遡って三十九話(え)
ついにシミン君が年貢を納める時が来た
ああ、もちろん《館》への借金では無くリンを娶るのだ
大貴族や王族などからいくつもの縁談を持ちかけられ続け
その全てを断り続けたシミン君も日々浴びせられるリンの静かな怒りに遂に根をあげたのだ
常に懐の寂しいシミン君は出来るだけ質素な式を望んでいるのだが、私はそれとは別にリンからシャンの時の倍は豪勢な式を望まれていて
勿論何方の希望を優先するかなど言うまでもない
ただし、こちらからもひとつ条件を出した
式の席にはヒバナさんも呼ぶと
リンは舌打ちしてわかったわよと言い
シミン君は私が出した招待状の一覧を見て国中の貴族ではないですかと言って気を失いかけた
その他にも正堂の面々
ゴブリンの代表達
それにシミン君の事を親の様に慕う正堂隊の若者たち
タバコ仲間のエルフも
三十の手前でようやく覚悟を決めたシミン君と、二十歳を前に彼を撃沈して見せたリン
リンは何としてもシャンが嫁入りした年までに自分もといきり立っていた
であるならばシャンの倍とは行かなくとも少しくらい豪勢にして何の問題が有るだろう
私は式場に蛮族館を提供し
リンが望むドレスも用意し
指輪も用意した
庭で行われる披露宴の料理は、半分は私が用意し残りはご祝儀だと言ってシャンが用意した
式の当日、リンはキィの手によって別人の様に美しく輝き
控室で落ち着かぬ様子で立ったり座ったりを繰り返しシャンに笑われ
立会いの挨拶に来たワンワンにも丸で落ち着きのない犬だなと笑われる
当のリンはため息をつき、どうせ犬ならワンワンの嫁になりたかったと言ってまわりを笑わせた
まあコレも本音なのだけど
リンは昔、私の生まれた村でワンワンが退治した獣人の牙を拾って宝物にして居た
その牙をワンワンにネックレスにしてくれとねだり、子供相手なら蛮族にも甘いワンワンは汚いぞ?と言いながら牙でネックレスをこさえてあげたのだ
それによくワンワンにオヤツだと言って骨も持ってきていた
リンに限らず子供達はみんなワンワンが好きなのだけど、リンは大人になってもあの毛深い兄の事を幼い日と同じ様に見ているのだからワンワンも罪深い
じゃあそろそろとおじさんに手を引かれ立ち上がるリンは立ち止まり、私に声をかけた
「スズのそのお腹の子ってさあ・・・まぁいいか、今日は私の日だし」
リンはそう言ってコレから一晩続く宴の舞台へと楽しそうに向かう
それはそうだろう
だってリンはワンワンの事が好きなのの何倍もシミン君の事が好きなのだから




