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大森林の魔法使い  作者: おにくさま
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三十四話

ヒバナさんから頂いた葉巻や紙巻を食後に楽しんでいた

リンには煙でお腹が膨れるの?と馬鹿にされたが私はコレが気に入っている


ヒバナさんからは酒の何倍も身体に毒だから一日一本にしておけと言われている

魔法使い様の国でも珍しいものらしく

白姫様のお付きのエルフのひとりが、エラく珍しい物を貰ったなと感心していた


ヒバナさんには一日一本と言われたのだがこれが中々

朝昼晩と一日三本嗜むのが今の私の日課なのだ

リンやおばばは臭い臭いと言って私を邪険にするが、食後に庭で楽しむコレは格別なのだ


ヒバナさんのご主人が役場で取り扱っているらしく

古くなったものを下さるのだ


コレならひと山でも大歓迎なのだが

ひと山も貰ってしまうとヒバナさんにもアカリちゃんにもその分会えなくなってしまう


そんな事を思いつつ煙を楽しんでいると珍しい来客があった

エルフ代表エゴマ殿の使者だ


使者殿が言うには面白いものが有るので見にこないかとの事で

今日もおばばに領地の収支で説教されるのだから少しくらい息抜きしても良いかと思い出かけることにした


エルフの使者は私の匂いを嗅ぎ

これは何の匂いだと聞くので、秘密だよと言ってはぐらかす

エルフへの手土産を馬車に積み

懐中用の小箱に紙巻を数本入れエゴマ殿のもとに向かう



「コレは驚いたな」


私は呆れる様に呟き

エゴマ殿はニヤニヤと自慢げに笑った


元来エルフとは何事にも時間を掛ける

その分私達では及ばぬくらいそれを極めるのだ


「森を騒がしていたからな、仕留めてやろうと思ったが、お前に売り付けようと思い生け捕りにした」


首輪に繋がれ檻に入れられた傷だらけの三匹の獣人がそこにはおり

恨めしげにこちらを睨んでいる

流石の獣人でも森で悪さをすればエルフが黙ってはいない

森の中でエルフ達に立ち向かえるとすればそれは軍隊ぐらいのものだ


「確かに珍しい」


私は悪い癖で色々と思い付いてしまう

全く困ったものだ


「なら買わないか?買わないなら皮を剥いで中身は捨てるだけだ」


「いくらだい」


「同志シミン、あんたはエルフ王から頂いた酒をたんまりと溜め込んでいるそうだな」


確かに何度か御屋敷のエルフと飲み比べをし

その時に樽ごと持っていけと酔い潰れた私に持たされた酒がいくつかあったが


「こいつら一匹につき、エルフ王の酒二樽」


うーん

獣人は三匹全部欲しいが酒は六樽もない

さて

そうだ


「一匹ひと樽とコレではどうだ?」


私は紙巻を一本取り出し、エゴマに差し出した

エゴマ殿は鼻をヒクヒクとさせ何だこれはと言って眺めたり摘んだりする


「こうするのさ」


私は懐中火石を取り出し紙巻に押し付け煙を嗜んで見せた

エルフ達は目を剥き燃やす噛み葉かと驚いた


「知人の伝手でエルフ王の国から手に入れた、この国では私しか手にしていない逸品だぞ?」


エゴマ殿はひとつ試させろと言い

私は一つだけだぞと言って一本火をつけて渡す

エゴマ殿はうむうむと唸り

周りは物欲しそうにそれを見守った


「同志シミン、お前はコレをどれ程手に入れた?」


「同志エゴマ、私はコレを百本譲っていただいた」


勿論嘘だ

ヒバナ殿からは紙巻二百本と葉巻五十本それぞれを頂き、大切にしまって有る


「一匹につき酒ひと樽とコレを三十本でどうだ」


エゴマ殿の声に私は話にならないと笑い、酒ひと樽と二十本だ、それ以上は私の分が無くなると言い放つ


「分かった、同志シミン、それで手を打とう」


エゴマはアッサリと引き下がり獣人を今持って帰るかと言ってきた

よほど紙巻が欲しいらしい


「いや、明日受け取りに来る。ついでにひとつ頼みがあるのだが、此奴らに腹一杯肉を食わせ水を飲ませておいてくれ」


私は手間賃だと言って懐に残っていた紙巻を渡す

エゴマ殿は喜んで受け取り

それは構わんが何のつもりだと首を捻る


「余興さ」





翌日、私は約束の品を馬車に積み同乗者と見物人をひきつれエルフの森へ向かった


「さて、約束の品だが、餌はちゃんとやってくれたかな?」


エゴマ殿は勿論だと言って獣人達を指差した


与えられた獣は骨まで食ったらしく

毛皮だけが捨てられていた


それで何をするのだ?

酒と紙巻を受け取ったエゴマ殿は私の後ろに控えるワンワン殿と見物人に混じる白姫様を不思議そうに眺めていた


「言ったろう、余興さ」


私はお願いしますとワンワン殿に頼み獣人達に話しかけた


『今から私と三対一の決闘をして君達が勝ったら君達は自由だ、私が勝ったら君達は私の家来になってもらう』


ワンワン殿に訳して貰った話を聞き獣人達は馬鹿な奴めと笑い

俺たち三兄弟にお前らで勝てると思うのかと嘲った


「交渉成立だな、私が勝ったらお前達の食は保証してやる。カリカリとか言う物が有るそうだ、その代わり私の許しなく殺生は許さんぞ」


そして獣人は檻から解き放たれた




「畑仕事もしてみるものですね」


笑う私に白姫様は机にばかり向かっていては体が鈍りますと笑いワンワン殿の膝を叩いた

馬車の後ろにはトボトボとついて来る三匹の獣人


ヒバナさんはたまにいらっしゃっては少しばかり私に手解きをして下さり

たまにワンワン殿もお相手して下さる

このお二人に比べれば獣人などアカリちゃんにも劣る


つまり観衆の前で私が獣人を翻弄して見せたのだ

未だ父には敵わぬがコレくらいなら出来て当たり前のことだ


「カリカリをやるのは構わんが、野人など飼ってどうする?」


ワンワン殿は白姫様が叩く度に辞めないかと言いながら不思議そうに言われた


「魔法使い様の国ではそうなのでございましょう?」


私がそう答えると

まあそうだがとワンワン殿は仰り

私の意を汲とって、お前の生きているうちには無理だぞとも言って下さった


「構いません、私の子か孫か、もっと先か。それで構いません」


私の言葉を聞きワンワン殿はそうかと言われ外を眺められた

そのお姿はとても凛々しいもので

白姫様のイタズラさえなければまるで王の様な風格を見せていた


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