二十八話
四剣の技量を測る
宰相様がそう仰り四剣を呼び寄せ
さらにドゥクディモより黄金戦士団団長を呼び寄せた
二年続いたダリトゥディモ【解放】の戦さが終わり
ドゥクディモ大公とレーレン嬢が聖堂諸国との和議に駆け回る
戦勝に浮かれる私達を引き締めるぞとばかりに我々は集められたのだ
四剣は筆頭が我が父ケシミ
それにカード殿とメンテー殿
そしてドロン殿の穴を埋めた私シミン
黄金戦士団からは先の戦さで戦士団が壊滅してしまっているので仮の団長として生き残りの中で一番の腕利きであるグラスリ殿が代表として参られた
父はレーレンの地に移ってからまた一段と腕を上げていた
この人に老いの文字はないのだろうか
強者として知られるグラスリ殿を一蹴した父は笑っていや危なかったなどと言っているが一体何処がだと言ってやりたい
父に言わせるならば
毎日開拓民と共に鍬を振るい風呂を浴び飯を食って寝る
それが強さの秘訣らしいが
あの人は本当にそれで強くなってしまいそうで困る
先日などお前もどうだなどと言われ、畑起こしを手伝わされた挙句、開拓民の姉弟に親子揃ってへっぴりごしだと笑われて来たと言うのに私にはまるで成果は無い
ではお次と言われ、私が父の前に立った
父との剣の手合わせは幾度となく
勝てた試しもないが
今日は秘策がある
ヒバナ殿より密かにご指導いただいた奥の手があるのだ
父はブンブンと剣を鍬の様に振り回し
手加減してやるから安心しろと笑う
私はヒバナ殿より頂いた魔槍を手に此方こそと答え号令を待った
始めの合図に合わせ、槍の長さを活かし踏み込ませずに突きまくる
ヒバナ殿の魔槍は枯れ木の様に軽く鋼の様に硬くしなやかだ
父はそれを剣でいなし、なかなか当たりませんなぁ貴族様と私をあしらう
残念な事だがこれは想定してた
私はくるりと距離を取り、魔槍の穂先で狙いを定める
御覚悟!と叫びヒバナ殿の教え通り自分の魂を込めるつもりで魔槍の柄にある突起に拳で叩き込んだ
ヒバナ殿直伝
姫騎士の一撃だ
姫騎士ならば指を添え軽く魔槍を振るうだけで眼前の敵を薙ぎ払われたが、さすがに私ではそうは行かぬ
それでも、幾度も繰り返しようやく人ひとり吹き飛ばせる程度の技を手に入れたのだ
ヒバナ殿に幾度もお願いし
見てるだけで良いなら付き合ってやるとお許しを頂き会得した技だ
幾日も繰り返しようやくコツを掴むとヒバナはそんな馬鹿なと目を丸くして驚かれ、繁々と私を御覧になられていた
なんとも誇らしいあの時の気持ち
だがその乾坤の一撃も父は剣ではたき落としてしまった
姫騎士の真似事か?と笑いながら
魔弾と名付けたこの一撃
一度使うと全身の力が抜ける
かわされてしまうと次の手がない
何を狙っているのか丸わかりだったぞと父は笑い弾かれた魔弾が上げる土煙に驚く観衆をよそに、私の頭を剣でぺこりとはたきコレにて決着と相成った
その後も父はカード殿メンテー殿と連勝し、四剣の自分以外の三人と黄金戦士団長を一蹴してしまった
宰相様はそれを見届けると四剣も黄金戦士団長も皆見事な腕前だったと満足そうにされ
そのまま酒宴へとなったが、行かんせん私は膝が笑ってしまい歩く事もままならない
それを見かねたグラスリ殿が腕を貸して下さり
もし貴方の相手が私だったら貴方の勝ちでしたよと声をかけて下さった
私は酒宴などより帰って横になりたいのだがそうも行かぬ
酒宴の席で父は宰相様の横に立ち私達を見渡した
乾杯の音頭でも取るのだろうと待っていると、父は耳を疑う様なことを口走った
「明日、四剣及び新生黄金戦士団は王国軍二千を率い聖堂諸国が一角ソフティモへと向かいこれを討つ。ソフティモは和議の申合せがおこなられている中兵を動かした、これは習わしからして許されることではない、我らはソフティモの砦の一つ二つでも焼き払いこれを懲らしめる、各々深酒は控えるよう」
では乾杯
父はそう言いポカンとする皆をよそに酒を一杯煽ると宰相と共に下がってしまった
「コレが目的で集められたわけですか」
カード殿が苦笑いをし酒に口をつける
「シミン侯はご存知で?」
メンテー殿はどうなのだと私に話を振った
「知っていたならば姫騎士殿にご挨拶の一つもしてから参りました」
私の言葉を聞きメンテー殿は苦笑いをした
「話がまとまらぬ聖堂諸国への恫喝でしょうな、さっさと和議に応じなければ次はお前だぞと」
グラスリ殿の言葉に皆は唸り酒を見つめた
「ソフティモは何故兵を動かしたのでしょう」
私の言葉を聞きグラスリ殿は笑う
「動かしてなどおりますまい、見せしめに選ばれただけですよ」
私は肩を落とし正堂などと言っていてもやる事は聖堂と変わりませんねと言い
正堂の尖兵たるゴブリン侯の言葉とは思えませんなと皆に笑われた
私は姫騎士に憧れ騎士を目指した
姫騎士の様に戦さ場を駆け
敵をなぎ払い
傷つく味方を見捨てず
剣を捨てた相手は手柄とせず
ヒバナ殿に言わせればたまたまだとか仰るだろうがあの人は天邪鬼だ
好きなモノを嫌いだと口にする人だ
でなければ軟弱で情けなくカラスの方が賢いまだ野良犬の方がマシなクソ雑魚ナメクジ以下の蛮族と罵る私にその御身体を許されるわけがない
貴族になり騎士の頂点である四剣に名を連ね
任された仕事はいつ手をあげるかと決めあぐねる敗者を嬲る事
聡明なレーレン嬢なら何と言って笑うだろうか
まさに王の犬に相応しいお仕事ねとでも言って下さるのだろう
ヒバナ殿が何と言うかは聞かなくてもわかる
あっそう
そう仰るに決まっている
言葉の意味は無事に帰って来なさい
私の耳にはちゃんとそう聞こえるのだ
思えばヒバナ殿もレーレン嬢も同じ事を仰っていらっしゃった
何故お前は今歩いているその道が正しいと思っていると
不意を突かれたソフティモは国境の砦を我々に易々と落とされ
聖堂諸国はコレを口を極めて非難したが結局はソフティモを見捨て
ソフティモは我々の後を引き継ぐ様に乗り込んで来たドゥクディモ大公の軍に降伏を申し込み地図の上からその名を消した
別れ際にグラスリ殿が私に仰った
コレを企んだのは王と我が主人、それにレーレン嬢ですと
既に聖堂諸国に戦意はなく
和議も間も無く成るだろう
手に入るものが少し足りぬからソフティモの地を
そうなのだろう
ああ早くレーダの街へ帰りたい
おばばの耳障りな声を聞きながらヒバナ殿詣での日々へ戻りたい




