がいるから、だけどキリカが魅力的なだけであって俺は男が好きな訳では無いからな、微妙なところだ。


「さあな」

「えっ」

「えっ」


二人とも二者ともそれぞれの反応をする、一人は驚き、一人は期待。同じ言葉を発しても反応は違う。


「これは驚き」

「え、えっとハンゾー。どうなの?本当に?」

「もう時間だろ、行こう」


俺は誤魔化し、逃げるように追求を逃れる。別に違うと言っても良かったけど、それじゃまるで俺が同性愛者が嫌だという印象をキリカに与えるかも知れない。最近はそう思うようになった。



「ハンゾーくん。やっと向き合ったんだね」



店主が小声で後ろから声をかけてきた。後ろ手で手を振ると、嬉しそうな笑い声が聞こえる。ただの腐女子かと思っていたがキリカのことをちゃんと心配してたようだ。


「まぁ、いい。キリカが良い子なのは知ってるから」

「ボクはそんな...!」

「貴方が一人目になる、これでいい」

「ええ!?何の話?」

「わかってるはず、あとは貴方の勇気だけ。何もしないなら私が行くだけ」


メリーとキリカが何か小声で話してる。どうしたの、もしかして俺の悪口か。


「発破はかけといたから、ちゃんと答えてあげて」

「...おう、当たり前だ。任せろ」


耳元でメリーが言う。メリー、お前良い奴だよ、友達の為にそんなこと出来るなんてな。



「友達だから、当たり前」



優しくできる奴はいくらでもいる、けど相手のことを思って厳しくできる奴はそんなにいない。みんな怖いからだ、関係が崩れるのが。メリーはそんなこと気にせず本当にキリカのことを考えてくれてる。メリーと友達になれてよかった。


「は、ハンゾー」

「なんだ?」

「あ、あのね、ちょっと、その」

「落ち着いて話してくれて大丈夫だ、ちゃんと聞くから」

「う、うん、ありがとう。それでね、メリーの家に行ったあと言いたいことがあるんだ。聞いてくれる?」

「ああ、いくらでも」

「ありがとう!」


ちゃんと考えたようだ。すっきりした顔をしてる。俺もただ可愛いってだけじゃなく、キリカの幸せの為によく考えよう。


「もうすぐ馬車が来る、乗ろう」

「ああ、キリカ行こう」

「うん!」


とりあえず今はメリーの父親に殺されないように頑張らないとな。





一時間ほど馬車を走らせた頃に着いた。豪邸だ、けどただ豪邸なだけじゃない、かなり丈夫に作られている。流石武闘派貴族。


「ここが私の家」

「大きいな」

「立派な家だねー」

「とりあえず入って、中で私の家族が待ってるから。友達が見たいとか言って聞かなかった」

「良い親御さんじゃないか」

「ちょっと恥ずかしい…」


よし、じゃあ尋常に、行くか。俺達は玄関に入り、リビングに行った。




「ようこそ!俺の家に!そして、隙ありぃ!!」

「うぉおお!?」

「ハンゾー!?」

「ふっ、甘いな!メリー!そこの男の子は手紙で気になってる子とは違うだろう、今の子で間違いないな?」

「うん、合ってる。親としては間違ってるけど。あと、壁に張り付いて待機とかゴキブリみたい」

「ハハハ!まあそういうな、お前に勝ったという男の子と戦ってみたかっただけだ!だが思いのほか早く終わったな、隣の部屋まで行ったようだ。メリー、運んで来てくれ」

「その必要はない」



不思議そうな顔をするメリーの父親。だがその油断が命取り。



「勝手に勝った気になってんじゃねーよ」

「なにっ!」


後ろに回り込み横凪の強襲。マジか、全力で殺気隠して近づいたのに反応しやがった。


「ふんっ!」

「くっ!」


しかも力で押し返される。このオヤジ力強え!


「ほう、その年でそこまでの練度の気配遮断か、凄まじい才能だな」

「生きていくために仕方なく磨くしかなかったんでね」

「それはそれは...強いわけだ」


一足で距離を詰められる、親子揃ってヤバいな、勝てる気がしない。


「ふっ!しかし、何故最初の斬撃を受けて平気だったんだ?」

「ハァッ!俺に勝てたら教えてやりますよ!」

「ハハッ!それは楽しみだ!」

「ぐぅっ!」


剣戟の最中に蹴りを入れられる、格闘技の大切さもわかっているようだ。


「足癖が悪くてすまんね」

「上等だよ!」

「いい威勢だ」

「オラァ!」

「だが力が足りない、技のみ練度が高くてもそれに見合った力を出せぬなら二流だ」


「あっやべ」

「終わりだな、楽しかったぞ」



刀を弾き飛ばされる、向こうは刀で峰打ちしてこようとしてる。絶体絶命。これは負けたか。



「ハンゾー!負けちゃやだよ!ハンゾーは、ボクのヒーローなんだから!」



大切な人の声が聞こえた、いつもいつも俺の心配をしてくれた、何があってもあいつが、いてくれたから、俺はこの身体で生きていこうって思えたんだ。だからそんな大切な人の想いを、裏切ってたまるか。


倍だ、さっきの倍のスピードで動く。だから、俺の筋肉よ、心臓よ、手足たち。



動け。




「なに、消えた!?」




「何探してんだ、一緒に探してやろうか?」




「うおぉ!?」

「遅せぇよ」



交錯、どちらも刀を振り抜いている。もちろん峰だが。



「強いな」

「あんたもな」

「ははっ、だが、俺も...引...退...かぁ?」



そう言ってメリーの父親は倒れた。何かギャグっぽい登場だったが攻撃はシリアスだったな。一切手加減無しだ。けど



「大切な人が近くにいた分、俺が上だった。それ...だけ」



俺も倒れた。目の前が真っ暗になる、またキリカに心配されてしまう。まあ、それもいいか…。



『かっこよかったですよ、ハンゾーさん』






うぉ...知らない天井、そうか、戦ったんだったな。


「ハンゾー!!」

「キリカ」

「良かった...良かったよぅ...」


案の定心配をかけてしまったみたいだ。申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


「あのあと、ブラッド家のお抱え治癒魔法師に見てもらったら、心臓が破裂寸前まで酷使されてて危険な状態だって、それで、筋肉も断裂してて、もうダメかもって、だから、ボク...」

「ごめん」

「うわぁぁぁ!!ハンゾーのばがぁ〜、うっ、負けないでって言ったのはボクだけどぉ、ひっく、無茶はしないでって言ったじゃん!もうハンゾーが死にそうな姿は見たくないよ!う、うわぁぁぁん!!」

「本当にごめんなさい」


こんなにキリカに泣かれたのは初めてだ。それもそうか、目の前で好きな人が死にそうになったら誰だってこうなる。俺は前世の過ちをまた繰り返そうとしていたんだな。反省しないと。

だがどうやって俺は復活したんだ、奇跡としか言いようがないな。



『ふぅ...起きましたか、ハンゾーさん』



あれ、天使ちゃん何か疲れてる、大丈夫?



『別に大丈夫です、どっかのお馬鹿さんのフォローしただけですから』



そっか、大変だったね。何か愚痴とかあったら言ってね。



『気持ちだけ受け取っときますよ…』



あ、あと天使ちゃん。



『何ですか、私はもう寝ます…』



ありがとね。俺、あのままだと死んでたから。本当に感謝してる。



『えっ、何で気づいて...あっ!』



別にカマをかけたわけじゃないよ。単純に天使ちゃんがやってくれたんだろうなって。

だって、体の中でこんなに暖かい魔力が溢れてるからね。魔力って本人の基質が出るものだから。



『うぅ〜、隠した意味無いじゃないですか…いいです!不貞寝しますから!あと感謝は受け取っておきます!』



本当にいい子だな、俺がもし天寿を全うできたら真っ先に直接お礼を言いに行こう。



「あっ、起きた...良かった...」

「おぉ!大丈夫だったかハンゾーくん!」



何でそんなピンピンしてんだよ、このオヤジ。峰とはいえ思いっきり斬ったぞ、俺。



「身体に痛いところはある?」

「大丈夫だ、ありがとな」

「心配した」

「すまん...」

「いい?貴方は貴方が思っているより愛されている、私は出会った時間は短いし、辻斬りしちゃったけど、友達だと、そう思っている。そんな友達が、目の前で死にそうになっていたら、私は、悲しいし、悔しい、何もできない自分が嫌になる、だから、無理を、やめて、うっ、ひっく、ほしい、ううっうわあぁあん!」

「メリー...」

「勝負を仕掛けた私が言うことではないが、私からも頼む。君が死んだら娘が悲しむ。それに俺も一度剣を交えた身として君の事を友として認めている、私と娘の友を死なせないでくれ。だから無茶だけはしない、約束できるね?」

「はい、胸に刻んでおきます」

「よろしい、じゃあご飯にしよう!今日は友達が来たからといって妻がご馳走を作ってくれてる、たっぷり食べていってくれ」

「ありがとうございます!」



「ハンゾー...」

「キリカ、どうした?」

「死なないでね…」

「ああ、約束する」

「それなら今回は許してあげる…」

「ありがとう」

「ボクも強くなるから、待ってて」

「待ってるよ、ずっと」

「ハンゾーを守れるくらい強くなるから」

「それは...頼もしいな」

「うん、頑張る」


キリカの顔は覚悟を決めた男の顔だった。もう守られてるだけの自分は嫌だという表情だ。そうだな、俺も出来ることがあれば協力しよう。まあひとまず



「飯食いに行こうか」

「うん、今離れるから」

「手、繋いでいくか」

「うん」

「応援してる」

「うん」




「メリーちゃんのお友達ね!今日はよく来てくれたわね!美味しいものいっぱいあるから!ほら!座って!」

「今日はありがとうございます」

「ありがとうございます!」

「いいのよそんなの!あの子あんな性格だから根は優しいのに友達居なくって、嬉しいのよ私達も。あ、あとハンゾー君、主人がごめんなさいね...後でこっぴどく怒っとくから!」

「いえ、あの試合のお陰で得たものもあったので」


そう言うとメリー母は俺達の手を見ると微笑んだ。


「あらあら、良かったわね〜!あ、別に私達は同性同士の恋を差別したりしないから、気にしなくていいのよ!」


この家族はどの人もキリカが男だと分かっているようだ。何故だ、俺はわからなかったのに。


「あ、キリカ君、何で男ってバレたの?って顔してるわね。実は私達ブラッド家は相手の骨格やリーチ、構えとかを観察することをまずやらされるのよ、そうすると相手がどんな技を繰り出すのか容易にわかるから!便利でしょう?その応用で性別も簡単にわかるのよ、どんな精巧な女装をしててもね」


だからメリーもわかったのか、凄いなブラッド家。俺も観察はするけどそこまで細かくは見ていない。これからは見るように習慣づけよう。


「だから、そんな気にしなくてもいいのよ。ここに来たときは存分にイチャイチャしても大丈夫だから!」


優しい人だな、こういうとこはメリーに似ているかも知れない。



「さぁ!まずはご飯を食べましょう!」

「お母さん、そんなに張り切らなくていいから」

「もう、メリーちゃん!そんなこと言わない!じゃあみんなで」

「「「「「いただきます」」」」」



「そういえば昨日殺された人を見た」

「なにっ!メリー達は大丈夫だったのか!」

「ええ、犯人は逃げたようで」

「怖いわねぇ…気をつけないと駄目よ?夜道は二人か三人で歩くこと!」

「はい、気をつけます」

「でも、あの死体少しおかしかった」

「どうかしたの?メリー」

「あの死体、切断面が」

「あまりにも綺麗すぎる、か?」

「そう、それ」

「綺麗すぎたらどうなの?」

「普通、動く人間を斬ろうとしたら動いてる分、切断面がぶれて汚くなるんだ。だけどあの女の人は悲鳴をあげ、犯人に気づいたにも関わらずあんな斬られ方をした、これはあまりにもおかしい」

「どんな斬り方をしたらあんな綺麗に斬れるか皆目見当もつかない」

「ふむ...どのレベルの使い手ならばそんな芸当が出来るか…」


メリーの父は唸って考える、そしてハッとした顔で。


「そうだな…カムイ様クラスならばあるいは...」

「《剣聖》様ですか?でもあの人は死んで...」

「だからあの人クラスだ、剣の腕ならうちのお爺さんでも出来そうだがあの人はこんなこと絶対しないからな」

「そうなると魔王幹部の生き残りとかですかね?」

「ありえる話だ、やはり気をつけないと」


そうだな、あんな芸当できるのは前世の俺クラスだろうよ。だからこそ気になる。誰だ?


「そういえば、《剣聖》様には師匠が居たそうだが」


ドンッ!思わず机を叩く。


「あの人はそんな事しない、絶対に」

「そ、そうかすまないね変なこと言って」

「あっ、いえ、俺もいきなり、すいません」

「ハンゾー、大丈夫?」

「あぁ、大丈夫だ、少し疲れてるのかもしれない」

「なら泊まっていきなさい、部屋も用意してる」

「いえ、そこまでお世話になる訳には…」

「いいんだ、泊まっていきなさい」

「では...お言葉に甘えて、ありがとうございます」

「ありがとうございます」

「あっ、あとハンゾー君」

「何ですか?」

「最初の斬撃を受けても平気だったのは何故だい?」

「あぁ...あれですか?」

「良ければ教えてくれ」

「秘密です」

「え」

「俺に勝ったら、という約束でしたので」

「あっ、そういえば…」


そう言い残し、俺達は用意された部屋に行く。もう寝床も用意されていたのでキリカと一緒に寝る。


「ハンゾー」

「キリカ、何だ?」

「おやすみ」

「あぁおやすみ」


そう言うと少しはにかんで眠りにつく。これから頑張れよ、キリカ。俺は応援してるから。

キリカとの展開が早いと思う人もいるかもしれませんが、この二人、実はあのワーウルフ事件から結構時間が経ってます。宿も一緒なのでずっと一緒です。

ご飯もお風呂も一緒です(真顔)

ハンゾーもキリカもお互いの裸に結構耐性がついてきてます。キリカはちょっと恥ずかしいみたいですが。ハンゾーは心の中は童貞丸出しの反応です。お風呂を一緒に入ろうと言い出したのはキリカです。部屋のお風呂には入る度使用料がいるので二人で入ると節約になるとかそういう理由で,

裸に耐性がついてもお互いのちょっとした言動や仕草にドキドキしてます。可愛いね。

メリーはちょっと複雑だけど友達が幸せなら幸せ。といった感じでのほほんとしてます。


今回ハンゾーが無茶したのは張り切りすぎのせいですね、好きな人に良いとこを見せようとしたのと負けられない気持ちで自爆技の一つを使いました。これは前世の完璧に作り上げた身体なら耐えられたのですが子供の身体ではかなりの負荷がかかります。

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