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妖刀の高揚と暗殺者の憂鬱

「というわけでハンゾーくんにも捜査隊に入ってほしいんすよ」

「どういうわけですか」


いきなり端折ってきたなこいつ説明がめんどくさいからって丸投げするんじゃないよ。


「この事件は少し厄介そうなんすよね」

「はあ」

「けど私の知り合いが一人も居なくて、しかも勇者パーティだからって一人で調査してるんすよね」

「それで俺に協力して欲しいと」

「そうっす」

「結論から話すとですね」

「おお、協力してくれるっすか!」

「いやです」

「何でっすか!」

「正直に言うとこの事件の犯人に遭遇した場合俺の勝率は二割も満たないと思います」

「ほうほう」

「そんな状態ではレイスさんの足でまといになるので」

「うーん、そうっすか...残念っす」

「すいません」

「いやいや、私も無理言ったっすからね」


そう言って手を振ってどこかに行くレイス、すまんな。けどお前の邪魔になる可能性があるから仕方ないんだ。


「一緒に行かなくテ良かったのカ」

「ああ、しょうがない」

「ソウカ」

「ん?」


俺は今誰と喋ってるんだ、キリカとメリーはケーキ屋に居る筈だ。じゃあ今横に居るこいつは


「なァ、相棒」

「てめぇ...誰だよ」

「やっと反応したのかヨ、鈍いナ」

「誰だっつってんだよ!」


やべぇ、怖い。さっきから冷や汗が止まらない、冷静さを欠いている。心臓の鼓動がうるさい。殺される、足が震えてきた。


「そう怖がるなヨ、今日は様子を見にきただけだっテ。別に相棒のこと殺したい訳じゃないシナ」

「俺の質問に答えろよ!」

「ウルサイ、ちょっと静かにシロ。人が来ちまウ」

「だから...」

「わかっタわかっタ、答えルヨ。オレは」

「ハンゾーくん、離れて!」


ずっと聞いてきた後輩の声が聞こえる、俺は咄嗟に飛び退いた。その瞬間その化け物と言うべき人型の生き物を中心に爆発が起きた。


「ウォッ、アッチィ!」

「なんなんすか、こいつ」

「わからん、けどヤバいのは確かです」

「いきなリ魔法攻撃とは穏やかジャないな」

「効いてないみたいっすね、本気で撃った訳じゃないっすけど」

「ソりゃ俺を倒せるのは相棒だけダカラな」

「俺...だけ?」

「手紙見なかったノカ?書いてアッタだろ」


あの怪文書か、あんな手紙を書いて置いておくやつは正気では無いと思ったがどうやら人間でもなかったらしい。


「ア、言っておクけど殺した奴はえげつない犯罪を犯したにも関わらズ誰にも裁かれずのうのうと暮らしてた悪人ダかラナ安心しろヨ」

「悪い奴なのか良い奴なのか微妙にわかんないっすね…」

「お前も同じようなコトやってタからなぁ、気持ちはわかるだロ?相棒」


こいつまさか俺の前世を知ってるのか。いや俺のことを全て知ってる人間は居ない筈だ。天使ちゃんはそう言ってたし、もし天使ちゃんが見落としてたとしてもあのハッピーエンド厨の神が見落とすはずがない。

なら何故俺が雇われて悪人や依頼人にとっての邪魔者を消す仕事をしていたことを知っている。

それにこいつがさっきから言ってる『相棒』ってなんだ。何もわからん、こいつは何者なんだ。


「ハンゾーくんが...?」

「過去の話です、忘れてください」

「ククッ隠そうと必死だなァ相棒」

「うるせえ黙ってろ!」


もういいとりあえず殺す、たぶんこいつは俺にとってヤバい存在になる。その前に殺す。


「オーオー、これまた凄い殺気」

「オラァ!」

「おお怖い怖い」

「チッ、避けるな!」

「ソンナ酷いこと言うなヨ」


全て避けられてしまう、反撃すらしてこない、遊んでるわけではないようだ。ただ殺したくはないと言った感情が目に宿っている。


「なァ相棒オレと一緒に来ないカ?また悪人やら依頼人の敵相手に辻斬りヤろう」

「うるせえ!もう俺は…あんなこと」

「寂しいこと言うなヨ、あんなにあの頃は楽しそウに斬って殴って蹴って戦ってきたのに」

「やめろ!」

「今までで最高の相棒だった、オレの」

「何言ってんだ、お前...」

「相棒が居なくなってかラ無気力でもう消えちまおうかと思ってたんだヨ、そうしたらまた相棒の気配が現れてそうしたらまた一緒に遊べるかと思っタ。けど相棒は昔みたいなキレキレの刃物みてーナ雰囲気が無くなってたんダ」

「お前、まさか」

「だかラ見せつけた、オレはここに居るっテ。昔みたいにオレとこんなことしようっテ、最初は相棒に殺されて死ぬのも良いかと思ったんダ、けど相棒を前にシちまうとダメだな、ダカラ一緒に来てモらうことにした」


もうわかった、わかってしまった。こいつはこの化け物は、俺の持っていた妖刀『村正』だ。


「なァ、相棒オレを見捨てないよナ?一緒に来てくれるヨナ?こんなことしちまったのは謝るシ、何かして欲しいコトがあれば極力聞いてやるかラ」

「はっ!」

「チッ、邪魔な女だナ」


レイスが魔法を使い、村正を吹き飛ばす。ダメージは毛ほども無いようだ。


「人が集まっテきたなァ…相棒、また聞きに来るからその時まで待ってロ」

「待て!」


そう言って村正は屋根から屋根へ飛び移って逃げていった。どちらかというとこちらが助けられた気分だけどな。


「ハンゾーくん大丈夫っすか?怪我は」

「大丈夫です、レイスさんは」

「私は見ての通り魔法撃ってただけっすから」

「あ、すいません邪魔してしまって」


レイスは爆発系統の魔法を使う盗賊という少し不思議な存在なのだ。前に聞いてみたら「えっ、だって暗殺者と盗賊って似てないっすか…?私先輩とお揃いがいいんで、暗殺者は能力的になれないので妥協っす」と真顔で言われた記憶がある。好かれてるのはわかるがあの獲物を見つけた肉食獣のような目はいつまで経っても慣れなかった記憶がある。てか魔法使いになれや。


「あれ、私ハンゾーくんにどんな魔法使えるか教えたことあったっすか?」

「あっ」

「あっ?」

「いえ、聞いたことあったので」

「まあ有名っちゃ有名っすからね」


反射的に言い訳してしまった、別に正体明かして良かっただろうに。けどなぁ…


『ハンゾーさん、ハンゾーさん』


天使ちゃんか、どうしたんだ?


『神からのメッセージです』


あのクズからだと、ロクなものじゃないな絶対。


『えーっと、『すまない、君の前世を知っているものを人間のみに絞って検索していたようだ、あの刀人間をどうするかは自由だが君ではまず勝てない、だからあの刀の能力を君に話しておく』』


おお、中々有能じゃないか。いや元はといえばこいつがしっかりしてれば防げた事故だな。


『あの刀は元々使用者の血や魔力を吸収して進化していく能力を持っている』


やっぱヤバい刀だったんだな、あれ。


『その刀に君は魂を込めて技を放った、これがどういうことかわかるかな?』


いや、ちょっとわかんないですね。


『ようするにだ、あの刀は君の魂を吸収し。別のものに進化しようとしている』


マジですか、じゃああいつが好き勝手に動いているのは。


『君の自己犠牲による産物というわけだな』


ええええぇ…マジかぁ…


『それに君の魂を吸収したことで能力が増えている』


そんな化け物にさらに何か能力が!?


『まず君以外にアイツは殺せない、勿論私でもだ』


神にすら殺せないのか、アイツは...


『それともう一つ君の前世についてだ』


俺の前世だと?


『あの刀は一つ魔法による契約を君に一方的にしたんだ、さっきの邂逅の時にね』


契約?そんなもんした覚えないぞ。


『君が攻撃したと同時に発動するものだったみたいだよ。それはあの刀以外に君の前世のことを知られたら君はアイツに絶対服従になるというもの』


ウッソだろお前、ふざけんな!


『いや、正直僕も困ってる。恐らくこれは前世のことを話して協力者を増やすことを防ぐためにしたものだろう。同じ魂だからね、契約が強くなるのさ。だから契約を解くためにはアイツに解いてもらうかアイツを殺すしかない』


なんて凶悪な契約だよ、俺の協力者今んとこレイスぐらいじゃねーか。しかも倒す方法を話そうにも俺の前世のことを話さないといけなくなる。そうなると絶対服従だ。あっ、これ詰んだわ。


『すぐ諦めるのはダメだよ、とりあえず君には頑張ってもらわないとね。僕のハッピーエンド鑑賞を守るために』


このクズが、死んでくれ。


『嫌だよ、それじゃあね』


「ハンゾーくん何ぼーっとしてるっすか?」

「いや、考え事をしていたんです」


これからのこと考えないとな、どうやってアイツを倒すか。


「ハンゾーくん、聞きたいことがあるんすけど」

「なんですか?」

「アイツとどんな関係なんすか?」

「俺にも分かりません」

「じゃあもう一つ、頼まれて人を殺していたって本当っすか?」

「それは...本当です、隠す気もありません。俺がしたことは人殺しに何も変わりませんから、ですから殺した人の分まで俺は生きると決めました。もうウジウジと考える気もありません」

「そうっすか…ますます似てるっすね…先輩に」


やべぇ、バレる。どうしよう。


「変なこと聞いて申し訳ないっす、このことは誰にも言いませんから安心してほしいっす」

「それは良かったです」

「あと、タメ口でいいっすよ」

「いいんですか?」

「イイっすよ、堅苦しいの苦手っすから」

「じゃあ、これからもよろしく」

「うっす!」

「それとレイス」

「なんすか」

「やっぱり俺も捜査隊に入れてくれないか、手伝いたい」

「いいっすよ!大歓迎っす!」

「そっかありがとう」


これでひとまずレイスは仲間になってくれる筈だ。


「そうだ、捜査隊に入った記念にうちにご飯食べに来ないっすか!」

「いや、悪いからいいよ」


まずい!これで家に行ったらバレる可能性が高くなる!


「いやいや遠慮しなくていいっすよ。あ、キリカくんとあの黒づくめの子も呼んでいいっすから!」

「いや」

「今日の夜呼びに行くっすから、確か銀猫亭っすよね!じゃあまた夜に!」


そう言うと走り去っていくレイス、まずいアイツがテンション上がるとあんまり話聞かないやつってこと忘れてた。どうしよう。



『村正』ちゃんが自分のことをカムイだと言ったのは同じ魂を持っている為です、嘘です。適当に言いました。そんな感じに脳内補完でお願いします(震え声)

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