表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大森林の魔法使い  作者: おにくさま
64/100

二十九話

私の密かな楽しみの一つ

庭の雑草の観察


コレが中々に面白い

日々手入れしても直ぐに生えてくる

そんな雑草を繁々と眺めていると腕輪が私を呼び出す

不詳の妹からだ


「何だ?私なら今手は離せないぞ」


“どうせ御庭の草でも眺めているのでしょう?”


「全く見ている様な事を言う奴だ、何だ?何か用か?」


“崖から落ちました”


「上がれば良かろう?」


出かけると言って崖から落ちるとは

何とも


“お尻をぶつけたし肘も打ちました”


「わかったわかった」


“あと着替えも、早くしてくださいね?”


「全く、場所は?」


“さあ?”


本当に手のかかる

おふくろ様の目を借り場所を確かめる

崖から落ちひしゃげだ馬車に腰掛け足をぷらぷらさせながら空を見上げ、おーいと手を振る我が不詳の妹


「わかったわかった、見えたから直ぐに行く、着替えは適当でいいな?」


“ちゃんとキィに選ばせて、はやくしてくださいね?”


「馬車でも燃やして焚き火でもしておけ」


“そうします、それと”


「何だ?」


“こちらの方々はどうすれば?”


「お前の好きにしろ」


私は会話を打ち切りスズの部屋へ向かいキィに服を選ばせた

全く、本当に手のかかる





レーレンさんに野花などを見てお茶でもとお呼ばれし、迎えの馬車で草原を目指していた


途中見晴らしのいい山道に差し掛かり、コレは中々いい眺めだと窓から外を眺めていると突然、外から怒声と馬の嗎が聞こえ馬車は山道を転げ落ち崖下に有る小川の川面に叩きつけられ

私は馬車の中でお尻を打ち肘もぶつけてしまった


頭の上になってしまった戸を開け辺りを見渡す

山道は見上げるほど高く辺りを見渡すと御者は少し遠くでぺちゃんこになっていた

これは困った

レーレンさんとの待ち合わせに遅れてしまう


仕方なくワンワンに連絡を取り、着替えと迎えを頼む

ワンワンは面倒くさげにわかったと言い

私を取り囲む男達をどうすればと良いかと聞いても好きにしろと言うばかりで

後で毛をむしってやらなきゃ


“濡れますよ?”


私の声を聞き、男達は隠れるのをやめ姿を現わす


「さすが呪われた魔法使い、あの高さから落ちても怪我一つないとはな」


“肘を打ちました”


私は赤くなってしまった肘を指差す


「ご自慢の獣人もエルフの付き人もなく外に出た事を呪うのだな」


“そうします”





「こう言う時は一人二人生かしておくものだ」


私は呆れ辺りを見渡した


“そんな事さっきは言ってませんでした”


スズは不機嫌そうに私の言葉を聞き、私の耳を引っ張ろうとする


「次からはそうしろ」


スズは、ワンワンは本当にうるさいと文句を言いながら持ってきた服を受け取り、誰か見ていないか見張って下さいと言われ反対を向かさる

わかったよと言って辺りを見渡が

しかし何とも雑な

楽には死ねたのだろうが、もう少しちゃんと使える様にしてやらねばな


「誰もおらんよ」


そう言って振り返ると、おそろしい我が不詳の妹は躊躇わず私の目に指を突っ込もうとしてきて

ため息混じりにそれを受け止める


「何度も言うが毛無の裸を見ても私は何も感じんぞ」


“乙女に対してなんて言い草ですか!”


おおこわいと言って私は辺りに撒き散らされた蛮族の死骸を眺めた


小川の水を鞭の様に使い

河原の石を礫の様に使ったのだろうな

蛮族の死骸は皆あちこち欠けている


「一人二人生かして聞き出せる様にしてあればなぁ」


私が愚痴るとスズは思い当たる相手が多すぎて切りがないと言いながら私の尻尾に脱いだ服を引っ掛ける

まあ確かに

スズはグイグイと私の毛を引っ張り着替えが終わったと告げる


「で、何処へ迎えば良いのだ?」


尻尾に乗せられた服を丸め、抱えてくれと飛びつくスズに聞くと知りませんと答える


“あちらの方が連れて行って下さる筈だったので”


私の腕の中でスズは御者の死骸を指差し、とりあえずレーレンさんの所までと言って私のヒゲをピンピンと引っ張った





「あら?迎えの馬車をお出ししたと思ったのですが」


魔法使いスズは何食わぬ顔で私の前に獣人を従え忽然と天空から舞い降りた


“ええ、間に合わぬと思ってワンワンを呼び出しました”


あらまあと笑うわたしと釣られて笑う魔法使いスズ

獣人は興味なさげに手にした布をポンポンと弄ぶ


「それでは丘一面の野花などを見に向かいましょう」


連れ立って歩く私達の後ろをついてくる獣人がお前もこりんやつだなと呟き

私は何のことかしらと可愛く小首を傾げて見せた





「レーレン嬢からの申し出でな、中々良いと私は思うよ」


正堂邸と呼ばれる王の屋敷に呼び出された私は、如何だろうと和議のなった聖堂諸国の者達に白姫様を御拝謁頂いては

引いてはその仲立ちを私に頼みたいと申された


負け戦さで疲弊した聖堂諸国に白姫様のご威光をみせつけ、王国とそこにいる魔法使い様に二度と刃向かおうなどと思わぬ様に

王は足腰だけでなく心まで砕くおつもりか


「白姫様がお受け下さるとは思えませんが」


「ヒバナ侯は私などより余程白姫様の覚えが良いのだから少し骨を折ってくれんかね」


やっては見ますがあまり御期待されぬ様

私はそう言って頭を下げ謁見の間を後にした


幾ら無敵にて不滅の魔法使い白姫様と言えども、わざわざ敵の懐に飛び込んで下さいと言われハイわかりましたと仰る訳がない


私が屋敷に戻ると見慣れぬ馬車が車寄に有り、はて来客かと溜息が漏れた

こんな日はヒバナ殿の元で酒でも飲みたいのだが


「待ちましたよシミン」


まるで我が家の様にくつろぎ茶を飲むレーレン嬢に声をかけられる


「馬車を新しくされたので?」


レーレン嬢は笑って崖から落ちましたと言って茶のお代わりを催促した


「で、何故白姫様を担ぎ出そうと」


私が溜息混じりに尋ねるとレーレン嬢は事も無げにどちらに転んでも損はないでしょう?と笑い、白姫様との話し合いの場を二人で作り出しますよと言われる

何とも気が進まない事だ





シミンがレーレンを連れ蛮族館の戸を叩いた

スズさんに話が有るらしい


私は一番安い茶を出すとシミンを睨みつけた

何だろうこの感じ

何時も窓越しに餌をやっていた野良犬がメスを連れてきた様な

解せない


シミンはあたふたと違うのですヒバナ殿、違うのですと空を掻き

レーレンはあら酷い、私達許嫁では有りませんかと笑う

レーレンはあら安物ねでも美味しいと茶を飲み、シミンが失礼ですよとたしなめる

私はお前らなどには安物の茶葉と駄菓子で十分と言って部屋を出た


どうもイライラする

せっかく戻した体重がまた増えて来たのはあいつらのせいか

本当に腹がたつ





ずっとうろうろおろおろしているシミン

まあ楽しい


安物の茶と駄菓子を楽しんでいるとノックがあり戸が開いた

開けたのは姫騎士では無くリンちゃん

今日も姫騎士は順当に怒りましたというわけね


そして入って来たのは魔法使いスズでは無く真金シジュウ

悪魔の六姉妹の一人

恐ろしきゴーレム使い


私の見立てでは六姉妹と呼ばれる女達すら人と見分けのつかぬゴーレム

その事に思い至った者は私以外にもいるのだろうが誰もそれを口には出来ない


「これはシジュウ様」


私は頭をぺこりと下げ傅いて見せた


「今日スズは出かけている、話は私が聞いてやる」


「ありがとうございます、スズ姫はどちらへ?」


「知ってどうする、また刺客でも送るか?」


「滅相も無い、もし魔法使い様の国へお出かけなら一度私も連れて行って頂きたく」


「スズが聞けば喜びそうな事だ」


ゴーレム使いは馬鹿にした様に私を笑い

私たちに挟まれたシミンはヒバナが姿を見せぬ事を見ておろおろとして居た


「それでは早速に、ヒバナ侯」


私の声にシミンは、はい!と声を上げ目をパチクリさせて私を見た


「王からの申し出でをお伝えして下さい」


私の言葉を聞いたシミンは、私がですか⁈と言った顔でこちらを見て

自分を落ち着かせるために茶を一口すすり、話し始めた


王国と聖堂諸国の間に和議が結ばれ戦さは収まりました

されど聖堂諸国はまだ負けたとは思ってはおりません

そこで白姫様に御行幸頂き、王国と魔法使い様のご威光を諸国に見せつけ、魔法使い様のいらっしゃる我が国に二度と刃を向けようなどと奢れぬ様躾けてやって頂きたいのです


身を正し話すシミンに脚を組み肘をついてつまらなそうに話を聞く使用人

ハタから見れば可笑しな光景だ

しかしレーダの街に広がる噂では、スズを産んだのはこのゴーレム使いで、止む無き事情でその子をレンクルの女に預けたという話だ


そもそもこのゴーレム使いは使用人の風体では有るが主人の様に振る舞い

姫騎士に匹敵すると言われる屋敷のエルフ達は家来の様に彼女に傅き

獣人は付き従い

魔法使いの跡取りであるスズには一歩引いてはいるが、それでもスズの態度を見ればこのゴーレム使いが使用人などでは無いことは確かだ


魔法使いの国で行き遅れた何処ぞの大貴族の女か魔法使いの妾か

恐らくその両方だろう


私はこいつがスズの産みの親とは思わないが、魔法使いに言われ親代りを勤めているのだろう

恐らくこの使用人の風体も彼女なりの冗談かなにかなのだ


「分かった、聞き届けてやる」


シミンの話を一通り聞いたゴーレム使いは偉そうに口にし

日程はこちらで決める

お前達は千人の供を用意せよと王に伝えろ

煌びやかになと言って立ち上がると

私を見てゴーレム使いはこう言った


「お前の願いも叶えてやろう」





ああシミン

私の刃

レーレン嬢はそうおっしゃり、獣の様に私を貪る


何の前祝いかは知らぬが前祝いだと言われ、ゴブリン酒場に連れ立って繰り出し

ヒョイと顔を覗かせたシャン夫人から葉のかけらの様な物を渡されたレーレン嬢は屋敷に戻るなり、私の部屋に乗り込みコレが乙女の細腕かと言いたくなる様な強引さで私を押し倒し事に至った


ああヒバナ殿に合わせる顔がないとなげくわたしに、許嫁相手に何ですその言い草はとレーレン嬢は笑っていた


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ