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大森林の魔法使い  作者: おにくさま
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二十四話

新しい友達が出来たと喜び

シジュウ様に蛮族では無いかと鼻で笑われたりもしたが

私はとても浮いた気持ちになっていた


翌日、お勤めを済ませるとシジュウ様にお許しを頂き、レーレンさんのいらっしゃるシミンさんの御屋敷へと向かった

私も暇だからとキィもついてきて

これは楽しくなりそうだ


昨日、ヒバナさんも誘ったのだが

毒に侵され高熱が出たので御遠慮します

と断られてしまった

きっとシミンさんがレーレンさんの事を黙っていたので怒っているのだろう

顔も真っ赤だったし


酒瓶片手のキィを連れシミンさんの御屋敷の門を叩くと、馬飼の奥さんがこれは姫様と言って膝をつく

汚れるからそれはしなくていいと何度も言っているのだけど

本当にめんどくさい


「おにのひめのごゆうじん、こちらでおまちを、あとえるふ、おまえもはいれ」


やって来たゴブリンの召使いが私とキィを客間に通す

キィは日が昇ってるのに寝なくていいのかとゴブリンの召使いを笑い

ゴブリンの召使いはフンと酒瓶を見て笑った


「あいつ首をはねてやろうか」


キィは壁に掛かる剣を見て呟き

私はまた今度ねと言ってなだめた



「お待たせしました」


シミンさんを引き連れ現れたレーレンさんは笑顔を咲かせ

それではスズ姫と待ち切れない様子を見せる


“姫は要りませんよ”


笑顔で言う私に

異国の方を何とお呼びするかと昨夜一晩悩みましたが、お気に召しませんでしたか?と少し残念そうにされるので

では今日はそれでと答え屋敷を出た


「馬車を出しましょうか?」


レーレンさんが私に気を使ってくださるが私はいたずらっぽく笑って見せた


“〈歩いて〉行こうかと”


私の声に合わせるように主人様の御屋敷からドスンドスンと音が近づき、黒金のゴーレムがやって来た


「これでいいか?」


ゴーレムを持ち出したワンワンがゴーレムの肩から飛び降り面倒くさそうに言った

昨日の粗相の罰として少し手伝わせたのだ


レーレンさんは目を剥いて驚き

シミンさんは言葉を失った


“では皆さん”


膝をつき両手のひらを下ろす黒金のゴーレムに乗り、レーレンさんの手を引いた


「何で見晴らしのいい!」


レーレンさんは感嘆の声を上げシミンさんはこれはストーンゴーレムがオモチャに見えますねと呆れていた


見上げるとゴーレムの肩のあたりでワンワンとキィが何事かを話し

見下ろすと街の子供達がゴーレムの後ろを歓声をあげて追いかけていた


「スズ姫、コレは何と言うのかしら?」


レーレンさんの問に私は、皆は黒金のゴーレムと呼びます

ワンワンには何度も【 歯車】だと言われるのですが私もゴーレムと呼んでいますと答えた

レーレンさんは【歯車】?と首を傾げ

主人様の国元ではそう呼ぶそうですと答えた


レーレンさんはふーんとゴーレムを見上げ

シミンさんに王国の切り札、巨人兵ストーンゴーレムがなぜ動くか知っていますかと先生のように切り出し

シミンさんは口ごもる


「よろしい、スズ姫もいらっしゃるので特別に教えましょう。木人や鉄人より遥かに大きく重く頑丈なストーンゴーレム、コレがなぜ動くかは王とその側近しか知りません。噂では、昔、王家の御先祖が魔法使いから授かった秘術を使うと聞きますし、それは人の魂を岩石に宿すものだとも言われています」


シミンさんはほーと感心し

レーレンさんは言葉を続けた


「でスズ姫、正解は?」


突然の事に私は驚く


「魂では無いがな、半分は合っている」


ワンワンがゴーレムの肩の上からそう答え

私がでは残りの半分は?と聞くとワンワンは空を指差した


私が首を捻るとワンワンは

後で教えてやろうと苦笑いをし

レーレンさんは後で私にも教えてくださいねと私に耳打ちをした


門前町に着きゴーレムを降りると

店を覗き込んでは

アレは何?コレは何?と聞くレーレンさんと、昨日も見たではないですかと呆れるシミンさん


「昨日はまるで駆け足でした」


不満そうに膨れるレーレンさんにシミンさんは呆れ

キィは酒が無くなったと言って酒屋へと向かった


「スズ姫はお酒を召され無いのですか?」


キィをみたレーレンさんは私にそう聞き

私は大森林の法でお酒は22になるまでお預けなのですと残念そうに答えて見せた


「厳しいお父上様なのですね」


レーレンさんはそう仰り

私はレーレンさんの言った【お父上】の言葉に顔を赤くする


門前町を抜けるとまず病院へと向かう

シャンにもレーレンさんを紹介しようと思ったのだ


「ムリムリ!貴族とかバカ言ってんじゃねーよ!お前みたいな世間知らずならまだよぉ、ガチガチの貴族様だろ?勘弁してくれよ」


シャンは泣いて嫌がり

後でフウの店に行くからその時ねと言ってその場は許してあげた


「今、そちらの方から聞きました、ここに来れば治らぬ病などないと」


病院を珍しそうに見て回るレーレンさんはそう仰ると少し怒ったように私を見た


「此処にある薬の千分の一でも他領に配れば救われる命はごまんとあるのですよ」


私はその語気に気圧されてしまったが

ワンワンがそれに答えた


「救えんよ、此処にある薬は一つ一つ効き目の違うものだ、それが三千種、それを医師が病状を見て決めるのだ。薬だけばら撒いても意味はない」


「ではその医師に国中を廻られせれば良いではないですか」


「それはお前達の領地で勝手にやれ、此処は正堂とか言う連中のやっている病院だ」


「私の領地も正堂の教えを受けています」


「では此処まで病人を送れ」


「憎らしい」


「憎んでくれて構わんよ」


私はワンワンのお尻をつねりレーレンさんに謝りなさいと怒ったが

おふくろ様のお許しが無ければ蛮族に頭は下げんと鼻で笑うので毛をむしってやった


悲鳴を上げるワンワンにレーレンさんは真顔で

では此処に医術を学びに来させるのはと聞き

ワンワンは馬鹿にしたように覚える事が出来るのならなと笑った

私はワンワンの毛を両手いっぱいに掴むと、やめろと叫ぶワンワンに謝りなさいと言って毛を引っ張った


「そんなに毛を毟ったら禿げてしまいませんか?」


心配そうにワンワンを見るレーレンさん


“大丈夫です、いくら毟っても直ぐに生えて来ますから”


私の言葉にワンワンは舌打ちをし

レーレンさんは目を丸くした


次に竹林に向かいレーレンさんの背丈に伸びた竹に印を付け

後でもう一回見に来ましょうと言い大浴場へ向かった


千鳥足のキィを連れ浴場の門を潜り

男女それぞれ二手に分かれ

受付で湯代を払う


受付の女性は姫様からお代など頂けませんと泣かれたが

受け取らねばどうなると思う?と笑うキィを見て青ざめ湯代を受け取った


“不具者と労働者と困窮者は湯代がいらないんですよ、だからここで代金を払うのは貴族と大商人位です”


私がそう言って笑うとレーレンさんは親に死なれた私も困窮者かしらと笑い

違いないとキィがケラケラと笑った


脱衣所で昼の入浴を楽しむ御婦人達に混じり服を脱ぎ、見張のゴブリンにそれを預け木札を受け取り首からかける

レーレンさんは私とキィの下着を見て驚き

慣れれば良いものなのですよと私が笑うと冗談ではありませんと笑い

キィがヒバナもこれであのガキを誘惑したのではないか?と笑うと

ものには限度がありますと首を振られた


私が、では湯場へと言って先へ進もうとすると、キィがレーレンさんの手を掴みそれは置いていけと言って小さなナイフを取り上げゴブリンに投げて渡した

危ないですよ?と私が言うとレーレンさんは肌の手入れをと思いましてと笑い

それは私がやってやると剃刀を持ったキィが笑いながらレーレンさんの腹をピシャピシャと叩いた


レーレンさんは光石で明るく照らされる浴場に声を上げ

これだけの湯を一体どこからと感嘆していた


「汲み上げた水を火石の並んだ樋を通して落とすのさ」


キィが浴槽に流れ落ちる湯を指差しそう言うと

まぁあの裏では男どもが紙切れ欲しさにヒーヒー言いながら働いているわけだと腹を抱えて笑い、レーレンさんを座らせと、動くなよ?手が滑って肉ごと削ぎ落としてしまうと物騒なことを言って剃刀をレーレンさんの身体に這わせた


「酔った手で乙女を傷物にしないでくださいまし」


レーレンさんは何食わぬ顔で言い返し

キィは動けるうちは酔ったことにならんよと笑い

スズ、次はお前だぞと私を座らせた


三人湯船に並び、声を出して肩まで浸かる

キィは少し熱いなと言って湯船に手を沈めると、レーレンさんがひゃあ!と声を上げた

それを見て笑うキィ


「スズ姫!私のお尻の下が氷の様に冷たく!」


驚いて湯船の底をペタペタと触るレーレンさんと何のことだ?ととぼけるキィ

私は水玉を作りそれを次々とキィの顔めがけ飛ばし

当たらんよと言ってキィはヒョイヒョイと避けて見せた


「魔法だ!」


それを見た子供が嬉しそうに叫び

人集りが出来てしまう

中には有難やと言って拝むお婆さんの姿まで


私はやってしまったと苦笑いし

コレはここに居る皆さんだけの秘密ですよと言って手のひらに浮かぶ水玉を弾けさせた


皆は嬉しそうに勿論ですと笑い

子供達は姫様もう一度とせがみ

もう一度だけですよと言って大きな水玉を作りそれを触らせた


「では秘密ついでに」


キィはそう言って水玉を指でつつき

凍らせ

子供達は歓声をあげた


氷の球を湯に浮かべて遊ぶ子供達を見てレーレンさんが真顔で聞いた


「今の魔法で相手の血液を吸い上げたり凍らせたりは出来るのですか?」


私はその言葉に驚き

考えた事もないと答えようとすると


「出来る」


キィが、だから何だ?と言った顔でそう答え

レーレンさんは何と恐ろしいと呟いた

キィはそれを聞きお前の知りたいことを答えてやるよと言って言葉を続ける


私たちには出来るがお前達には出来ん

私達の中にも出来ん奴は大勢いる

いるがそれは問題ではない

例えばワンワン様はお前達が言う魔法は使えんが恐ろしい迄の力で世の理を捻じ曲げてしまう

まあ彼の方はやったら出来たと言うだけだろうが

スズはその力をシジュウ様が引き出された

私達もだ

お前達も導く者がいればそれもできようがそれはあり得ん話だ

それが出来る方はシジュウ様を除けばこの世に二人しかおらんからな

だから諦めることだ

精々賢人とか言う愚者に頼れ


キィの言葉を聞きレーレンさんはおそれいりますと頭を下げ

私ははぁそうなのかと感心した


「そんな話はさて置き湯上がりの一杯だ!」


キィは嬉しそうに叫び早く出ようと子供の様なことを言う

私はそうねと言ってレーレンさんに出ましょうかと声をかけ湯船からあがった


体を拭い服を受け取り袖を通す

そこでさっきの話を思い出しキィに聞いて見た


“ワンワンが捻じ曲げるとは?”


キィはうーんと言って辺りを見渡し

石鹸を指差した


「アレにお前が砕けろと命じても何も起きんだろう?」


“ええ、石鹸に言葉は通じません”


「その通りだ、しかしワンワン様がそう言えば石鹸は砕ける」


“魔法ではなく?”


「ああ、魔法ではなくワンワン様が命じたからだ」


“なぜそんな事が出来るのでしょう?”


「それはワンワン様に聞いた方がいい、しかしきっとこう仰る『私がそう命じたのだからそうなるに決まっているだろう』と」


私は言いそうですと笑い

レーレンさんはスズ姫にも存じ上げない事が有るのですねと笑った


私は知らない事だらけですと笑い

だから毎日学んでいますと胸を張った



浴場を出るとすぐ隣の休憩所に入り

姫様こちらへと案内され

その先には生乾きのワンワンが子供達に囲まれながら赤い帯を締めた女の人に毛を乾かされていた


“自分でやりなさい、シジュウ様に言いつけますよ?”


呆れる私に、上半身をはだけ毛を拭かれるワンワンはコレがやらせてくれとうるさいのだと言って赤い帯を締めた女の人を指差し

その女の人はその手を止め私に傅いた


私はワンワンは風邪などひかぬから適当で良いですよと言い

赤い帯を締めた女の人は滅相も無いと答えワンワンの毛を拭き始めた


「スズ姫は不具者が何を言ったか分かるのですか?私には口を動かした様にしか」


レーレンさんは運ばれてきた冷水を飲みながらそう首を傾げ

私はこの力はこの様な事のためにあると教わりましたと答えた


レーレンさんは大変に尊いと言って下さるが

ただそれをあなた方が独占されるのはどうでしょうと呟き

私は口籠もった


「あれも欲しいこれも欲しいでは最早人ではない」


突然ワンワンがそう言い

レーレンさんが肝に命じますと頭を下げた


「ところで私のシミンは?」


レーレンさんが辺りを見渡すと

ワンワンが少し離れた席を指差す


「おお!コレは白姫様にレーレン嬢!」


その先には赤い顔をしたケシミさんと嫌そうな顔をしたシミンさんが座っていた


「いや、貴族様と違いまして私の如き騎士などはやる事もなく、タダ風呂にでもありつこうと畑仕事を手伝っておりまして」


ケシミさんは赤ら顔で笑い

シミンさんに王の警護が有るではないですかと怒られるが

この街で誰が王の命など狙うかよと笑い、酒を飲み干した

それを見たキィが何だもう酔ったのかと酒抱え持って現れ

いやこれからですとケシミさんは笑った


「そうだケシミ様、シミンに言ってやってください、お前はレーレンの許嫁だと」


レーレンさんは運ばれてきた氷菓を口に運びながらそう言い

シミンさんは何を言っているのですかとレーレンさんをたしなめた


「ああ、確かにウチの息子で良ければどうぞと言いましたな」


ケシミさんがそう答えるとシミンさんは父上と頭を抱え

レーレンさんはほら見なさいと笑った



その後、汗が引くのを待ってもう一度竹を見に行き

目線にあった印が見上げる高さになっているのを見てレーレンさんは驚き

酔いつぶれたケシミさんを引きずるキィがこいつを引っ掛けておけば明日の朝は見ものだぞと笑い

それはやめて下さいとシミンさんが頭を抱えた


日が暮れる頃

フウのゴブリン酒場へ向かい

セン達も呼び

レーレンさんの歓迎の酒宴を開いた


途中シャンも顔を見せたが

勘弁してくれと逃げ帰り

フウがごめんねと謝った


「私、この街がとても気に入りました」


レーレンさんはお酒を口に運び

上機嫌でわらう


“ではこちらに住まわれては?王様もそうされました”


私はレーレンさんの手を握り是非にと迫った


「しかし領地の事もあります、色々落ち着いてからならば」


レーレンさんも嬉しそうにそう答えてくれた


“是非!そうして下さい!待っています!”


「三年、いえ二年お待ちください、必ず参ります」


レーレンさんは満面の笑みでそう答え

私は女同士の約束ですと手を握り

レーレンさんはハイと笑ってくれた











私の手をとる無邪気な魔法使い

見ているが良い

お前が笑顔で歩くその後ろに何が見えるか

お前が森の中に帰りたくなる様なその光景を私が貴女に見せてあげましょう


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