獣拳
我々は大森林において最も誇り高い一族である
開祖で有られるワンワン様は現人神として大森林に君臨し、その全てに目を光らせる
誇り高き我々は日頃町で暮らし村で暮らす
そして事あれば獣拳として大森林のために戦うのだ
我々は過去外敵との戦い全てに勝利し大森林を、そして主人様を御守りしてきたのだ
知らぬ者はおるまい
人形使いとか言う奴等どもとの戦いで我らが行なった獣拳突撃の逸話を
穴を掘り銃火を構え人形どもを迎え撃ち此処ぞと行われたただ一度の獣拳突撃で戦況はひっくり返り大森林に仇なす人形使い供は滅び去ったのだ
人形使いの頭目を討ったのは確かにワンワン様だがそれはご本人も仰る通り添え物切りで
我らが突撃した時点で勝敗は決していたのだ
そんな我等だが、日頃ほとんどの者は獣拳ではなく堅気の仕事を生業としている
かく言う私も職はと聞かれれば飛行場の案内員だと答える
そしてそれに獣拳同様の誇りを持っている
我々が誇るべき事のひとつは私達の身体にワンワン様の血が受け継がれている事
そしてもうひとつはこの大森林世界に溶込み争いを好まぬ一族として暮らしている事
争う者が有れば割って入り
防人や騎兵隊などには入らない
それが我らの誇りだ
そしてワンワン様の一言があれば獣拳として集まり大森林の敵を砕く
我らの事を大森林の番犬という者は多い
成る程確かに大森林に暮らし大森林を守る
確かに番犬だ
ただし忘れてはいけない
私達は鎖で繋がれてはいないという事を
もし太古の馬人の様な愚か者が再び大森林に現れたならば我々は躊躇わずそいつらの喉笛を噛み千切る
争いを好まぬ我らではあるが一度敵と見定めれば生かしては置かぬ
我が家に伝わる家系図では
私はワンワン様とサクラ姫の間に生まれた五十一番目の娘シノバズの一族なのだ
何を億万年前の事をと笑いたければ笑うがいい
貴方はどうなのだ?
ワンワン様十番目の妻であるナミダ姫の家系?
あっそう
最後にワンワン様が血の繋がらない姫を娶られたのが六十万年前のギョエン姫
そこで大森林に暮らす一族の者でワンワン様の血族でないものは居なくなった
何がワンワン様をその様な事に走らせたのかは諸説あるので分からないし
ワンワン様が話されない限り答えは出ないのだろう
案外正解はサクラ姫の絵本に書かれている通りなのかも知れないが
我々はこれからも誇りを持って
大森林最初の一人の一族としてこの世界を護って行くのだ




