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大森林の魔法使い  作者: おにくさま
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二十二話(か)

聖敵騒ぎがひと段落し、そのおかげで大量の白札を手に入れた僕はその日の仕込みをしていた


まだ陽のある、夜稼ぐ僕にすれば早い時間

ギーギーと泣く声が聞こえ子供を担いだゴブリンが店の前を歩いていた

病院の帰りだろう

親は泣く子をあやしていた


流石に白の街でも珍しい光景だったけど珍しいだけなので仕込みに戻ると

暫くしてその親子がやって来た

親は仕込みをする僕を見てカウンターを手の甲で叩き子供は相変わらずギーギーと泣いていた


なんだい?


そんな事を答えたと思う

手を休め会話集を片手に話を聞いてみた

ゴブリンは僕が捌いていた豚のハラワタを指差す

コレなら会話集は要らない


良いよ、待ってって


僕はそんな事を言いながら油紙に血の滴る臓物を包みゴブリンに渡した

ゴブリンはどこかで覚えたのだろうおじぎをし、腰から中札を一枚取り出した


要らないよ


僕が会話集を片手にそう言うと今度は小札を取り出す

もう一度要らないよと言ったがそれはダメだと言われたので一枚だけそれを受け取った

ゴブリンの子供は相変わらずギーギーと泣きながら口の周りを血で染め臓物にかぶりつき親は少しホッとしているようだった

僕がバイバイと手を振るとゴブリン親子も真似するように手を振り街はずれに消えていった



それから幾日かしてその親子が開店前の仕込みの時間に現れまた子供に臓物を買い与えた

今日は泣いてないねと会話集を見ながら聞くと親は今日はこれがなかったと言って指を腕に刺して見せた

病院では針を使って薬を直接身体に流し込む事をするとシャンに聞いたことがある

どこが悪いのと会話集片手に聞くと親は咳をして見せ子供を指差した


病院に行けば百日続く咳も治ると聞く

それで此処まで子供を抱えて通っているのだろう

臓物を食べ終わった子供が親の手を引く

はやく帰ろうと言ってるのだろう

またねと手を振りその親子と別れた



また暫くするとゴブリンの親子は手を繋いで歩いていた

随分良くなったみたいだねと言って見ると子供はぴょんぴょんと跳ねて見せどうだと胸を張った

じゃあこれは快気祝いと言って鳥の串を一つ差し出すと子供は怪訝な顔をし

親の方がコレは自分たちは食べないと言って笑う

成る程、火の通った肉は僕らに炭を食えと言うのと同じことかと納得し

じゃあこっちと捌きたての豚の腸を見せると喜んでかぶりついていた

僕はお祝いだからお金は要らないよと言うとゴブリンは僕の胸を突く

腸を遊ぶように食べる子供をみる親ゴブリンはところで此処は何の店なのかと僕に聞くのでお酒を飲む所だよと答えた

ゴブリンは日が暮れてすぐ酒を飲むのかと呆れ

僕は笑って自分たちは日が昇っている間しか働かないと言うとゴブリンはそうだったごめんと笑った


僕は今度夜に家族で来てと言ってサービス券を渡した

それをみてこれは何と聞かれたのでお酒がひとり一杯タダになる札だと言うと、コッチには子供もいると笑われた

果実水もあるよと言って僕も笑った



また幾日かすると繁盛がひと段落し、あとは閉店だなと言う時間にゴブリン達がやって来た

まだ居座って飲んでいる酔っ払い達はゴブリン家族を見てギョッとしたが

そこは酔っ払い、こっちへ来いと言ってゴブリン家族を座らせ酒を振る舞う

ゴブリンは子供もいると嫌がったがそこは酔っ払い、ガハハと笑い果実水を持って来いと言って楽しげに酒を煽った


僕はうるさくてごめんねと謝るがゴブリンはエルフに比べればマシだと笑い酔っ払いから渡された酒を飲んだ

色々話してみると、それまで母親だと思っていたゴブリンは実はお婆ちゃんで泣いていた子供は孫だと知らされ驚き

若いねと言うとやだよと照れていた


何を出せば良いのかわからず一緒に厨房に来てもらうと、これとこれといった感じで生物ばかり指差し

他に蜜や果物、それに野菜を選んで家族で食べ始めた


そろそろ閉店かなと言う時間にシャンがやって来て、何だ?こんな時間に繁盛してるなと言ってゴブリンを見た

シャンは暫くゴブリンを見ると何だ泣き虫じゃねーかと笑い針を探すふりをしてゴブリン達を笑わせた

ゴブリンは医師がお前の連れ合いだったのかと驚き、僕が返答に困る様子を見て察してくれた


シャンに事情を話すとふーん良いんじゃねえのと言い、お酒を持ってゴブリンの横に座わる

明日は休みだし飲み明かすかと言って笑った


暫くすると薪の配達を終わらせたゴブリン達がゴブリン一家の声を聞きつけ店を覗いた

それを見たゴブリンのお婆さんは仕事中だろうと睨みつけ、ゴブリン達が仕事帰りだと言うのを聞いて手招きした

それを見る僕の顔を見てシャンは

お前のロクでもねえこと思いついただろうと笑い果実水を飲んでいた



朝か夜かと言う時間に閉店だよと言うとゴブリン達は朝はこれからなのにと惜しそうにしていた

だから僕はゴブリンのお婆さんに声をかけて見た

君たちの時間にこの店で商売をして見ないか、この街で夜中に働くゴブリン相手の商売を一緒にして見ないかと

お婆さんはうーんと悩み若い女のゴブリンに何事かを聞き、空瓶で遊ぶゴブリンの子供を見て、毎日じゃなければ手伝っても良いと答えてくれた



最初は御近所にキミ悪がられたが

根が真面目で勤勉なゴブリン達は盗みや騒ぎを起こすこともなく

聖敵騒ぎで手にした大金を使い店を広げだこともあり、いつの間にか僕の店は【ゴブリン酒場】と呼ばれるようになり、日が沈むと人間が酔い、夜がふけるとゴブリン達が仕事帰りに一杯引っかける店になった


役人に門で貸し出されている声石をひとつどうにかならないかと聞いたが断られ

スズに頼み声石をひとつ手に入れ、お婆さんに渡し店を手伝ってもらっている

酔っ払い達は声石など無くても問題無い

空いたグラスを指差しお婆さんに呆れ顔でもう辞めとけと言われる程度には意思の疎通は取れるのだ


むしろ僕がそれを必要としていて

君たちは何を食べるのか

何を用意すれば良いのか

どれ位必要なのか

そんな事を毎日の様に聞いてはお婆さんにゴブリンの稼ぎを全部吸い上げる気かと笑われた


僕は近所に部屋をひとつ借りそこに寝泊まりする様になり

ゴブリンの時間になると店を任せてそこに寝に帰る

昼過ぎに目を覚ますと窓から放り込まれた店の鍵が毎日ちゃんと転がっていて

わざわざ届けてもらうのも悪いと思い合鍵をお婆さんに預けることにした


そんなある日

朝早くに戸を叩く声で叩き起こされ

隣でうるせえと呻くシャンに蹴飛ばされ戸を開けてみると、役人と正堂隊がすぐに来いと僕を引きずり店に連れて行かれる


慌ててついて来たシャンと二人店に着くと、お婆さんと二人のゴブリンが役人に囲まれ一人の男が泡を吹いて倒れていた

僕は焦り役人に話を聞くが、どうやら強盗騒ぎがあったらしくその取り調べを受けている様だった

お婆さんは僕を見ると力こぶを作って見せ役人にたしなめられていた


役人にお前が雇ったゴブリンに間違いないかと聞かれ間違いありませんと答え

危ないことはよせと言っといてくれと言われゴブリン共々解放された

話を聞けば強盗だとの声を聞いた声石を持つお婆さんが、客の若者二人を連れ強盗を取押え絞め落としたらしい


邪魔をして悪かったねとお婆さんはシャンと僕ををみて謝り、そのうちもっと大きな家をあんたに建てさせてやるよと笑った


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