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大森林の魔法使い  作者: おにくさま
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四十三話

早いもので来月は娘の卒学舎だ


もう二年も経つのかと驚いてしまう

ついこの前まで主人様の事をあんじさまと言っていたのに


しかしこの二年、キィの家族には迷惑をかけ通しだった

キィやアコさんは笑って気にするなと言ってくれる事が本当にありがたい


《山田》の大自然は娘をのびのびと育ててくれた

なので幼学舎を出たのちも《山田》の小学舎に通わせることにした

娘も友達と一緒にまた学校へ通えると喜んでいる



私が娘を《山田》に通わせる理由のひとつにそこがキィの故郷だと言う事がある


私が盾の皆の故郷と家に何度も遊びに行った時のことを思い出す


《大大都》に男性と住まうテイ

近くにご両親もいらっしゃる

《大大都》は素晴らしい所で欲しい物は何でも手に入り

また見るもの全てが欲しくなる

そして我が目を埋め尽くす人人人

慣れなければ毎日がお祭なのかと思ってしまう


全て、何もかもが手に入る街


子供にそれは毒だ

満たされるのが悪いとは思わない

だが子供は良いも悪いも全てを吸込む

都会が悪いとは言わないが子供にはどうだろう?



次にリヨの《台地》

あそこは全てが山の上にある様な所で

暮らす人は気にしないが私は走るだけで息切れがしてしまう


リヨは娘に何かあれば家の者が面倒を見るよと言ってくれた

そう『家』の『者』


リヨは本物のお嬢さんなのだ


私の住まう御屋敷ほど大きくはないが

広くて綺麗なお家に何人もの使用人

庭をかける綺麗な毛並みの犬に鍛錬だけのための別館まである

リヨも実家では綺麗に着飾りお嬢さんと呼ばれ、お菓子作りや鍛錬に精を出す


代々医師の家系でリヨの兄や妹もその道に付いていて、さらに武芸にまで秀でていたリヨに盾としての声がかかったそうだ

鍛錬以外では苦労知らずのお嬢さん

それがリヨの本当の姿

娘を任せるには不安がある


そして何より娘の為にならなそうなのが《台地》で信仰されている鍛錬の教え

私は本心からリヨは可愛らしいと思うのだが

娘が指でクルミの殻を割るところは見たくない


鍛えられた肉体には正しい精神が宿ると信じる《台地》の皆をおかしいとは毛ほども思わないが、重石を背負い腕立てをする娘の姿を想像すると泣きたくなってしまう



センは・・・

まかせろどんと来い!とガハハと笑うが

センだし


それはともかく《大樹》は素晴らしい所だけどエルフ以外の人種をほとんど見かけない

残念だけれど人間の子供が学舎に通う所ではない

センは王宮にマイの為の学舎を立ててやると笑うが


そう、センの住まいはお城なのだ


それはそれは大きく立派で

三日かけて見て回りその大きさに呆れた私にセンがかけた言葉が「明日は本丸を案内するよ」

私は三日かけて本丸の四方にある一画を見ただけだったのだ


ちなみに王宮の中にそびえ立つ大樹と呼ばれる木のウロにあるセンの自室は別名ゴミ屋敷と呼ばれ恐れられ

家来たちも近寄らない

ちなみにそこはエルフ発祥の聖地らしい


さておきそんな宮殿の中で学者たちに囲まれて学ぶのならシジュウ様にお願いした方がマシだ

いやシジュウ様もシジュウ様で不安なのだが



では消去法でキィの《山田》になったのかと言えばそれは違う

《山田》は穏やかな田舎でいろんな種族が雑多に混じり合って暮らしているからだ

それに「おかしい」とか「狂っている」とか皆に言われるキィだ


確かにキィはまごう事なき狂人だ


頭のネジがと言う例えがあるが彼女はハナからネジを締める気が無いのだ

彼女は日々狂っていなければ死んだ旦那さんへの想いで壊れてしまうのだ

私達からすれば無限の生を持っているエルフ

だが彼女はその数千年の人生をたった一人の人間の男と暮らした数十年に全て捧げてしまったのだ

もう一生分愛したから誰も愛さないよと笑う彼女は確かに狂っている

だがそれ以外の点でキィは完璧な常識人で一般人なのだ


彼女の家は農家で

広いが何処か古びていて

庭には雑種の犬が放し飼いにされ

アコさんとアコヤ君がせっせと畑を手入れする

アコヤ君のお父さんは半農で勤めに出て家族を支えている

キィも実家に帰れば畑を手入れし天馬達の世話をする

キィが盾であろうがなかろうがキィの一家は何処にでもいる人なのだ


それが一番の決め手になった

普通という事はそれはそれは大切なのだから


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