三十四話(い)
珍しく静かな朝だった
盾達は温室の手入れをすると言って皆で朝から取り掛かり新しい野菜や果物の苗を植えているのだろう
食卓には我が妹がひとりどこか寂しそうに食事を取っていた
「おふくろ様白湯を下さい」
私はそう声をかけスズの正面に腰掛けるとスズはこれは珍しいと笑った
いつからだったか
初めて会った時にはもうそうだったか
スズはおふくろ様の物言いを真似ているのだろう
まあ構わんさ
おふくろ様は白湯をくださると窓辺に腰を下ろした
いい天気だと呟きながら
スズは私とおふくろ様を交互に見るとおふくろ様に向かいこう話しかけた
シジュウ様はおいくつなのですかと
本当はちがう事が聞きたかったのだろうなと思ったが私は口にも顔にも出さん
お前が知りたいことはいずれその時が来る
おふくろ様は少し笑い
年では測れないと笑われた
おふくろ様は話し続ける
いつからと言うならば私は主人様が産まれる前から
私は主人様のお母上様にお支えしている
年でいえば主人様のお母上様より少しだけ上だ
スズは、はあと理解しかねる顔で
おふくろ様もそれを見て笑い言葉を続けた
昔と言う言葉とは違うのだが、私が産まれた頃、私の種族と主人様のお母上様の種族は互いを滅ぼす様な戦いを繰り返していました
どちらが真の人間かと言って
初めは私の種族が優勢だったそうだが私が産まれた頃はもうここで勝たねば明日がないと言うところまで私達は追い込まれていたのです
戦さ場は星の海
私達の種族は乾坤一擲の策を打ったが思えばアレは種族の自殺の様なもので私達は大きいも小さいも無く根伐りを待つ運命だったのでしょう
しかしそこで主人様のお母上様の種族は僅かに生き残った私達に隷属せよと言われ私達はそれに従ったのです
主人様のお母上様の種族も戦いに勝つために大きな犠牲を払っていたのです
言うなれば人の座を譲るため人であることを辞めていたと
主人様のお母上様はその中ではまだ人である方で
もはや自分たちは己で種を終わらせてしまったと嘆き
私と二人世界の終わりを眺め、その後はとある事が有り私を連れ世界を渡り歩きました
主人様が私の事を不思議な名で呼んだ事を覚えていますか?
アレが私がかつて産まれた時に付けられた名なのです
お前に分かる様に言い直すのならば199011082011073020110731
そうです数字です
番号で呼ばれていたのでは無くそう名付ける種族だったのです
正確に言うならば産まれた時は19901108でその後20110730と20110731を手にしたのですが、それはお前にはまだ知らなくていいこと
私はシジュウの名を気に入っているのだからそう呼ばれる方が嬉しい
ひとつ覚えておいて欲しい
いつか私は人間になりたい
それが進化ではなく退化だとしても
その時はお前達二人もそばにいて欲しい
おふくろ様はかつて私にも話した様にスズに過去を話し
もう一度空を見上げ
ああ洗濯をしようと呟かれた




