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大森林の魔法使い  作者: おにくさま
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二十七話

「んで、今日は何人だったのよ」


“姉が二人に妹が六人、あと兄も一人”


私達の新居に遊びに来たスズは、最近そこら中に増えた腹違いの兄弟を名乗る奴ら

それの相手をした人数を口にした


“ところで赤ちゃんは?”


「毎日したってそんな直ぐ出来ねえよ」


こいつは本当に

子供の作り方くらい知ってて言ってんだからな

タチが悪い


何故か最近スズが落とし胤だとの話が国中に広まり、自称スズの兄弟がそこら中に湧いて現れ

嗚呼お姉様お会いしとうございましたなんて言いながら押しかけてくるやつらが後を絶たない

スズが言うには一人残らず赤の他人だそうだ


毛玉やシジュウもそれはあり得ないって言ってたし

実際そうなんだろう

まあ噂の出所も目星はつくが、それはスズも承知の様だ


押しかけてくるやつには証を見せろと言って魔法を使わせ

シジュウやエルフ達が直ぐ様その手品のタネ明かしをして見せ追い払う

魔法は使えないと言い張る輩には、ではこれを読めとスズの国元の字を読ませる

それでも食い下がる奴には毛玉やシジュウが自分たちはスズが生まれる前からその事を知って居るがその私がお前など知らんと言っていると追い返す

なら最初からそう言ってやれよな


あ、ちなみに私、少しだけど魔法文字読めるぜ

この前スズに、白札に書いてあるコレ【スズ】って書いてあんだろう?って聞くと顔を真っ赤にして絶対秘密よとか言ってやがった

いやいや、私ら知らん間に単位が【スズ】の金を使わされてたわけだ


そう言えば噂をばら撒くレーレンお嬢さんは、必死に勉強させた医師達とここで余っていた薬で自領に正堂医院を開き聖女ぶりを発揮していらっしゃる

あいつら必死に勉強してたからな

リヨはうるさがっていたけど私は知ってる限りのこと教えてやった

どうせ薬なんか唸るほどあるし

使い切ってねえのに次々と送られて来てたしね


“じゃあこれをフウに食べさせて”


スズがそう言って見覚えのある葉っぱを差し出した

なんだっけ?これ


「なんかのまじないか?」


“センがコレを男が飲めば一晩中だってイケるぞって”


「アホか!」


まあもらっとくけど


“取り敢えず不味いから気をつけてね”


「おう」


ん?

不味い葉っぱ・・・

なんかここまで出て来てんだけど

思い出せねえ


「ところで毛玉は何してんだ?」


スズの所の毛玉は来てからずっと私達の新居を繁々と見て回っている


“傾いたりしてないか見とくって言ってたわ”


なんか不安になること言うなよ


「ところでお前はどうなんだよ?」


スズには浮いた話がなく

間違いなく国中の貴族から我が子を婿にと言い寄られてるはずだ

何処ぞの貴族が毛玉と決闘したって話を聞いた事もある


“外からのお話はシジュウ様が取り仕切っているからよくわからないけど、センがよく自分の里の人と会わないかって言ってくるし、キィも自分の孫と会ってみないかってしつこく聞いてくるの”


「テイとリヨは?あと毛玉」


“テイにはまだ子供がいないわ、まだピチピチの3桁だってよく自慢してるし、リヨは自分が独身でしょう?ワンワンは毛無でも嫌がらん奴を探してやるって言ったからつねってやったわ”


スズは首をひねる

なんでみんな私を男の人に合わせたいのかしらと

私には主人様がいらっしゃるからそれで十分なのにと









シャンの新居に遊びに来て

幸せそうなシャンを見るに

ああいいなぁと思う


最近、変な人たちが良く御屋敷にやって来ては私を冷やかに笑わせるので、シャンを見ているとホッとする

もし私に腹違いの兄弟がいるのなら、それはあの日あの場所にいた犬達と鳥達なのだ

主人様も仰っていらっしゃった

お前があの日、御屋敷に居たことは偶然ではなくそうなるべくしてそこにいたんだよと


まぁ腹違いの兄弟の皆さんはいい

私は何も困らないしシジュウ様も気になされていない

レーレンさんだって私の素性を皆に伝えてくれているだけだろう

あの人は戦さを必死に終わらせようとする様な好い人だから


それよりも面倒くさいのが男の人達だ

まだこの街の人達ならば良いのだけど何故だか国中から貴族がやって来ては私に結婚を申し込んでくる

本当に面倒くさいのに、シジュウ様にも御考えがあるらしく何人かとはお会いした

仕方なく私は一目だけ見て、おかえりくださいと声をかけている


それでも皆さん食い下がってくる

全ての財を捧げますと言った人には蛮族館の蔵に詰め込まれた宝石を見て帰ってもらった

貴女に歌を捧げたいと言った人にはレジナルドならば一晩でも枯れることなく歌い続ける事を知ってもらった

この命を捧げますと言った人にはワンワンの相手をしてもらった


アレは本当につまらなかった

わざわざ鎧を着込み剣を振りかざす男の人と、なんで私がと嫌そうな顔をするワンワンの決闘

突き立てられた剣の刃をヒョイと握ったワンワンが、そのまま剣を取り上げ柄の部分で相手の頭をベコンと叩き終わらせてしまったのだ

あまりにつまらなかったので、次は私がワンワンに挑もうかと思ったくらいだ


私には主人様がいらっしゃる

他に男の人など欲しいと思った事もない

センに大樹の葉を飲まされる様になってからは主人様の夢をよく見る様にもなった

その話をする度に屋敷の皆が孫に合わないか、知り合いと会って見ないかと言ってくる

全く嫌になる


センは自分は《大樹》の王様だから、どんな男だって思いのままだぞと言ってくるし

キィは自分の孫を中々良い男だと言って勧めてくる

確かにキィの所に遊びに言った時に見たキィの家族は皆美形だったし、キィの亡くなられた旦那さんは耳無だから誰も種の違いなど気にしないと言うけどそう言う問題じゃない


ワンワンに至っては我が一族から毛無でも構わん奴を連れてこようか

それとも他に気に入ったやつがいれば私が嫌とは言わせんから安心して選んで良いぞと言ってモジャモジャの中から選べと言ってきた


全く









スズはため息を漏らすので

そんなにお前の〈あるじさま〉ってのは良い男なのかと聞いてみた

なんたって魔法使いの元締めで

私を含め、皆んな絵でしか見た事ないからな


“優しい方よ、それに少しだけどいたずらもされるわ、私と二人よくお屋敷を抜け出してお散歩に行って海辺でお茶を飲んだりするのよ、それをワンワンにも気付かれずにされるの、すごいでしょう?後になって気付いたワンワンがお前どこに行っていた!って私の匂いを嗅いで焦るんだから”


何がすごいのかさっぱりわかんねぇけど、あの毛玉を焦らせるってのはスゲえな

魔法使いの親玉なんだからパッ!といなくなってパッ!と帰ってくるんだろうけど


「ところでよ、その〈あるじさま〉ってのは幾つなんだ?」


あの時見た絵の感じだと行ってて三十行ってないかなって感じだったけど


“この世が生まれる前からいらっしゃって今が五度目の世だって仰られたわ”


何言ってるかさっぱりわかんねえや


「アレか?長生きなエルフみたいなもんか?」


“生きた時間の問題ではないよって笑われるから歳の事はどうでもいいんじゃないかしら?自分はまだ酒も飲めないっていつも笑われるわ”


ふーん下戸なのか

だからスズにも飲まさねえんだな


いつの間にか上がり込んでいた毛玉が

特に問題はないなとか言いながら家の中見回し

ではそろそろ行くかってスズの肩を叩く

スズは頷いて、じゃあ行きましょうと私の手を引いた


本当にお前のそう言うところは初めて会った頃から変わんねえな










主人様にいい男なのかなんてそれだけで失礼

私は主人様のお側に置いていただけることが誇りなのだから


主人様は愉快な方で

たまに私と連れ立って御屋敷を抜け出し、大森林の綺麗な海沿いの舗装された街道を二人、動輪で走るのだ

主人様の動輪は最古の動輪で全ての動輪の祖

だから車輪は太くて力強いけど

遅くてうるさくて陽の光を力に変える事も出来ないから何時も油を燃やした煙を吐きながら走る

主人様は御自身の動輪をとても気に入られているし、そのお姿はとてもさまになっていらっしゃる


そして浜辺の茶店で二人、安物の茶を飲んで帰る

皆んな主人様の動輪を見て随分古いと感心して、私はこのお方が大森林の主人様なのですよと言いたい気持ちを必死に抑えるのだ


そして浜辺の風を楽しんで帰ると

ワンワンがお前何処かに行っていたなと鼻をヒクヒクさせて驚き

秘密ですと答えると、その度に主人様の元へ飛んで行き、どうか一言お声がけ頂いてからお出かけ下さいと嘆く姿が見れるのだ


主人様にお歳を伺った事もあるが自分にそれは意味はないと仰られたし私もその通りだと思う

主人様はこの世の生まれる前からいらっしゃり

この世の終わりまでいらっしゃる

それを世から世へ何度も繰り返されてると言われるのだからお年など些細な事なのだろう

今ここでお前達と一緒にいることの方が大事だよと答えて下さる優しいかたなのだ

ただ、よく笑いながら、まだ母に酒を飲む許しを貰えないと仰られ

皆を笑わせる


エルフ達はその分私達が飲むのでしょうと笑うし

ワンワンはあんな物飲まずともと笑う

なら私もこのまま酒を飲まずにと言うと主人様はそれはどうかなと笑われた


シャンとそんな話をしているとワンワンがやって来てそろそろ行こうと声を掛けてきた

今日は先日行われた式のお返しを二人がしてくれるらしく

皆がフウの店に招待されているのだ

王様も尼様も平民もエルフもゴブリンも一緒に街の酒屋で楽しむのだ

きっとこの世界は平和で穏やかな世界になるに違いない


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