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クール女子と男の娘の気持ち

キリカの容姿は水色の髪に儚げな守ってあげたくなる美少女という感じです。

ですが冒険者は弱い人には厳しい傾向にあり、しかも女ならともかく男なのでパーティは組まないということになってしまっていました。


「なぁ」

「どうしたの?」

「何でお前ついてきてるんだ?」

「楽しそうだから、あと死体見て怖い」

「そうか…帰れ」

「酷い、悪逆非道」


いきなり斬りかかってくるお前にだけは言われたくねえ。ほんとに何でついてくるんですかね。


「ま、まあまあハンゾー、まだ犯人がいるかもしれないし、一緒に居た方がいいよ」

「その通り、この子はわかってる」

「まあいいよ別に、けど斬りかかってくるなよ。あとお前名前は?」

「メリー、メリー・ブラッド」

「家名が入ってるってことは…お前貴族か!?そんなやつが辻斬りとか...世も末だな」

「お母さんもこうやってお父さんをゲットしたから、気になった人を見つけたときの一族の恒例行事」

「お命ゲットとかそういう話か?」

「もちろんハートをゲットの意味」


どっちだよ、ハート(物理)か?怖いな。てか武力が凄い系の貴族か、タチ悪い。


「絶対俺以外にやるなよ?」

「まさか、独占欲。困る」

「ふざけんな、被害者増やさないようにだよ。」

「照れ屋、可愛い」

「い、異議ありです!」


お、キリカいいぞ、もっと言ってやれ。ついでに黙らせてくれ。


「いきなり斬りかかるような人にハンゾーは渡せません!ぱ、パーティメンバーとして反対です!」

「別に貴方に許可を貰う必要は無い、というか男の子の友達はむしろ応援するものの筈」

「あ、憧れの人が変な人に連れていかれるのを見過ごせません!これなら普通の筈です!」

「むむ...」


何がむむ...だ。お前は自分が異常者だと気づけ。黒ずくめの女に誰がドキッとするんだよ。命の危険でドキッとしたわ。まだキリカの方が魅力的だね、というかキリカが一番可愛いかったわ...。結婚しよ。


「お前暑くないのか、そんな黒づくめで」

「訓練してるから大丈夫」

「どんな貴族だよ…」

「魔族との戦争のときに活躍したから爵位が与えられただけ、別に貴族らしいことはしてない」

「そりゃまた凄いな、大将首でも取ったか?」

「うん、幹部の一人だったらしい、おじいちゃんが倒したって聞いた」


えぇ...何者だよ、その爺。バケモンじゃねえか。


「今は戦争も終わって隠居中、けど鍛錬は欠かしてないって」

「ねえ、その人ってもしかして、あの《血染めの獣》様じゃないよね…」

「もしかしなくてもその人、知ってるの?」

「知ってるも何も英傑の一人で剣一本で辺境伯にまでのし上がった御人、知らないわけないよ!」


へえ、そんな人が居たのか。最前線で魔王と戦っていたから知らなかった。


「勇者パーティに次いで有名とされる英雄、そう言われてはいる。けど、実際はただの孫と戦いが好きなだけのおじいちゃん」

「へえー、そうなんだ」

「勇者パーティとも戦ってみたいって言ってた」

「えぇ...」


隠居じゃねーだろそれ、隠れてないからね。しっかり休んで余生を楽しんでろ、お願いだから。


「けど、いままでの生涯で唯一惜しいと感じたのはカムイ様と戦えなかったことだって言ってた」

「《剣聖》様と《血染めの獣》様が戦う、か...想像もつかないね...」

「剣の頂きを目指すものとしてカムイ様は私の目標。目指し、超えるべき人。亡くなったと聞いた時は悲しくて三日三晩泣いてしまった」


そのカムイ様はお前に腹殴られて悶絶してたけどな。ていうか俺、《剣聖》様とか呼ばれてたのか。敵と戦ってたときはあんまりそういう周りの情報とかの収集はケンマに任してたしな。余計な情報は聞いてなかったし、知らなくても当然か。


「そんなに大したやつなのか、そのカムイ様って」

「当たり前、剣の才能を生まれながらにして完成形とまで言われたにも関わらず努力を絶やさずその技を磨き、数々の戦術や剣術をこの世に広めた。そして勇者パーティの中でも攻撃の要となり、敵を翻弄し、ときには気配を殺し暗殺したという剣士を極めようとするものならば必ずしも憧れる人。最後は自らの魂を使い、魔王を討伐した。私達が平和に暮らしていけているのはカムイ様のおかげ、いくら少し気になっている貴方とはいえ、カムイ様を馬鹿にするのは許さない」

「俺が悪かったから離れろ」


めっちゃ近づいてきた。けどなぁ、そんなに大したやつじゃねーよ、俺は。結局は悲しませてしまった、友達を、仲間を、親同然の人を。自己犠牲なんかするもんじゃないな、本当にろくなことにならない。


『けど、貴方のしたことで平和になりました、誰かを笑顔に出来ています。そんな悲しいことを言わないでください』


一番泣かせたくない人を泣かせてる時点で男失格だよ、俺は。天使ちゃんがそう言ってくれるのは嬉しいけどね。


『そんな悲しい顔しないでくださいよ。貴方は、いつも通り馬鹿みたいなことを言って私を困らせとけばいいんです。もう過ぎてしまったことでいつまでも自分を責めないでください、それに貴方はまだやり直せます、だから男なのにウジウジせずに、前を向いて笑っといてください。それが貴方のとりえなんですから。あんまり女々しいこと言うと天使ボディーブローを打ちますよ』


ははっ、そりゃいいや。ぜひ打ってもらいたいね、美少女のボディーブローとかご褒美じゃねーか。まあ何にせよ、元気出たよ。ありがとう、天使ちゃん。


『ふんっ!次は無いですからね!』


天使ちゃんはいいお嫁さんになりそうだね。ちゃんとした男の人見つけなよ?


『まだ結婚出来る歳じゃないですから...けど、ハンゾーさんが死んだとき、ハンゾーさんに恋人が居なかったら、しょうがないから私がなってあげてもいいかなー、なんて』


えっ!?まじで!?やったー!天使ちゃんまじ天使。


『嘘ですよ、冗談』


て゛ん゛し゛ち゛ゃ゛ん゛か゛い゛し゛め゛る゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛う゛!う゛わ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!


『泣かないでくださいよ!?そんなことぐらいで!』


童貞を舐めるなよ、女の子から告白なんてされたことがほぼない俺はすぐに勘違いするんだよ。


『ふぅ...ハンゾーさんはそれぐらい元気な方がいいですよ、やっぱり』


おう、わかったよ。俺は心の中で天使ちゃんにサムズアップした。


『ふふっ』


天使ちゃんの笑う声がする。今までで一番魅力的な声だった。ヤバいな、本気で惚れそうだ。


「?何笑ってるの、まだ話は終わってない」

「だから俺が悪かったって、また今度カムイ様の話は聞くから」

「何か適当。不服」

「ハンゾーはカムイ様嫌いなの?」


キリカが聞いてくるが、どこの世界に自分が好きだ、憧れてる、なんて奇想天外なことが言えるやつが居るだろうか。


「そのカムイ様が嫌いな訳じゃない、自己犠牲が嫌いなだけだ」

「...確かに、私も自分を犠牲にして倒すという手段はナンセンスだと思った。それはあまりにも悲しいし悔しすぎる」

「難しいことだけど、誰も犠牲にならないのが一番だからね...」


そうだな、今世ではあまりそういうことはしないようにしよう。周りも悲しむということを身をもって知ったからな。


「うん、ハンゾーの考え方もわかるから、許す」

「そうか、ありがとな」

「ハンゾーは優しいからね」


キリカが微笑んでくる、やっぱ可愛いな。ていうかメリーのやつどこまでついてくる気だ?もうそろそろ俺達の宿に着くが...


「もう宿だからお別れだな」

「お別れじゃない」

「わがままはダメだぞ、ちゃんと家に帰れ」

「ここ、今の私の家」


そう言って銀猫亭を指差すメリー。まさか...


「私、今冒険者してるから、家に帰ってない」

「へえー、そうなんだー」


マジか、命狙われたりしない?大丈夫?辻斬りが一つ屋根の下とかどんなサスペンスだよ。てか同じ宿なのに会ってなかったのか...


「別にもう斬りかかったりしない」

「本当か?」

「許可さえ出れば、嬉々として飛びかかるけど」

「ふざけんな!」

「冗談」


冗談に聞こえねえよ、目が赤く光り輝いてるやつの言うことを信用しろと?


「ハンゾー」

「ん?何だ」

「ごめんなさい」


いきなり振られた、傷ついた。別にお前のこと好きじゃないし。


「今日は失礼なことばかりしてしまった、私は歯止めの効かない性格だから。今はお詫びできるものは何も持ってないけど、もし良かったら私の家に遊びに来て、もちろんキリカも」


少し顔を俯かせながらメリーは言う、俺に言わせれば前世の冒険者時代では日常茶飯事だったから特に気にしない。だが家に行っても良いと言ってるのだ。ここはお言葉に甘えよう、もちろん美味いもの目当てだ。


「あぁ、わかった行かせてくれ」

「本当?嬉しい、人を家に呼んだことないから」


悲しい、俺も前世は同じようなものだったからわかる、勇者パーティと師匠と数名の人間以外との交流は皆無だったからな。


「もう俺達は友達だ、遠慮しなくていいからな」

「とも...だち?」

「そうだ、もう友達だ」

「嬉しい...!友達、友達、いい響きだね」


なかなか可愛いじゃないか、しっかり自分の過ちを反省出来るのは出来るようで出来ないことだ、俺はもうメリーに対してそこまで反感はなかった。面白い奴だしな。


「私は明日でも家に来てくれてもいいと思ってるけど、お父さんとお母さんに一応聞いてみる」


そう言って魔法道具と呼ばれてる物の、《魔法手紙》をメリーは出し、書き始めた。魔法道具とは魔法があまり使えない人でも魔力を込めれば魔法効果が使える物だ。俺の前世の刀なども魔法道具のようだ。

ようだ、というのも俺の刀は《妖刀》と言われていたもので、使用者が次々と死ぬという凶悪なものだったのからよくわからなかった、というのが本音だ。聞こうにも前の所持者は死んでるからな。切れ味は凄まじいものだったし、俺の技にも耐えてくれた名刀だったが今は何処にあるのかもわからない。魔法効果も何なのか結局分からなかったしな。


「今送ったからすぐ返ってくる筈」

「いや、そんなに早くは来ないだろ」

「あっ、来た」

「えぇ...どんだけ早く書いたんだよ」

「良いって」

「やったね」

「うん、ご馳走も用意するからって」


おおー、嬉しいね。美味しいものには目がないんだ、俺は。


「ハンゾー」

「どうしたんだ?」

「お父さんが『戦う準備を忘れるな、俺より弱いやつに娘は任せられん』って」

「えっ」

「頑張って」

「お前手紙になんて書いたんだよ!?」

「気になる人が居るって」

「えぇ...」


そう言ってくれるのは素直に嬉しいけど、まだ出会って一日も経ってないんだぞ?もう少し考えて書いてくれよ…


「別にお父さんも本気で言ってるわけじゃない、私に勝ったとも書いたから、ただ戦いたい気持ちもあると思う」

「流石戦闘狂...親も狂ってやがる…」


まあ俺も少し気になる。魔王の幹部を余裕で倒す程の実力をもったジジイの一族の当主の力を。この身体でどこまで戦えるかわからないが技を学ぶ意味でもいい機会だろう。



「お父さんがごめんね」

「別に構わねぇよ、それに」

「それに?」

「俺も少し戦いたかったところだ」


思わずにやけそうになる、俺はまだ強くなれる、まだ強い相手と戦える、人斬りとしての一面が騒ぎ出す。


「ハンゾーは笑い方が凶悪、覚えとく」

「やめろ、恥ずかしい」

「だ、大丈夫だよ。ハンゾーはかっこいいから!」


やはりキリカは天使、天使ちゃんも天使。俺は天使に囲まれて過ごしている、つまり俺も天使だ。


『キリカさんが可愛すぎて思考回路がバグりましたか』


仕方ないね、可愛いから。男とかもう関係ない。進む所まで進んでしまおう。


『需要と供給が均等になる予感です』


「じゃあまた明日。家に行くときは部屋に呼びに行くから待ってて」

「うん、また明日」

「また明日、メリー」

「うん」


そう言って隣の部屋に入っていく、隣だったのか…



「ハンゾーくん、ハンゾーくん」



店主が話しかけてくる、絶対ろくでもない話だ。



「君はキリカちゃん一筋だよね!」



無視して部屋に戻った。戻る途中「私を無視するなんて...鬼畜!ドS!〈表示出来ません〉!」最後はあまりに酷いど下ネタを言い放ち、友達と思われる女の人に気絶させられてた。自業自得だ。



「あ、あのハンゾーはさ、同性同士の恋愛ってどう思う?」

「急にどうした」


部屋に戻り、部屋についてる風呂で身体を洗い終わったところでキリカがそんなことを聞いてきた。


「いや、店主がいっぱいそんなこと聞いてくるから。気になって」

「別にいいと思うぞ?少なくとも俺は偏見は持ってない」

「そ、そっか!うん、そうだよね。自由だもんね」

「そうだ、恋愛は自由なもんだからな」


俺がそう言うと酷く嬉しそうな顔をするキリカ、流石に俺はそこまで鈍感ではないからこの子の気持ちはわかっている。

けど無理に気持ちを聞き出したりはしないし軽々しく期待させるような言葉も言わない。俺は恋人が欲しいだけでハーレムを作りたい訳じゃないからな。

作るとしても全員が納得するような形にしたい、重婚は魔族との戦争があり人間の数が減った今では禁止されていない。むしろ推奨されてるぐらいだ。キリカがどんな関係を望んでいるかは自由だが、俺の今の気持ちとしてはまだわからないといったところだろう。向こうもまだ憧れと好意の狭間で揺れてる、そんな感じだ。

だから俺は待っておく、向こうが気持ちの整理をつけるまで。


「ハンゾー」

「何だ?」

「えへへ、呼んでみただけ」


可愛いなぁもう!本当に男かよ!今も水色の髪がお風呂に入った後でしっとりしてて妙に色っぽい。


「明日楽しみだね」

「そうだな」

「戦わされるみたいだけど、無理しないようにね」

「わかった」

「応援してるから」

「ありがとう」

「おやすみ、ハンゾー」

「おやすみ、キリカ」


幸せだと思った、友達でも恋人でも、どっちに転んだとしてもこの子となら上手くいきそうな気がする。こんな短い期間しか一緒にいないけど、必ず守ろうと、そう思った。

強いおじいちゃんが好きです。いっぱい出したい。

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