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大森林の魔法使い  作者: おにくさま
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四十七話

現実逃避

コレは間々訪れる

特に子供が思いもよらぬ

私の望まぬ方向へ向かう時などに


私は主人様の横を離れると壁に飾られた一枚の絵を見つめた

画用紙にクレヨンで大胆に描かれたそれには茶色でグリグリと力強く毛玉の様に描かれそれでいて特徴を捉えた私の姿が描かれていた

クレヨンを買い与えたその日にマイが描いたものだ

せっかく描いたのだから飾ろうと主人様のお部屋の片隅に飾らせて頂いたのだ


この絵を描いた頃のマイは毛布を被って私を見てはコレで一緒だと言って笑っていた

私はマイに、お前は毛が薄いから牙がないからなどと言ったことは一度もない

お前は私の娘だとずっと言って今日まで育てて来た


こんな事は今までも何度も有った事なのだ

私は幾万もの子を育てて来た

で有っても慣れる事は出来ぬ


スズはマイを部屋へ戻し話が終わるまで出てくるなと言い

盾のセンとキイが主人様の前で額を床に擦り付けている


ああ、学舎などに行かせるのではなかった

親としてそんなあり得ぬ事を思ってしまう自分が情けない




十七のお祝いを主人様にお願いした

エルフと同じ時間が欲しいと


その一言で場の空気が一変した

母さんは驚き

ワンワンは目を剥き

キイ婆は飛び込む様に主人様に申し訳ございません、コレは一時の気の迷いなのですと這いつくばり

それにセンちゃんが続きエルフのした事は全て私のした事、どうか戯れとお聞き流しくださいと這いつくばった


私が家族以外で一番付き合いの長い人はアカリちゃんとアコヤ

二人とも私の事は私が生まれる前から知っている

特にアコヤは小さい頃から良く一緒に遊んでくれて

小学舎からはずっと一緒だ


私が十歳位まではアコヤはお兄ちゃんみたいなものだった

十二、三の頃は同い年の様な関係だった

そして十四、五の頃からおかしくなってしまった


いつもマイちゃんと呼んでくれるアコヤと一緒にいると

アコヤにいつも通りに接していると道行く人がおかしな目で見る様になったのだ


そして十七になる今年

友達と水遊びに出た時のことだ

皆んなが気を使ってくれて私とアコヤを二人にしてくれた


その時通りすがりのエルフのチビ女達が聞こえる様にこう言ったんだ

なに?あいつ、耳無の女なんかすぐババアになるのにバカじゃない?って


そこで言い返すのも芸がないから私はそいつらに見せ付ける様にアコヤを胸に抱き寄せ

アコヤはマイちゃんちょっとって焦ってたけど、バカ女共はあんなダラシない身体で喜ぶとかとかあり得ないとか何とか言いながらプリプリしながら小走りに去っていった


アコヤはマイちゃん気にしちゃダメだよ、向こうは女同士で来てるからチョットイラっとしただけだよと笑ったが私は私の中の恐怖に襲われていた

私はアコヤをおいて老いてゆくし

私はアコヤの大人の姿を見れぬまま去ってゆく

それは嫌だ


いつから恋をしていたかと言われても分からない

小中高と学舎が進み友達が増えて行くほどアコヤが私の中で特別になっていった

小さい頃から一緒に寝たりお風呂に入ったりしていたので恥ずかしいとかそう言うのはあまりないのだけれど異性としてはずっと意識している


だから一度思い切って言ってみた

好きだって

好きってのはアコヤの子供を産みたいの好きだって


アコヤの返事は僕もマイちゃんの事が好きだよ、だけどと言葉を濁した

君が死ぬまで一緒には居てあげられるけど僕が大人になる頃君はもういない

そんな感じのことを言って


だから私は考えた

私にアコヤと同じ時間をくれる事が出来る人が居るじゃないか

母さんにワンワンと同じ時間を与えた人が居るじゃないか

母さんは私を身ごもった頃から容姿の変化はない

センちゃんから貰う不老の葉っぱのお陰も有るのだろうけど


兎に角私は十七歳のお願いを主人様に私にエルフと同じ時間を下さいと願った


私は主人様からのお返事を聞く事なく母さんに部屋へ連れ戻され、いいと言うまで出てくるなと閉じ込められた

少しして母さんにセンちゃんとキイ婆の三人がやって来て私に話を始めた


キイ婆は人間とエルフの恋だって悪くない

私が亭主と過ごしたのは七十二年だがそれはそれは幸せだった

発情期が来るたびに子を作り素敵に老いていく彼をみているだけで満足だった

一生分の恋をしたし彼が私より先に旅立ったからと言って子が居れば毛程も寂しくはない

なぁ考え直せと優しく語る


センちゃんは普段の明るさが嘘の様で

皆居なくなるのを何度も何度も何度も何度も味わうのだ

同族ですら私をバケモノの様に見る

一万年前の記憶に苦しみ二万年前の事を思い出し三万年前の言葉を後悔するんだ

チョット合わなかった友人が年老い

少し合わなかった友人に会いに行くと棺桶の中

そんな毎日だ

人間百年エルフ五千年と言うだろう?

でもコレを食い物で例えると皿に盛られた量は五十倍だが使った塩の量は同じなんだ

我々は人間が百年でやる事を五千年掛けてやって居るだけなんだ

だからキイの言って居る事は嘘じゃない

キイは七十二年で五千年分の恋をしたんだ

人間のお前がもし五千年生きて人間として一人の男を愛したらそれはお前にとっても相手にとっても大変な事だ

ワンワン様を見てみろ

一人の女を忘れるのに百万年掛けるのだ

なあ、ひと時の思いで事を決めるなと言って聞かせる様に語る


母さんは私は反対はしないがせめて学舎を出るまで待てと言い

それまでに覚悟を決める事が出来なければ諦めろと言った

何の覚悟よと聞き返すと

自分は生涯魔法使いと呼ばれる覚悟をした

かつての同族を蛮族として見る覚悟した

人では無く主人様の僕として生きる覚悟をした

生まれる前からお前と別れる覚悟をした

だからお前も人からキミ悪がられ、自分を他とは違うと割り切り、同族と同じ姿をして居ても中身は別だと理解し、この世で一番愛おしいと思う相手とも死に別れる覚悟をしなさい

卒学してまだその胸の想いと覚悟が釣り合いが取れぬ様ならそれは諦めなさいと私を叱った


私は三人に取り敢えずわかったけどアコヤと居たい気持ちはきっと変わらないと伝え

三人に連れられ主人様に先ほどの願いはもう少しお待ちくださいと頭を下げた


主人様はああ良いよとだけ仰られ

父は主人様の部屋に飾られた、頼むから捨ててくれと何時もお願いしている私が小さい頃書いた父の絵をずっと眺めていた


「では主人様、改めて私からの願いを聞いて下さい」




コレが家宝と言うものか

私は部屋に飾られた一組の画用紙を見つめた

ひとつはマイが幼い日に私を描いたもの

そしてもうひとつは主人様御自ら描かれた私とマイ

マイが引っ張りだしたクレヨンで主人様が描いた毛玉と棒人間


娘に出来る限り下手くそに私達を描いて下さいと願われ

それを叶えてくださった

コレは家宝だろうなあ


ああ、娘の願いも叶わぬものだろうか


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