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ゴブリン討伐任務、後輩の影《前編》

今回は一人勇者パーティの奴出てきます、名前も判明。


何とかショタコンを説得し、ようやくゴブリン討伐に出掛けることができた。心配をしてくれるのは嬉しいけど下心あり過ぎだろあの人、目がヤバかったぞ。お、ゴブリン発見。



「ハンゾー!ボクが先制攻撃入れるからその後追撃お願い!」

「あい、了解」



俺はいつでも飛び出せるように足に力を込め、刀の柄に指をかける。いつもの構えだ。殺気を最小限まで抑え、草陰に潜む。



「いくよ!《ファイア》!」



キリカがそう言うと火の玉が速めに飛んでいく。初歩の魔法だな。幼馴染が使えて喜んでたのを見た。俺は剣の腕と切り札的自爆技をいくつかしか持ってないからな、羨ましいもんだ。



「ふっ!」



魔法が一匹に当たり、倒れたと同時に、呼気に合わせて、構えてた小刀で袈裟斬りに隣のゴブリンを斬る。そのままの勢いで回転し、もう一匹のゴブリンを横薙ぎに首を飛ばす。崩れ落ちるゴブリンの死骸を土台に飛び上がり、最後のゴブリンに上段からの切り下ろしを見舞う。他愛もない。と、俺がゴブリン相手にイキっていると、キリカがキラキラとした目で俺を見てきていることに気づく。



「す、すごい…すごいよ!ハンゾー!」



ま、眩しい!!ごめんよ…お前の目の前でゴブリン斬ってイキってるやつは元勇者パーティの一員なんだ...夢を壊してごめんよぉ...やはり人斬りには日陰がお似合いだということか…死のう…



『また卑屈になりましたね』



あら、天使ちゃん。戦闘のとき所々『ヒッ...ヒエッ...』って言ってた天使ちゃんじゃないか!




『な、何故それを!マイクは切っていた筈では…!?あっ、オンになってる!』




何かわからないがまたドジっ子アピールしたようだ。ますます可愛さが止まらないなぁ…天使ちゃんよ〜。



『ぐぬぬ...』



何がぐぬぬだ、可愛い。しかし、これは自分でもやり過ぎたと思う。試し斬りの為とはいえ斬りすぎた。もう少しキリカに任せた方が良かったか。



「いや、キリカの魔法のお陰だ、流石魔法使いだな」

「えっ、そんな事ないよ〜!」



可愛い、天使ちゃんと合わせてこの空間の可愛い許容量を遥かに超えてきてる。これは異常だ。男だ?何それ全然わかんない。



『異常なのは貴方の頭です、自重してください』



まあいい、その話は今日の夜にでもしっかりしよう。今は取り敢えずこの討伐したゴブリンの耳をギルドまで持っていかなくては。体の一部を持っていけば証明になるからな。



「そういえば聞きたかったんだけど」

「ん、どうしたの?」

「何でキリカはギルドの奴らに避けられてたんだ?人格的に問題があるように見えないが」

「….....いや、それがボクにも分からなくて」

「すまん、無神経なこと聞いた」

「い、いや!全然大丈夫だよ!」



悪いと思ったら頭を下げる、これ常識。しかし妙だ、容姿が女であること以外普通なキリカが避けられる理由...?そんなもの検討もつかない。



「じゃあキリカ」

「ん?どうしたのハンゾー」

「誰もパーティの組む相手居ないなら俺と正式パーティにならないか?」



正式パーティとは、組むことによって依頼金が全て正当に分配され、ランクが上がると宿や食事場などでパーティ割引といったサービスを受けられるものである。もちろん俺のときにはそんなものは無かった。凄いね。



「〜!?良いの!?ハンゾーこんなに強いのに!ボク以外のパーティ行った方が...」

「俺はキリカが良い、駄目か?」



必殺・《駄目か?》これをやると大体相手は折れる、勇者パーティのクールビューティもいつもこれで折れた。チョロい。そういえば最終決戦もこれ言って殴られたな。

「相手に突っ込んで自爆してこようと思うんだけど、駄目か?」って聞いたら幼馴染の勇者に殴られた。解せぬ。まあ結局使ったけど。



「駄目...ではないけど…」

「なら俺と組んでくれ」

「...うん!分かったよ!ボクもハンゾーが良い!」



何と可愛い男の娘か、これは男でももういいかな。なんて考えてしまう。




『おっ、出番ですか?』




お前じゃない、座ってろ。



「じゃあまずはこのゴブリンの耳出してこないとね」

「あぁ、行こうか」

「うん!」



あぁ、いいなこうゆうの。今凄く充実してる。そうだ、街に帰ったらキリカと一緒に美味しいご飯食べに行こう。何がいいかな。




『ハンゾーさん!後ろ!』



後ろ?後ろに何が...そう思い、振り返るとそこには大口を開け飛びかかってきたワーウルフの姿があった。そして、その背後には恐ろしい数の群れの姿も見えた。







「リンネ、森の方の閉鎖は済んだかい?」

「はい!ちゃんとしておきました!」

「今日はワーウルフの群れが凄いからね、魔獣の森は誰か金以上のランクの人に行ってもらおう」

「そうですね...ですが今は誰も居ないのでは?」

「そうだね…どうしようか…」


「ギルド長!ギルド長はいないのか!」


「おっと、どうしたんだい?」

「ワーウルフの群れが閉鎖した森のすぐ隣の森にも現れた!これは異常だ!すぐ閉鎖させろ!」

「嘘だろ!?そんな突発的に現れるものじゃない筈だ!」

「そうだけど、実際俺の仲間が足をやられた!背負ってにげてきたがワーウルフの野郎は多分まだあの森をウロウロしてる!」

「くっ...リンネ!今すぐ救援と閉鎖を!」

「で、ですがまだあの森には!」

「仕方ない!取り敢えず犠牲者を増やさないことを最優先にする!」

「わかりました…」




「どうしたっすか〜、何かお困り事があればこの勇者パーティ、盗賊のレイスちゃんにおまかせっすよ〜」





「うおっ!?オラァっ!!」


俺は咄嗟に居合い気味の斬撃をワーウルフの首に放ち、飛び退いた。何とか間に合ったようだ。


「は、ハンゾー、腕、腕が」



ん?こんなのちょっと抉れただけだろ。唾つければ治る。



『間に合ったようだ。(キリッ)』



うるせえ!俺基準で間に合ったんだよ!ていうか結構歯に着せぬ感じになってきたね天使ちゃん。


「リンネ、助け呼んできてくれ」



今必要なのはリンネを逃がすこと。そして生きて帰ることだな。ポーション腕にかけてっと…




「い、嫌だよ!ボクだってパーティメンバーだもん!一緒に戦う!」

「その気持ちは嬉しいけど、めっちゃ足震えてんぞ。そんな状態で居られても、正直足でまといになる。そんで一人がここで時間を稼がないと共倒れになる、わかったな!わかったら走れ!」

「う、うう...う、うわぁぁぁぁあ!!」



行ったな、よし存分に戦える。よっしゃあ!気合い入れて行くぞぉ!




『ハンゾーさん!死なないでくださいね!』



天使ちゃんが応援してくれたら百人力だな。この勝負、勝てる!


「オラッ!」

「キャンっ!」

「エヤァ!」

「ガルゥ!」

「エイサァッ!」

「ガァッ!」


え、数多過ぎない...?てか最初より増えてない?流石にこの低スペックお子様ボディで全部は無理だ。ならどうする?よし、逃げる!


「オラ!付いてこいクソ犬!」



先頭のワーウルフの鼻っ面を蹴飛ばし、こちらに誘導する。


「ぁあぁぁああああああああああああああああああああああああああああ!!」


めっちゃ追いかけてくる!やべぇ!追いつかれる!今も逃げつつ斬って数を減らしてるが一向に減る雰囲気は無い。どっから湧いてんだ?この犬共。まあ考えるより動く!斬る!進む!





「ハァ...ハァ...ハァ...ハァ...ハンゾー...やだよ…ハンゾー...」


やっと自分を認めてくれた、ナヨナヨした男女などどこのパーティも嫌だと断られ、最後は泣いてしまった。そんなとき声をかけてくれたのが、ハンゾーだった。

ハンゾーはボクが男だと知っても態度を変えなかった。

そして、あんなに強くてカッコイイのに優しくて...ボクの憧れになっていた。だからパーティに誘われた時は飛び上がるほど嬉しかった。

なのに…なのに…何でボクは逃げてるんだよ!

ワーウルフが怖かったから?違う!

ボクは、ハンゾーに足でまといだと言われたから、また見放されて一人になると思ったから、それだけのことで逃げたんだ。友達を置いてのこのこ逃げ帰って来たんだ!

けど、助けを呼ばないとハンゾーを助けることは無理だ。だからボクは足を動かす。限界を超えても。



「ハァ...ハァ...コヒュー...もうすぐ…森の入口に着く...」



だけど

その扉は固く閉ざされていた。ボクを拒絶するかのように。さらなる絶望を与えるかの如く。



「ウソ...ウソ...ウソだ...ウソだぁ!開けて!死んじゃう!ハンゾーが!誰か!助けて!助けてよぉ!!」



扉を叩く、無駄だと分かっていながら。涙を流しながら。


「誰か...助けて...」



「はいはーい!呼ばれてなくても即参上!正義の盗賊レイスちゃんっすよー!」


ボクはまだ見放されては居なかった。何故ならばそこには小さい正義の味方が居たからだ。

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