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大森林の魔法使い  作者: おにくさま
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四十二話

ヒバナさんがシミン君に頼まれた何かを届けに《館》へやってきた

多分リンにせがまれた蛮族の地では手に入らない物だろう


見つかったら大変よと私が言うとヒバナさんは貴女が黙っていれば大丈夫よと笑う

何か変わった事はあった?と聞かれたので王様の友達のドゥクディモとか言う貴族の館が燃えて大騒ぎになったと伝えると、流石炎の魔女ねと呆れて居た


私はお茶を飲みながら娘を《山田》の幼学舎へ通わせる事にしたと伝え

ヒバナさんは子育てにはいい所だと賛成してくれた

あそこなら何かあればキィの家族を頼れるし


そんな話をして居る後ろでアカリちゃんが娘と遊んでいる

アカリちゃんはすっかりお姉さん気取りだ


「じゃあ今日はばんぞくをていさつ!」


アカリちゃんの元気な声に娘もていさつ!と嬉しそうに返す

それを聞いたワンワンは、それでは自分が供をしようと言って膝の上のふたりを見下ろす


「蛮族共の住処はばっちくて、飲み水にも困る有様だ、おふくろ様に水筒を用意して頂こう」


ワンワンはゆっくりと立ち上がると尻尾を握るふたりを連れて食堂へと向かう


「あとは何がいる?」


「ぶき!」


「では庭で枝を探そう、温室に手頃なものがあるぞ」


私達は顔を見合わせ笑う

親の心子知らずとはよく言ったものだ


「後をつけてみましょうか」


ヒバナさんが少し呆れた様に提案し

私はそうねと答えた



ふたりはシジュウ様を捕まえるときゃーきゃーと騒ぎ

何味がいいなどと取り留めもなく言ってシジュウ様を困らせながら小さな水筒を受け取り

それは自分が持とうと言うワンワンからダメと言って水筒をもぎ取ると、アカリちゃんは首から下げ

娘もそれをマネする


シジュウ様は一言二言ワンワンに言うと何かをワンワンに持たせ

では行ってらっしゃいと手を振った


ワンワンはふたりを連れて温室に行くと、魔獣と戯れるふたりに手頃な枝を渡し、ふたりはそれをブンブンと振り回して喜んだ

ふたりはしばらく花を眺め果物をかじり虫をつついてから温室を後にし

橋を渡って蛮族館へ入る


今日は開館日では無いので歯車が庭を見張るばかりで

ふたりは何が面白いのか、庭の手入れをする歯車の後をついて歩いては笑い

喉が渇いたと言って水筒に口をつけてはまた笑い

突然ワンワンの尻尾に飛びついて笑う


「年の近い子がいるだけで楽しいのね」


ヒバナさんのひと言に私は何か罪悪感の様なものを感じ、日頃《館》の外へ出る事を娘に禁じている事を悩んだ

ヒバナさんは分別の無い子供を蛮族に合わせては子供の為にならないと言ってくれるが

私にとってのシャンの様な人が娘にも必要なのでは無いのだろうか


そんな事を考えているとふたりはワンワンを先頭に蛮族館の門を抜けお隣に有るシミン君の御屋敷を目指す

ちょっとした空き地を挟んで蛮族館と並び立つシミン君の御屋敷

その門の前に二人は立つと、枝でカンカンと門を叩き「でてこい!ばんぞく!」と節を合わせて騒ぎ出した


ワンワンはといえば黙って腕を組みそれを見ているだけで

止めようともやめさせようともしない

あきれたと言ってヒバナさんと笑っていると、シミン君の家来の獣人のひとりがうるさいぞと怒鳴りながら現れたが、アカリちゃんはそれを見ても「ばんぞくはっけん!」と嬉しそうに言うだけで

獣人はこのガキと言いかけ、ふたりの後ろに立つワンワンを見て黙り込んだ

あけろあけろと歌う様に叫ぶふたりに獣人は、あいや暫くと言って門を開け

雪崩れ込むふたりを無視する様にコレは先生と言ってワンワンに頭を下げ

ワンワンは軽く手を上げて答えると、危ないぞ走るなと言ってふたりを追いかけ中に消えた


少し間を置いて私達も門を叩き

顔を見せたリンはヒバナさんを見て舌打ちし、歓迎しないけどどうぞと言って私達を庭へ案内した


庭では馬飼の家族がどうかお許しをと言って枝を振り回すふたりに傅いて見せ

娘達はばんぞく!ばんぞく!と言って逃げるシミン君を追い回していた

娘は私達を見るとかーさん!ばんぞく!と言ってシミン君を指差し

私がごめんなさいねとシミン君に謝るとシミン君はなんのこれしきと言いながらふたりに枝で叩かれていた


蛮族退治を満喫したふたりはワンワンの膝の上に腰掛けワンワンの渡すおしぼりで手を拭いて出されたお菓子をほおばる

私はテラスで出されたお茶をいただき

少し膨らんできたリンのお腹を見た


「男の子だっておばばが言ってた、音で分かるんだって」


リンはお腹をポンポンと叩き、ヒバナ家の〈初〉子ですからとアカリちゃんを見て言った


ヒバナさんは何を当たり前の事をと鼻で笑い

私はリンは夢を叶えたのねと感心した

思えばリンは出会った頃から、いい暮らしがしたい貴族になりたいと言う様な事をずっと言っていた


今や四大貴族のひとりと言われるヒバナ侯シミンの夫人

最低の貧乏貴族といつも愚痴を言っているがその顔はまんざらでも無さそうで

ウチから巻き上げられる物なんかもう何もないわよと言って私にお菓子のカケラを投げつけた

私は笑って異教徒と取引が始まるんでしょう?と言うと、スズは耳が早いのねと呆れ、それもこれも全部スズの所に納める銅を手に入れるためよと言ってまたお菓子のカケラを投げつけてきた


そんな取り留めもない話を続けていると突然娘の泣く声が聞こえ

泥だらけになった娘がアカリちゃんに手を引かれてやって来た


「あいつがやった!」


びーびーと泣く娘と馬飼を指差すアカリちゃん

馬飼は私はおとめしたのですがとオロオロとし、お助けくださいとシミン君に縋り付いた


これはひどいと笑うシミン君とだからばっちいと言っただろう?と慰めるワンワン

ワンワンは汚れるのも構わず娘を抱きかかえると、帰ってお風呂に入ろうと言って娘をなだめ

アカリちゃんのてを引きながら蛮族館へと向かった


「手馴れたものですね」


感心するシミン君


“それはもう見ていて笑ってしまうくらい”


そんな笑う私達に

わかったわかった、後で八裂きにしてやろう

ワンワンのそんな声が風にのって聞こえ、シミン君は馬飼いを見て葬式はやってやるよと笑った


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