三十三話
街は祭りを前に浮かれていた
今年も白姫祭りの準備で大賑わいだ
もう何度目だ?
私が二十四になったからスズは二十二か
何人か聖堂諸国の奴が焼け死んだって話は聞いたけど此処何年かは大きな戦もなく街も国も平和なもので、今年の祭りには四大貴族が御列席って話だ
ゴブリン侯シミンも入れれば五大貴族だな
聞いた話じゃゴブリン達を使ってすごいスピードで領地を開発しているらしいし、その裏でゴブリン兵団なんておっかねえものも作っているらしい
それでもまあ、私から見れば相変わらず頼りないシミンな訳で
リンに結婚してやっても良いと言われ、どうしようと自分に泣きつかれたのは秘密にしてくれと言われたが、片っ端から言ってまわってやった
もうそろそろ年貢納めとけってな
私は相変わらずリヨの医院で働き、暇を見ては他所から勉強に来た薬師達に教えてやっている
前と違って薬はそんなにばら撒けなくなっちまったが、それでも薬の分配を求めて多くの薬師が教えてくれってやって来る
此処で薬の分配を受ける為の誓いは
身分で診療の優劣を付けたらもう薬は渡さない
薬を横流ししたらもう薬は渡さない
薬で代価を受け取ったらもう薬は渡さないだ
これがなかなか守られないから困っちまう
国中にいる正堂の連中が目を光らせてるから直ぐにバレるのに、これを守れない奴らの多い事
やになるね
そんなに嫌なら亭主の店を手伝えば良いんじゃ無いかって言われるがあそこはフウの城だ
私が口を出す事じゃ無い
ゴブリン相手の店と人間相手の店
合わせて七つ
我ながら大した亭主だよ
忙しいから子がないのかなんて言われるけどコレばっかりはなんともね
今年の白姫祭りはスズが酒を飲む特別な年な訳で街の浮かれ具合もひとしお
それでもシミンの話だと国境でゴブリン関係のいざこざが起こっているらしいけど
なんでも聖堂諸国の何処だかで鉱山奴隷にされていたゴブリン達が集団脱走したそうだ
見張り小屋が襲われ誰かの手引きで森を抜けて王国に大挙して逃げ込んで来たらしい
そいつらは今、巌窟王とか呼ばれてるゴブリン代表の依頼でシミンが預かっている
シミンにお前がやったんだろう?と聞いたら何のことですか?なんてしらばっくれやがった
あいつは今やゴブリン代表から名誉ゴブリンの位を貰った本物のゴブリン侯爵なんだからな
怪しいどころじゃないぜ
まあそんなこんなも有るからシミンには諦めて年貢を納めろと何時も言ってやり、何時迄もうじうじと関係を引き延ばす根性なしのケツを蹴り飛ばしている
別に良いじゃねぇかなぁ?
年が十離れてても
誰も気にしないだろ
貴族なんてそんなもんだろ?
うちのおじさんだって遂に年貢を納めたし
これで私も正堂長の外戚になっちまったけどまあ関係ないわな
世界は私がガキだった頃から見ればガラリと変わっちまった
王国じゃゴブリンやエルフを奴隷にすると首が飛ぶし
逆にエルフに勾引かされる奴もいなくなればゴブリンにさらわれる話も聞かなくなった
家々の煙突からは何時も煙が上がり
街は壁の外にどんどん広がっている
相変わらず火石が原因の火事は多いがその恩恵は絶大
ゴブリン由来の安い光石や冷石が無い生活なんて今じゃ考えられない
開拓地と市街は頻繁に駅馬車が走り
旧市街と白街それぞれが栄えている
噂じゃあと十年もすればレンクルとレーダが繋がってひとつの街になるなんて言ってる奴もいる
流石にそれはどうだかと思うけど
十年後にはヒバナ領が白街を脅かす位栄えていると思うけどね
私は
うちの亭主も早々とヒバナ領開拓地に店を出し
開拓に入ったゴブリン達は開墾の傍らで光石と冷石の生産に励んでいるし、スズの許しを得てあの無限に生える【タケ】とか言う木の栽培もして薪を売っている
まるで十年前の此処じゃねぇか
ゴブリンがこの調子なのにエルフ達は十年一日とか言って相変わらずだし
ああそうだ、エルフと言えばおじさんの正堂組がエルフと話をまとめ木材の伐採する権利を得
その木材を使ってパチモンの白家で大儲けしている
何でもシジュウから白家建設の秘密を教えて貰ったらしく
スズの所が作った白家に比べればアレだけど、それなりに見れる作りだ
エルフと言えばもうひとつ
スズの所にエルフのガキがウロチョロとする事が多くなった
クッソ生意気で人のことを蛮族蛮族って呼びやがる
スズに聞くと友達だとか言ってるけど
ありゃなってねえな
親の顔が見てえよ
あとなんだっけ
そうそう
スズの生家が再建されて正堂が正地に指定してたな
スズは見にも行かなかったけど
まあ、何でこんな事をつらつらと考えているかといえば
座らされて化粧をされて
今年もスズの後ろで晒し者にされる準備をしている間暇なわけで
仕方ねえだろと言うやつさ




