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大森林の魔法使い  作者: おにくさま
57/100

白家の姉弟

アレは何年前になるのだろう

僕は町の聖堂から遠くの聖堂へ向かう荷馬車の上にいた

行先がレーダだと言うこともわかって居なかった


おばあに死なれ、聖堂に預けられ

救済院で畜生の様な扱いを受け

遠くの街の聖堂で際限無く受入をしているとの話しを聞いた尼のババアが

無駄飯食いの僕と眼の見えない女の子の二人をそこに押し付けることにしたのだろう


路銀すら持たされず

信心深い交易商人の荷馬車の隅に紹介状を持たされて乗せられた

旅は二晩だったろうか

朝晩恵まれる豆のスープの事はよく覚えている

救済院で食った野菜クズの煮込みに比べれば天地ほどの差に感じられたからだ


三日目の昼過ぎだったと思う

レーダの街に入り商人に正堂に連れられた

あの頃はまだ正堂の周りは貧民街で

それを見て、このまま交易商人の所で働かせてくれないものかと思ったモノだ



正堂は今とは比べる事はできないが

それでもとても立派に見えた

あの頃はまだ救済院を名乗って居た


出迎えてくれた尼様はやたら「正しい」って言ってたっけ

昼の残りだと言われてパンとスープを出されて驚いたよ

まるで貴族様だねって


荷馬車に揺られている間に眼の見えない娘と少し仲良くなって

僕の格好も酷かったが彼女はもっとひどかった

目が見えないのをいい事に雑巾でも縫い合わせた様な服を着せられて居たから


まずは旅の垢を落とせって言われて湯を頂き

今みたいな浴場じゃ無くて桶に入ったお湯と手拭い

それでも嬉しかったね


次に驚いたのは用意された服がまともなものだった事

本当にこれを着ていいのかって何度も尼様に聞いた

人らしい正しい格好だって言われた


たしか、その後はみんなに紹介され

そこで彼女とは別々になったんだ

少し心細かった

そして皆んなこぎれいな格好をして居た

まるで町の子の様だった

その後は日が暮れるまで読み書きだったかな


夕食の席で彼女を見つけ

君は何をして居たのと聞くと、歌を教わっていたって言ってた

夕食には姫様から砂糖を頂いたって言われ甘く煮た豆が出されて

アレはさすがに皆んな奪い合う様に食べた


僕は聞いたんだ

姫様って誰だい?領主の娘かい?って

皆んなに睨まれたんだ

姫様はこの国の誰よりも偉い方だぞって

王様も姫様の家来みたいなもんだって言われ

こっちは余所者なんだからそんな目で見るのは勘弁して欲しかった


晩の御祈りを済ませ

彼女にまた明日ねと言って別れ

隙間風のない寝床で寝れた事は嬉しかったな


翌朝は朝食の手伝いをさせられたけど

水が冷たくない事に驚いた

何でも大きな湯釜が出来て一日中お湯を沸かしているんだと当番の奴に教えてもらった

そんな事して薪は足りるのかって聞いたら皆んなして笑ってね

後でわかるって言われた


朝食を腹一杯食べていいって知った時は泣くほど嬉しかったな

彼女も生まれて初めてお腹がいっぱいになったって笑ってた


その後すぐ薪割りだって言われ

薪の正体を知って驚き

それが僕の正堂での最初の仕事だった

昼を挟んで畑の手伝いをして、また読み書きだったかな

彼女は縫物を習ったって喜んでいたっけ


それから四、五日もしないうちに新しくよその街の救済院から人が送られてきてね

その内それにも慣れたけど

最初のうちはこのままじゃ自分の食い物が減らされるんじゃないかって心配してたなあ


そんなある日

増築が進む救済院を姫様が見にいらっしゃったんだ

綺麗な召使いを連れて

宝石を付けていてね

工事を続ける大工達に気さくに話す姿に驚いたね


もっとこうさ

お姫様って

分かるだろ?

そう言うの想像してたから


彼女に姫様はどんな御姿なのって聞かれて一生懸命説明したけど

色や姿を知らない彼女にはうまく伝えられなかった

それでも喜んでくれたけどね


そんな時

姫様が畑を見てこれは何?って聞かれてね

芋畑ですってみんなが答えて

驚いたよ

姫様はしゃがみこむと芋を掘りだしたんだ

皆んなでやめて下さい、御召し物が汚れてしまいます、手が汚れてしまいますって

姫様は気にせず掘った芋を見てたよ

珍しかったのかな

芋が


その後どれ位した頃かな

ゴブリンと交易が開いて直ぐだったと思うけど

救済院改め正堂で姫様のお付きのエルフが医院を始める事になってね

最初に僕たちが見てもらえる事になったんだ


ほとんどのみんなは医師様に「至って健康」って言われてた

あの頃は皆んな医師様の見た目に怯えていたし

ホッとしたよ


そんな時さ

彼女が僕を呼んでね

どうしたのかって聞いたらひどく興奮した様子で言うんだ

色を見たって

彼女は本当に興奮していてね


落ち着かせて話を聞くと

自分を見た医師様に此処では目は治せない、だからせめて色を見せてやると言われ

首筋に何かを当てられ

そしたら見えたそうだ

これが赤

これが白

そんな具合に

いろんな色を


色を忘れてしまったらまた見せてやるとも言われたそうで

何度も何度も自分の着ている服の色や風景の事を聞いてきた


何色の服を着ているのと聞かれて

白だよと答え


帯の色はと聞かれて

黒だよと答え


でも裾が汚れているって言うと

何色に汚れているの


そんな事をずっと


何色だったかな

僕が言った色を聞いて

その色は見せてもらってないって酷く落ち込んで

一生懸命似た様な色で説明したっけ


眼の見えない子は他にも何人かいたけど皆んな奪い合う様に医師様に色を見せてもらっていたよ

さすがに病人が来出す様になったら控えてはいたけど



街はずれの開拓が始まった頃

彼女が僕を呼び、興奮した様子で姫様のお顔を触ったと言って自慢して来た

そんな罰当たりなと言うと彼女は

開墾の手伝いで食事の支度をしていると、姫様がいらっしゃり、目が見えないのに凄いのねと言って褒めてくださった

姫様は手伝いを申し出てくださったが畏れ多いので御遠慮頂き

それでは何か望みはないかと言われたのでつい、姫様のお顔を触らせて欲しいと

そうしたらハイどうぞと言われて手を取って頂き

余りに突然の事で驚くと、私の汚れた手にフサフサとした毛並みが触れて

まるで犬の様だと驚くと、冗談ですよと仰られ

今度は柔らかなお肌が手に触れたの

お顔の形も髪もこの指先ではっきりと見たわ

アレが姫様のお顔なのね

彼女はそう言い頭の中に出来上がった姫様のお顔を何度も僕に話し

眼の色や髪の色を僕に聞いては嬉しそうにしていた



此処に来て二年が経った頃

不具者達が集められ説教が行われた

今まで通り皆と一緒に働くもよし

不具者だけの仕事場に来るもよし

そんな内容だった


彼女はとても悩んでいた

針子の仕事が好きだと言っていたし誇りを持っていた

手に職をつけ将来に備えるんだと

だから僕は、きたい奴だけ来ればいいと言うのだからと言って彼女もそうねと答えた

それでも不具者の半数はそこに移り、そこで仕事を始めた


彼女の盲目仲間の一人もそこへと移り

話を聞くと白札に関わる仕事だと言って胸を張った

彼女はそれを聞いてとても悩んでいた


その頃僕も募集のあった正堂隊の下部組織である少年正堂隊への入隊を希望していた

彼女は危ない仕事なのでしょう?とずいぶんと心配してくれたが

元は爪弾きだった僕らが街の見回りを任されるのだから名誉な事だと言って笑って答えた

だから番犬の紋章が入った腕章を渡された時は、心配する彼女をよそに一人前の男になったと胸を張った



それから二年が過ぎ将来の事を考え始めた頃

姫様の御生誕祭

そこに向かう正堂長様の護衛として僕らが選ばれた

とても名誉な事だと喜んだ


彼女に姫様がどんな御姿だったか帰ってきたら教えて来れとせがまれ

会場の中に入れるわけじゃないからと言うと

外から覗けばいいじゃないと怒られ

そんな事出来るかとも言えず、やって見ると答えて正堂を後にした


迎賓館と呼ばれる姫様の新しい御屋敷に着くとそこには貴族達が沢山いて

とても場違いに思い皆で肩身の狭い思いをする

でも少し楽しみがあった

前回、警護についた人たちから聞いたんだ

宴が始まると受付のリンさんがご馳走を会場から皿ごと持って来てくれるって

だから皆んな口にはしないけどそれをとても楽しみにしていた


貴族達が会場に入り正堂長がそれに続くと僕達は少しホッとし

そこら辺に腰掛けた

そして暫く皆んなと話しながら時間を潰していると怖い顔の姫様が女の人といらっしゃった

皆は場違いだと怒られるのかと思い怯えていると、姫様は隊長を睨みつけ、ついて来なさいと仰り

皆が狼狽えていると今度は大きな声で私に侍りなさいと言って会場へと向かわれたのだ

皆が目をぱちぱちさせているのを見て姫様と一緒にいた女性が「だってよ、行くぜ」と笑い、なんて言葉使いのお嬢さんなんだろうと驚きながら後に続いた


そこからは緊張しっぱなしで

会場の中に入るとまるで晒し者にされた気分で

そんな時、さっきのお嬢さんがいいからお前達も食えと言ってご馳走をひとつ摘み

僕らの中の一人がその人が正堂組のお嬢さんだと気づき

ようやく皆んなご馳走に手をつけた


本当に美味しかった

貴族達は蔑んだ目でこっちを見ていたがもうそんな事どうでもよくて

皆んな喉を詰まらせながら群がる様に食べ

僕もその輪に加わりながら少し持って帰れないかなと

正堂でも祝いの料理が振る舞われているけどこのご馳走を彼女にも食べさせてあげたいなって

そんな事を考えていた


ご馳走は際限なく運ばれて来て

皆んなが少し落ち着いた頃

なんと姫様が此方にいらっしゃり、僕らに今日は楽しんでいってねと声をかけて下さった


皆、天にも昇る心地で

帰りに真金様が全ての料理を皿ごと持って帰れと施して下さった時は皆声を上げた

思っていたことは皆んな同じなのだ


僕は皆んなの警棒を持ち

皿を抱える年かさの隊員達に落とすなよと言いながら踊る様な足どりで正堂へ戻り

彼女を呼び出すと、ごった返す食堂から持ち出したご馳走をメクラ達に振る舞った

彼女も僕に姫様がお作りくださった果実水よと言ってぬるくなった果実水を渡して来れた

皆にコレは何?次は何?と聞かれながらご馳走を配り

姫様の話を聞かせ

その怒った御姿や笑ったお顔の事などを話して聞かせた


彼女と二人きりになると

不具者の集まりに参加しようと思うと打ち明けられた

正堂で針子として働いてもメクラの給金は他の人の半分

食べる物も着る物も住む所も困りはしないが、いつかは自立がしたい

彼女はそう言ったのだ

僕は何も言えなかったがそれはとても大切な事だと思った


それから暫くして

僕らが当番で勝利の丘に有る正跡の掃除をしていた時だ

聖堂が三公国を率いて攻め込んで来たと知らされた

王が姫様に助けを求めて来たと言うのだ

無敵の王国軍が負けたのかと呆然としていると尼様が声を上げた

立て!槍をとれ!正敵を討つのだと


皆は色目気だった

尼様が正敵征伐の正堂隊を組むと聞き

僕はひとつ足りない歳をごまかし正堂隊へ潜り込み、槍と揃いの胸当を渡され決意も硬く、彼女に正敵征伐の正堂隊に選ばれた事を伝えた


すると彼女はそれはダメだと言って引き留め

僕を連れ隊長の元へ向かい、この人は歳をごまかしていますと言って僕を正敵征伐の正堂隊から外す様に言い出したのだ


隊長は僕に歳をごまかしたのか聞き

僕が私は間違いなく十六ですと答えると、よく言ったと言って肩を抱き

彼女に、こいつは正堂のために立派に死んで見せるのだ、それはとても誇り高い事だと言って宥めようとしてくれたのだが


彼女は逆上し、僕の槍を奪うと正堂長へ談判すると言って出て言ってしまった

隊長はあれはお前の姉のつもりなのだろうなと言って、本当にいいのか?と聞いて来た

僕が勿論ですと答えると隊長は満足そうに頷き一緒に死のうと笑ってくれた


その後、なんとか槍は取り戻したが出陣式には行かないと言って彼女は部屋に閉じこもってしまった


王に領主の軍勢

それに姫騎士様と姫様より貸し与えられたゴーレムに魔犬

これ程の大軍なら愚かな正敵など一捻りだろうと皆震えながら笑う


進軍の号令とともに街を進むと正堂の皆が万歳万歳と声を上げ見送ってくれている

そしてその中に見つけたんだ

涙を流しながら万歳を叫ぶ彼女を


僕は必ず勝ってくると、万歳に負けぬ様な大声で叫び

彼女は僕の声が聞こえたのか、叫ぶのをやめ必死に耳をそばだて僕を探していた



街を抜けるとすぐに森に入り、エルフの案内で正敵を目指す

もう間も無くだと案内のエルフに言われたところで休憩になり

皆で甘いものや水を飲み

さあやるぞとお互いを鼓舞しあった


森を抜けるとすぐ目の前には眼前を埋め尽くさんばかりの敵が一面に広がり

僕たちは立ち竦んだ

それを見たからだろうか敵は此方に駆け出し、僕は必死に、突然動かなくなった足に動け動けと目をつぶり叫んでいた


その時

迫る敵は一瞬で消し飛び敵中に騒めきが走った

姫様のゴーレムが敵を消しとばしたのだ


それに続けと騎士達が駆け出し

姫騎士と魔犬が瞬く間に敵を灰にしてしまう

それを見た隊長は我らも行くぞ!と叫び僕達も雄叫びを上げた


ところが目付けとして付けられたシミン殿が僕達に動くなと命じ

下がる様にとまで言い出したのだ

隊長や僕らは今行かねばいつ行くのですと言って駆け出し此方に迫る敵の一団へと向かった


そこからはひどいもので

先を走った仲間達は瞬く間に斬り伏せられ

それを見てすくむ僕達に敵が迫ったのだ


それを見たシミン殿はひとり敵前に立ちそれらを迎え撃ち

その手の槍で群がる敵を薙ぎ倒す

それを見た僕達も再び雄叫びを上げ敵中に飛び込んだ


僕の記憶はそこで一旦途切れる


気がつくと血と涙とションベンをながしながらへたり込み

早く下がれと鬼の形相のシミン殿に抱えられていたのだ

シミン殿は私を抱える不利からか

何度も敵に斬りかかられ

手傷を負いながらも奴らを追い散らし

怪我人だらけになった正堂隊を守っていた


その次に気がついたのは街道を行く荷馬車の上で

いつの間にやら怪我の手当てがされていて、痛みも随分と引いていた

誰かが言うには姫騎士の治癒魔法のおかげらしい


記憶を辿れば雨の様な投石にあい

額を破られ、そこら中に石を打ち付けられた

骨も折れたのだろう

腕には添え木がされていた


僕が隊長はと聞くと

姫騎士のおかげで痛みもなく安らかに眠られたと言われ

一緒に死のうと言ったのにと落ち込んだ


列の先頭では、あれだけの大怪我をされていたのにピンピンとしたシミン殿が姫騎士に張り倒されては嬉しそうにされている

それを見ていると僕も早く彼女に会いたいなあと思ってしまった


一晩夜営をし

明くる日に街へ

英雄の凱旋だと皆に出迎えられ

骸として戻った仲間達は正職者として祀られることとなった


僕達が正堂につくと、正堂長がよくぞ戻りましたと声を掛けて下さり

解散式が終わると皆んなそれぞれ身近な人が駆け寄り再開を喜んだ


僕の元へは彼女が声を上げながら人混みをかき分けて現れ

僕の体に指を這わせては大変だゲガをしている、医院へ行こうと言い

僕の手を引き医師様の元へ引きずる様に連れて行かれた


医院では今日ばかりは怪我人の治療を優先との事で

すぐに僕の番に成る

医師様は千手のゴーレムに僕の体を眺めさせ、よしそこに寝ろと言って僕を寝かせ、添え木を当てられた腕に針を刺すと見る間に僕の腕を捌き

折れた骨をつけなおし、それを塞いでしまった

それが終わると、暫く風呂はダメだ、毎日傷口を潔に暫くは医院に通え、熱や痛みが出たらこれを飲めと言って薬を渡され

今日明日は病人部屋に泊まれと言われてしまった

ああ、雑魚寝だが付き添いはそいつで良いのだなと医師様は彼女を指差し

では病人部屋へ行けと追い払われる様に医院を追い出された


病人部屋では戦さの怪我人達が並び

その寝台のひとつで僕は横になった

彼女は僕の体を拭いたり荷物を取りに行ってくれたりしたが、戦さの話は聞きたがらず

正堂に戻ってからも終ぞ戦さの話はせず

姫様の御屋敷で行われる戦勝祝いに僕等が招待されてもあまり良い顔はしてくれなかった


僕はこの数日考えていた事を、戦勝祝いの席で何か望みはありますかと言われた姫様に願い出た

姫様はそれを聞き、わかりましたと答えてくださり、出来る限りの事を約束してくださった



それから数日して僕には正堂の外に小さな白家が与えられた

そして僕は彼女を連れ医院へと向かった

僕の怪我の治療に付き添ってくれと

そう言って連れ出した


診療が終わった医院へ行くと千手のゴーレムの前に座らされ、戸惑う彼女をよそに、医師様は今からの事は他言無用と僕に釘を刺し、彼女の首の付け根あたりに何かを埋め込むと今日はここに泊まってもらうと言って奥の休憩所へと僕らを閉じ込め

戸惑う彼女は一体これはなんなのかと僕に何度も聞くが、僕も今は言えないと答えるしかなかった


明くる日

早朝に部屋から出されると

医師様は彼女の両肩に乗る様な形をした革でできた様な物をその首元に乗せた


直ぐに彼女は悲鳴を上げ

辺りを見渡し、これは一体なんなのと気が触れた様な声で僕を呼んだ


錯乱する彼女を押さえつけながら、医師様は、それが〈見える〉と言う事だと彼女に言い

驚く彼女を落ち着かせると、上物のストールで彼女の首元を隠させた

慣れるまでは疲れるから長い時間は使うなと医師様は彼女に言い

コレはお前達蛮族には過ぎたものだ

スズが頼むから特別に施した

他言は無用

偶々何かの拍子にそうなったと言張れと言って最後に僕に釘を刺した


見えると言ってもお前の様に見えているわけではない

ボンヤリとした寝起きの様なアレだ

だから何時も気を使ってやれ

医師様はそう言うと僕らを部屋から追い出した


彼女は震える指で僕の顔を触り

見える見えると泣きながら僕の顔を撫り続けた



その後、僕は正堂を出て開拓民となった

正堂隊に残らないかと言われたが、もう一人ではないからと言って断った

彼女も僕と一緒に正堂を出て開拓民に加わった

見えると言ってもボンヤリとなのだから正堂で針子を続ければ良いと思ったのだが、彼女が決めた事なのだからそれで良いのだろう


二人、正堂を出て姫様より頂いた白家に移り住むための手続きをして驚いた

僕達は姉弟として人別帳に登録されていたのだ

周りからは姉弟では子は出来んぞと揶揄われたがそれでも良いかと僕達は笑った


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