三十六話
「なんだ?また躾の依頼か?」
突然やって来た隣の蛮族
先日こいつの愚かな夢に少しばかり手を貸してやったのだが
今日、突然蛮族館の戸を叩き私を呼び出したのだ
そして私を見るとその身を投げ出し
這い蹲り願いを聞いてくれと言い出した
私は暇だが忙しい
ましてや蛮族の相手などして居る暇など毛程もない
しかし話を聞かねば何日でもここで這いつくばるつもりなのだろう
お前が勝手に話すならば聞くくらいはしてやると答えると
隣の蛮族は空の歯車に滅ぼされた蛮族の国へ向かい、そこを仕切る野人の頭と話をまとめたい、ついては私に仲立ちをと言うのだ
これは困った
この蛮族が何処かへ勝手に行くのならば知ったことではないのだが
おふくろ様が片手間で済ませたばかりに野人や野良エルフの溜まり場になった海っぺりの集落に行きたいと言い出したのだ
これはいかん
主人様にはあの集落の処分は万事恙無く終わったとお伝えしてあるのだ
これはいかん
私は明日返答すると答え隣の蛮族を追い返し、直ぐに主人様の元へ向かい数日のお暇を願い出た
主人様は遊びに行くのかい?良いよ行っておいでと笑ってお許しを下さり
私は直ぐにおふくろ様を探し事と次第をお伝えした
おふくろ様は内密に自分も行くと言い
コレは何としても主人様に知られる訳にはと仰られた
そこに間が悪い事に洗濯物を抱えたスズが同じく洗濯物を抱えたリヨと共に現れたのだ
私とおふくろ様のヒソヒソ話しを見たスズは、何処かへ行くのか何しに行くのかと姦しくさえずり
少しばかり掃除に行くだけだと言うと
やはりと言うべきか自分も行くと言い出した
私は数日は風呂にも入れんがいいか?と言うとスズは顔を曇らせ屋敷で待つと行って洗濯物を干しに戻った
おふくろ様は風呂くらいどうにかなろうと笑われたが
荒事になるやもしれませんと答えると
お前は優しい子だと照れくさいことを言われてしまった
翌日、隣の蛮族をこちらから訪ね
お前の願いを聞届けるから今から支度をしろと伝えると、感謝しますと言い、何やら大袈裟な支度を始めた
子飼いの野人に何か言われたのだろう
なんとも大袈裟な
私の事を先生と呼ぶ子飼いの野人供
少しばかり躾けてやっただけなのだが
私は大荷物の蛮族に水くらいでいいと言って荷物を置かせ、におうからと言ってタバコも置いて行けと言いつけた
先生どちらへと聞いてくる野人にお前らの生まれた所だと答えると
先生なら大丈夫でしょうがと言って蛮族をちらりと見る
私がアレでも中々だぞ?と言うと
まあそれはと言って黙り込んだ
さてそれでは行ってくる
私はそう言うと蛮族の襟首を掴みひょいと駆け出した
獣人と話をまとめたい
王のストーンゴーレムを見て以来それをずっと考えて居た
王家に刃向かおうと言うのではない
私の理想にアレは無いのだ
アレに対抗できるだけで良いのだ
人間とゴブリンとエルフではまだ届かない
ならば獣人もだと
私は万が一に備え遺書を認め
それをおばばに預けた
おばばは冗談じゃないと言って怒ったが、私の身に何かあった時はリン嬢を当家の当主にでっち上げてくれと頭を下げた
リンにそれは無理かもしれないが、その義姉であるシャン夫人ならきっと私以上に上手くやるはずだ
彼女にその気が無いだけなのだ
仮にシャン夫人が私の意思を継いでくれたのなら瞬く間に白姫様を取り込み
王家などに何もさせず私の目的を達してくれるだろう
だがそれは無理なのだ
私に死ぬ気は無いし
彼女に白姫様の家来になる気もないのだから
惜しいな
本人に自覚は無いのだろうな
エルフもゴブリンも獣人も人間も
シャン夫人は初めから同じように接することができる人なのだ
それはもう魔法使い様の国の人と同じように
私はツクモ三兄弟にお前達の生まれた所で一番偉い奴は誰だと聞くと、三人口を揃えウジイエ様だと答えた
強いのかと聞くと馬鹿な事を、俺たちを何だと思っていると鼻で笑われた
全くこいつらは
私に一度コテンパンにされているのにこの態度だ
その後躾をお願いしたワンワン殿などには睨まれただけで怯え
何事か言われただけで這いつくばっていたくせに
全く
白姫様にワンワン殿が何と言ったのかを聞くと、見渡す限り全て私のものだから指一本触れるなとかそんな内容だと言っておられたが
三兄弟にワンワン殿はそれほど恐ろしいのかと聞くと、あの目を見てお前は分からんのかと言い返され
手も足も出なかったあの日を思い出してしまった
迎賓館へ向かいリン嬢にワンワン殿を呼んでいただく
全くいつ迄ここで働くきだい?と声をかけると、私次第だと返されてしまった
お呼びがかかりワンワン殿を前に話を聞いて欲しいと這いつくばる
最初は相手にされなかったが話の内容を聞きワンワン殿は黙り込んだ
明日返答するとの言葉にコレはいけるとの感触を得て屋敷に戻り
おばばにどうやら死なずに済みそうだと言って酒を持ってきてもらった
翌日訪れたワンワン殿の返事は明快で
今から行くぞ
私は急いで支度を整えたのだが、それを見たワンワン殿にあれも要らんこれも要らんと言われ武具の他には水と外套くらい
紙巻も置いて行けと言われてしまった
あれが無いと落ち着かないのだがとは思ったが仕方がない
では行くぞと言われて一歩踏み出たところで襟首を持たれ私は宙を舞った
ワンワン殿は一歩で街の外まで飛び、その調子で海辺まで行ってしまわれたのだ
万能の犬と呼ばれるのだから空くらい走れるのは当たり前なのだろうが
我が身を持ってそれを味わうと何と恐ろしいことか
海辺の村外れで下ろされた私はへたり込み、ガタガタと空を飛んだ寒さに震えワンワン殿はキョロキョロと何かを探していらっしゃった
「そちらでしたか」
ワンワン殿が嬉しそうに声を上げると林がうごめき私は魔槍を構える
そして私は呆れそれを見上げた
隣の蛮族を連れおふくろ様と待ち合わせの場へ向かった
隣の蛮族が驚かぬようにあまり急がずに行ったのだが
下ろしてやった奴は身を切る風のあまりの寒さにガタガタと震え、スズならこの程度では遅いと文句を言うだろうにと呆れながらおふくろ様を探す
私は辺りを見渡し、おふくろ様を見つけると少し嬉しくなってしまった
コレではスズの事を笑えんな
私はおふくろ様を見上げるとやはりこちらの姿の方が美しいなと笑い
それでは行くぞと隣の蛮族に声を掛けた
林の中から現れたのは遥かに見上げるような体躯の黄金の毛で身を覆った獣人だった
それを見たワンワン殿はお待たせしましたかと笑い
それに答えた獣人の声を聞き私も笑いたくなってしまった
私も今来たところですと答える獣人の声はシジュウ様その人で
ワンワン殿の頭をポンポンと叩くその身のこなしにはどこか見覚えもあった
「美しかろう?これこそがおふくろ様の御姿よ」
ワンワン殿は自慢げに笑い
私はあっけにとられた
六人のシジュウ様はゴーレムかも知れぬ
漠然とそう思ってはいたが
まさか正体が獣人とは
いや、これもまた私達には見分けられぬゴーレムなのかも知れぬが
「白姫様はこの事をご存知で?」
黄金の獣人を見上げる私にワンワン殿は知っているよと当たり前のように答える
私はその黄金の巨体を繁々と見上げた
よく見ればその瞳は七色に輝き爪はガラスよりも透明で、浜風になびく黄金の毛並からは王者の風格が見て取れた
その王者の巨体が私を向き、爪でつまんだ何かを差し出した
「お前の身に空の寒さはこたえよう、これを塗っておくといい」
有難うございますと言って小瓶の様なものを受け取り、ふと不安になった
「コレは毛生え薬の類でしょうか」
私の問いにワンワン殿は馬鹿かお前はとその表情で答え
黄金の獣人は毛生え薬が欲しいのか?と首を捻られた
我が身に塗った薬の効果は絶大で
天使により滅ぼされた国までの空の旅路は快適なものだった
滅ぼされた国に着くとエルフもすまなそうな森を見つけ、我々はそこに身を隠す
様子を見たいし日も暮れるだろうからとその日はそこで野営をする事になった
日が暮れる頃見回りから戻られたワンワン殿は私に袋を投げてよこされると黄金の獣人にもたれかかりその毛に埋もれる様に丸まった
「火でも炊いておけ、もう夜は冷えるぞ」
「見つかってしまうのでは?」
私はそう答え渡された袋の中をまさぐり、指くらいの大きさをした程よく甘塩っぱい菓子の様なものを口に放り込んだ
「目立たねば意味がない」
ワンワン殿はそう仰ると目をつぶり寝息を立てられた
私は菓子の様なものを食べていると黄金の獣人と目が合ってしまう
ふと思い黄金の獣人にあなたの事は何とお呼びすればと聞くと心底不思議そうな顔で私の名を知らぬのか?と聞き返されてしまった
ああそうでしたねと答え菓子の様なものを食べ終わると、枯れ木を拾い火を起こした
火石だけでも持ってきた甲斐があっな
ああ一本で良いから紙巻が欲しい
しかしこれは何だろう?
渡された袋の中に入っていた帯
枯れ木の代わりに生木を焚き火に焚べ横になりながら帯を眺める
「いちいち通訳をやらされてはたまらんからな、その飾りを身に触れるところに巻いておけ」
寝ているはずのワンワン殿が目を閉じ寝息を立てたままそう仰り
私は少し不恰好かなと思いながら腹に締め生木が上げる煙を眺めた
「私がいるのだから安心して眠れ、私の前でお前を狙えるのはヤブ蚊くらいのものだ」
そう仰るワンワン殿は黄金の獣人シジュウ様に頭をツンツンとつつかれくすぐったそうに寝返りをうった
目が覚め水を一口飲み、虫に刺された後をぽりぽりとかきながら木の陰から辺りを伺った
まあそうなるだろうなとは思ったが
私達は見渡す限りの獣人の群れに取り囲まれ朝を迎えていた
海辺の集落跡に着くとなるべく野人どもの酋長が居そうなところの近くに堂々と身を隠せそうな茂みを探し
そこでおふくろ様と隣の蛮族を休ませ、私は見回りだと言って辺りの集落を片っ端から襲い、明日の朝、貴様らの頭を連れて来いと触れて回った
どうやらその効果は抜群だった様で、辺りには見渡す限りの野人どもが溢れ
私は、では行くぞと隣の蛮族に声を掛け、おふくろ様もこちらへと手を引き森を堂々と後にした
昨日の男が毛無を一人連れ白々しく隠れているふりをして居た森から姿を現す
毛無の様に布を纏った男は我々を見渡すと馬鹿にした様に笑い、死ににきたかと声を上げ
何を今日は昨日の様にいかんぞと皆が叫びだしたその時
皆のざわめきは一瞬で静まり
後ずさりするものまでが現れた
そう、我々の目の前に現れたのだ
もう一人の神の使いが
黄金の毛をなびかせた神の使いが
私達を取り囲んだ獣人の群れは黄金の獣人シジュウ様の姿を見ると一斉に狼狽え、中には膝をつく者もいた
静まり返る獣人の群れの中を一基の神輿が進み前に出
その神輿の中からか細い声が静まり返る中響いた
「貴女も黄金の一族の末裔なのですか」
神輿が現れると私はその匂いを嗅ぎ顔をしかめた
コレはアレか
神輿からはおふくろ様にお前も黄金の一族かと聞きづらい声が響き
それに私が答えた
「我がおふくろ様に一族などはおらぬ!この世に黄金の毛をなびかせるのは我が母ただお一人よ!」
神輿は前に進みあなた方と話がしたいと御簾を上げた
その姿はやはりと言うべきか
病に侵されただれていた
「成る程、突然変異か」
おふくろ様はそう仰ると、良いだろう話を聞いてやる、お前達を滅ぼすのはその後だと仰り
汚れた金色の毛をした女の前に出た
「もし貴女が神の使いで有るのならなぜその様なことを仰るのでしょう」
女は掠れた声でおふくろ様に語りかけ
おふくろ様はそれはかつてこの地を私が滅ぼし損ねたからだと返す
「私達の祖先は無人のこの地に移り住んだのです」
女はそう答えるとおふくろ様はこの地に人が住むことが問題なのだと答えた
「貴女が滅ぼすのは毛無で我々ではない」
女はそう答えるとおふくろ様は何人たりともだ切って捨てた
いやいや!待ってくれ!
私は勝手に進む話にたまらず割って入った
入ったのだが獣人達はポカンと私を見て此奴は何を突然吠えだしたと言うばかり
まさかと思いワンワン殿を見ると、聞こえるだけだと仰り私はそんなと膝から崩れ落ちそうになったが
ならば伝えて欲しい、全員私が受け入れるととワンワン殿にしがみつくが
ワンワン殿はこいつら全員に食わせるカリカリは無いぞと冷たく言い放つ
ならば私は国中から銅を集めますと食いついた
ワンワン殿は出来ぬ事は言うなと言うが私はやってみせますと言い切った
そんな私達を見て獣人達は何だ仲間割れかとざわめき
ワンワン殿はフンと笑い黄金の獣人シジュウ様に、だそうですと言い
黄金の獣人シジュウ様は天空を指差した
すると天にもう一つの太陽が現れたのかと思う様な光が現れると、それを突き破る様に二体の天使が現れた
その二体の天使は何か巨大な筒を抱える
「とりあえず私の背ほどの銅貨を積んでもらう」
黄金の獣人シジュウ様はそう仰ると獣人に向かい叫んだ
「奇跡を見せてやろう」
神の使いはウジイエ様を指差すとお前とその他に病の重いものを十人前に出せと言い
ウジイエ様がそれで皆が助かるならと己と老い先の短いものを十人選び神の使いの前に並ぶ
神の使いはそこに入れと天使が運んだ筒を指差し、ウジイエ様は皆に達者でと言い、いざって筒に入ると他のものもそれに続く
「奇跡を二つ見せてやる」
神の使いの息子を名乗る小柄な男はそう叫び、私達の前に樽を置くとその中にザラザラと何かの粒を流し込み私達を見渡し、食い物だ順に好きなだけ取れと言う
私達はこの人数で何をと思ったが
この小柄な男の目つきは尋常では無く私達が百人や千人でかかったとしても相手にならぬ事は昨日の襲撃で身に染みている
私達はそれを一握りずつ樽から取り口に運んだ
それはカリカリとして、皆んななんだ美味いじゃないかと言って口に放り込んだ
そこでふとおかしな事に気がついた
誰かの言った美味いじゃないかと言う声を聞き、皆樽の中身に手を伸ばすがアレはいつ無くなるのだ?
皆が一握り取ったとするならばとっくになくなっている頃だ
私は樽に戻り中を覗き込むと我が目を疑う
減っていないのだ
このカリカリとする食い物は
その間も次々に自分にもくれと皆が手を伸ばし中身をすくって行くが一向に減る気配がない
驚いた私が神の使いの息子にコレが奇跡かと聞くとフンと笑い、隣の毛無にお前に請求するぞと言って毛無はとほほと嘆いていた
よくはわからんがこの樽が有れば危険を冒し森で狩をする必要は無くなるかもしれない
何分にもこちらは大人数
動ける者は根こそぎ連れて来たので皆に食い物が行き渡るまでまだまだ時間は掛かるのだろうが
そんな中天使の持って来た筒の中から爺様が一人出てきた
生贄がそれではマズイと思ったが
爺様は辺りを見渡し驚いた様に叫んだ
目が見えると
皆は驚き、爺様はもう一度目が見えるし右手も動くと言って自分の腕を驚いた様に見つめ
邪魔だと神の使いの息子に蹴り飛ばされるまで呆けた様にそれを続けていた
転がってきた爺様は確かに先ほどまで耄碌で目が見えず片手も上手く動かせなかったのだが
もしコレがもう一つの奇跡だと言うのなら
あの中に入ったウジイエ様も
ワンワン殿は天使が持ってきた筒から獣人が出てくるたびにジジイばかりだなと言って蹴ったり投げたりして群れに戻し
その度に群れはどよめきを上げた
ワンワン殿にこれはなんだとヒソヒソと聞くと、死んでいなければ何でも治る様な物だと言われ、驚き、私もコレがひとつ欲しいと言うと国中から銅を集めてもカケラも買えんぞとあしらわれてしまった
朝から始まった奇跡は昼を過ぎる頃にはウジイエと呼ばれた獣人ひとりを残す所まで来ていた
獣人の群れはカリカリを食べながらそれを見守り
病のある者は私にも奇跡をとワンワン殿に傅いた
ワンワン殿は奇跡は十人迄だとそれらを追い払い、そんなことを暫く繰り返し少し日が傾いて来た頃、ウジイエと呼ばれた獣人が驚いた様に筒から出て来た
醜くただれていた身体は元通りとなり
這いずっていた足はスタスタと地を踏んでいた
「これは一体?なぜ滅ぼそうと言う我らにこの様な奇跡を見せるのです?」
己の身体を見回しながらウジイエと呼ばれた獣人は黄金の獣人シジュウ様に聞くと、無礼だと言ってワンワン殿がウジイエを掴み這いつくばらせた
ワンワン殿はウジイエの首根っこを押さえたまま嘲る様につい今しがたこの毛無がお前達の事を金で買うと言って来た、なので私はお前達を売る事にした、高く売りつける為汚らしいお前達を見れる様にしたのだ
お前達が生き延びる術はひとつ
この毛無に買われこの地を離れる事
ただそれひとつ
一人でも残ると言うのなら私がお前達全員を殺す
出来ぬと思うか?
試してみるか?
ワンワン殿は哀れみの一片もなくそう言うのだ
ワンワン殿はグリグリとウジイエを地べたに押さえつけ、直ぐに答えろと迫り
ウジイエは全員助けてくださるのかと私に聞く
私は勿論だと首を何度も振った
「是非もありません」
ウジイエがそう答えるとワンワン殿はその手を放しコレを蹴って群れに戻した
「この地は今後一切人の立ち入りを許さん!」
ワンワン殿はそう叫ぶと群れを見渡し
3日やろう
この筒も3日ここに置こう
そして4日目に全員でこの地を離れてもらうと言い私を見た
その顔は高いぞと意地悪に笑っていた
先程まで吠えるばかりの毛無が不思議な棒を握ると突然言葉を話し始めた
要約すると、私は君達を買ったが奴隷にしたりするつもりはない、少し不自由するかもしれないが自分の縄張りで君達を受け入れる
そんな内容だった
毛無が言うには広い縄張りを手に入れたが住まう者が居らず思案していた所だったそうで
毛無も沢山住んでいるがどうか襲わず一緒に暮らして欲しい
当面は先程の樽から溢れる食べ物を用意するからと言った
ウジイエ様は私達はお前の家来になるのか?と聞くと毛無は、家来では無い仲間だよと言い笑った
白の街は大騒ぎとなってしまった
大人数の獣人の群れが勝利の丘にたむろし、それはまだまだ増えると言うのだから
ゴブリン侯の話では自分の領地へ向かう途中休ませているだけだそうだが
ゴブリン侯は街に戻るや否や王の元に向かい、天使に滅ぼされた街一帯を自分のものにする事を王に認めさせ
一切の人の立ち入りを同時に禁じた
後日の噂ではゴブリン侯は直ぐ様ゴブリンの職人達を滅ぼされた街へ送り込み、埋もれた古の財宝を掘り返し鉱山を探し廻らせているらしい
あんな誰も寄り付かぬ僻地なのだから知ったことでは無いが
ゴブリン侯が抱える役人に聞いたのだが、ゴブリン侯が抱える【領民】の総人数は役二十五万
その内訳はエルフが七千
人間が十一万
ゴブリンが七万
獣人が六万
繁殖力の低いエルフが七千なのは分かるが同じく強者故に繁殖力が低い獣人が六万人
獣人は幼な子か足腰の立たぬ老人でなければ皆戦さに出れる様な人種だ
ふと恐ろしくなった
エルフは人間の戦さには手は貸さないから置いておくとして
ゴブリン侯が集められる兵力だ
人間は王国の法に合わせれば各集落ごとに五十人に一人の割合で兵を出させる
ゴブリン侯の元に集まる人間の兵は騎士を入れて二千五百
そしてゴブリン兵団
コレはコレで千人を超えるらしい
では獣人は?
六万全員が戦えると言われても私は疑わない
獣人ひとりと対する時は一人の騎士と四人の兵が必要と言われる
兵だけなら十人とも
仮にゴブリン侯が獣人全員を使い戦さをしたとしてコレと戦うには六万の騎士と二十四万の兵が必要になる
王国においてそんな人数を抱えている領主は王も含めて一人もいないのだ




