二十二話(お)
王都から戻り
正式に貴族となった私は、まず白姫様にご挨拶に向かいついでにヒバナ殿を探す
後に皆からいやそれは逆でしょうと笑われたので私の貴族としての最初の仕事はお前の首を落とすことになるぞと脅す
脅しておるのにおおこわいと笑われてしまった
結局白姫様にヒバナ殿を呼んで頂き
ヒバナ殿に小言を言われる
「お前は私を何だと思っているの?家来かなんかだと思ってるんでしょ」
「いえ!むしろ私が貴女の家来であればと思います!」
「ああもう、私明日お見合が有るからあまり遅く迄は付き合えないわよ」
「はい、どうしてもヒバナ殿に会ってお伝えしたい事が有ったのですが、たった今それどころでは無くなりました」
「なに?」
「逃げましょう!」
「はぁ?」
「五年、いえ一年で構いません!私と逃げて下さい!」
「嫌だけど」
「ヒバナ殿ぉ!」
「明日お見合だって言ったじゃん」
「だからです!」
「何で?お前がひとりで逃げなさい、なにから逃げるのか知らんけど」
「ヒバナ殿こそ何故そのような大切な事を今日まで黙っておられたのか!」
「何でお前に言う必要がある?」
「ヒバナ殿ぉ」
ヒバナ殿はあーうるさいとぼやき
姉に言われて役所勤めの男とお見合するだけで、私達と違ってお見合したらそれと結ばれる訳じゃないと仰られ
私がそうなのですか?魔法使いの国ではそうなのですか?と聞くとメンドくさそうにそうなのですよと返された
「それを聞き安心しました、確かにヒバナ殿と木っ端役人とでは釣り合いません」
「いや、土木課の偉い人だから期待してるけど」
「土方の役人などいけません!」
私は脳天をど突かれ要件を早く言えと叱られる
「そうでした、ヒバナ殿、一時で結構です、御同道下さい」
「いや仕事中だし」
「半時で構いません!」
「だからか仕事中」
「お手間は取らせません!」
「既にお手間なんですけど」
「姫騎士ぃ!」
ヒバナ殿はあーもう分かったと仰られ仕事が終わるまで待っていろと言って戻られ
私は迎賓館の受付でリン嬢に部屋の片隅を借りヒバナ殿のお仕事が終わるのを待った
「シミンはあの女の何処がそんなに良いの?直ぐ怒るし煩いし人の事馬鹿にするし」
「総てだよ」
「見る目ないね」
「そうかな?」
リン嬢のお喋りに付き合ううちに日が落ち
受付にいらっしゃったヒバナ殿を連れ私の屋敷へ向かい
リン嬢は夕食と風呂を頂いてから帰るそうでヒバナ殿に挨拶もせず迎賓館へ向かった
「中々元気のいい娘で」
「ああ、飽きるまでやらせとけば良いんじゃない?」
ヒバナ殿は気にした様子もなく私の屋敷へ向かう
「ところで何でこんな外れに屋敷建てたの?」
迎賓館の直ぐ裏手の土地を頂き、そこに建てた私の屋敷を見てヒバナ殿は呆れたように仰る
「少しでもお側にと思いまして」
私が胸を張ると、ヒバナ殿は私が主人様なら不敬罪で殺してやるのにと仰られ
私がスズ様はその様な方ではありますまいとお答えすると、いやスズさんじゃ無くて、まあ良いやと我が家のように私の屋敷の扉を開けられ、絶句された
「なんであんた達がいるの⁈」
私はヒバナ殿の素っ頓狂な声にしてやったりとほくそ笑む
「ミップ!モッチ!それにジジとババにジャリどもまで!」
私は驚くヒバナ殿の前に立ち胸を張る
「貴族として使用人を雇いました」
姫騎士はこめかみを押さえて呆れ
最悪だと呟き
ジジとババは女らしく成られたと姫騎士の袖を持ち涙を浮かべ
ミップは年老いた二人を抱えようやくお会いできましたなと嬉しそうに涙を流し
モッチはやっと定職にありつけましたと言って姫騎士を取り囲み太っただの肥えただのデブだのと叫ぶ子供達と同じように腹を抱えて笑い嫁に叩かれた
「しょくじのよういができた」
うるさいぞと使用人のゴブリンおばばが手を叩き、私達を食事だと手招く
モッチの子供達はゴブリンだと言って今度はおばばを囲みおばばは子供達を猫のようにつまみ上げ放り投げた
「しつけがなっていない」
「本当だ」
呆れるおばばにそう答え
ヒバナ殿は今日は出直す、今度ゆっくりと話があると怖い顔で言われ立ち去られた
私は今日はその顔が観れただけだ満足ですと言って見送る
さて、これからが大変だ
これまでは住み込みのおばばと正堂から通いの女中が二人、合わせて三人分の給金を払えばよかったがこれからはそうはいかん
これは一層励まねば
なんとしても此処にヒバナ殿をお迎えするのだから
嫌が応にも盛り上がる
「モッチもミップもおばばの言うことをよく聞いてくれよ、私の使用人で一番偉いのはおばばなんだからね」
ミップとモッチはへぇと言った顔をし
ジジとババ、それにモッチの嫁はペコペコとおババに頭を下げ
子供達は猫のように投げられて転がされては喜声を上げて駆けよってを繰り返す
「はやくせきにつけ」
「そうだね」
私は皆を連れ夕食の席へ向かう
姫騎士は帰ったが今日は楽しい食事になりそうだ




