二十話
“ワンワン!キツネです!あ!キツネが鳥を襲いました!ん?まあ!子狐です!子の糧を狩っていたのですね、可愛らしい”
私は道々ワンワンから取り上げた双眼を使い野鳥や動物の観察を楽しむ
ワンワンはああそうだなあとか
ああキツネだなあとあ言うだけ
シジュウ様もお茶や食事の時以外は黒仮面をなさったまま
キイはサゴの上で揺られながらイビキをかいていた
「ところでスズ」
“なんです?”
「あれはいいのか?」
何かしらと思い双眼を下げ、森から視線を外し驚いた
“なぜ黙っていたんです!”
「お前が何も言わんからな」
視線の先には青い旗と見たことのない旗を立てた軍勢が街道をこちらへ向かい進んでいる
「私としては此処らでひとつ軍議をした方がいいと思うのだが?」
ワンワンは肩にゴミが付いているぞとでも言うようにそんな事を言う
“間に合うのですか!”
「さあ?」
ワンワンは面白そうに笑い
それではおふくろ様と言ってシジュウ様に声をかけ、ゴーレムが背負う荷物の中から折りたたみのテーブルを用意させた
「それでは御大将、こちらへ」
ワンワンは嬉しそうにゴーレムの腕の上で双眼を構える私を呼んだ
物見は出すだけ無駄なので数を頼りに進軍を続ける
ドゥクディモ公は忙しく駆け回り動揺する兵達を落ち着かせていた
こちらは五万を超える大軍だ
魔法使いやゴーレムなど踏み潰すまでだと
レーダの街につけば三日は略奪を許そう
あの街には世界中から魔法使いが集めた金貨が溢れているぞ
兵達は公の唱える甘い言葉に随分とやる気を取り戻している
まあ大丈夫だろう
いざとなればダリトゥディモの軍もこちらへ向かうことになっている
合わせて十万だ
これに挟まれれば魔法使いとて流石にひとたまりもあるまい
そんな事を考えていると急に隊列の動きが止まる
なんだ?橋でも落ちたか?と街道を外れ前に進むとそれは有った
そこにあろうはずのないものが有った
竜の群れを率い
王国のストーンゴーレムかと思うほどの黒い巨大なゴーレムが四体も並び
その腕の上にはこちらを見下ろす女
その女はゴーレムの腕の上で此方に向かい優雅に一礼して見せゴーレムから降りた
「槍を立てろ!陣を敷け!騎馬は並べ!弓引け!」
私はあらん限りの大声で叫び回り
低い丘の上で此方を見下ろす竜とゴーレムを見上げた
襲ってくる気配はない
かと言って先鋒だけでアレをどうこうできるものか
捨身で引きつけ時間を稼ぎ本隊を待つべきだ
そんな事を考え、それでは私の命はないなと苦笑いをするが、ふとおかしな事に気がつく
「何をしているんだ?」
周りの兵達も私同様気がつき始めた
「あれは一体」
「ああ、見ての通りだろうよ」
竜の群勢を引き連れた女は、丘の上でテーブルを用意させ茶を飲み始めたのだ
「何をしていた?」
“目があったので挨拶を”
ゴーレムから降りた私はシジュウ様が用意してくださったお茶を飲み心を落ち着かせた
一息入れ黒仮面を外されたシジュウ様にワンワンを折檻してくださいと訴えたが、お前のためにやっているのだから許してやれと笑われる
「残念だったな、今日は毛を毟らせんぞ?それでは軍議だ」
ワンワンは笑いながらテーブルの上に紙を広げる
「今、私たちがいるのがココだ。そしてお前が相手をするドゥクディモ軍、ああ、そこに居る彼奴らがコレだ」
ワンワンは二色の菓子をそれぞれに置き私に説明を始めた
「そこに居るのは先鋒と言って、本隊はもう少し後から来る」
ワンワンは色の濃い方の菓子をドッサリと少し離れたところに積み上げる
「まあ、先鋒の指揮官が余程の馬鹿でない限りこの状態で向こうからは仕掛けてはこん。なにせ此方は竜百匹の大群だからな」
笑うワンワンを泥人形でしょうと睨むと大丈夫だよとまた笑う
「私としてはドゥクディモの諸君が揃うまで半日なり此処で待ち、それからだと思うが、スズはどう思う?」
“待つとどうなるのです?”
「取り囲まれる」
ワンワンは菓子の山をグイッと動かす
“ダメではないですか!”
「安心しろ、この泥人形を前に押し出すだけで終わる。だがそれではお前の為にはならんだろう?キイも居るのだ、お前の思うように動かせ」
ワンワンは色の濃い方の菓子を器用に並べる
ドゥクディモはこう布陣するぞと言いながら
“まるでお椀を被せられるようです”
私はその形を見て呟いた
「大軍を持つ場合は敵を囲みすり潰す、これが常道。寡兵ならば後先無く敵の心臓を目指す」
“では此方はドゥクディモの大将を狙うのですか?”
「いつから此方が寡兵になったのですか御大将?」
ワンワンは面白そうに笑い、寝ぼけまなこのキイがなんの話だと横からテーブルを覗いた
「御大将、私は百万の蛮族に勝てる備えを御用意致しました、キイと歯車、それに泥人形。囲みすり潰すのは此方です」
ワンワンはなあとキイに話しかけ、寝ぼけたキイは、はあと生返事をする
“訳がわかりません!”
私の言葉にワンワンは、まあ追々なと楽しそうにするばかり
私はワンワンが綺麗に並べた菓子の真ん中かをひとつ摘み口に放り込み
ワンワンはそれを見てまた笑った
本隊や聖堂隊が到着するにつれ陣には余裕が戻ってきた
中には竜退治だななどと言い出すものもいる
ドゥクディモ公も最初こそ驚いていたが今は落ち着きを取り戻していらっしゃった
「動かんな」
誰かが白い旗を掲げた竜の群れを見て呟いた
確かに、程なく日が暮れる
余程自信があるのか
夜を待っているのか
夜戦はマズイ
混乱するのは多勢の此方だ
かと言って今仕掛けるのも
此方から仕掛けるならば夜明けだ
今夜はひたすら嫌がらせを続け相手を疲れさせねば
「と、いう訳だ、なので今夜は一晩中泥人形に吠えさせキイが借り受けた歯車に雷を落とさせる」
“煩くて眠れません”
「盾どもの宴会の方がうるさかろう」
ワンワンは楽しげに笑うと、ほら今夜の宿が出来たぞとシジュウ様とキイが広げたタープとその下に用意されたハンモックを指差した
こんな場所でなければ喜んだのだが
「夕食は戦さ場を味わえるものにしましょう」
シジュウ様はゴーレムから炊事道具を下ろす、コレも楽しげだ
キイはサゴの世話
私は先程から摘んでいたテーブルの上の菓子を眺めた
ほとんど食べてしまったなぁ
ワンワンも私の視線に気がついたようで
「まあ、最後はそうなる」
よくわからないことを言って頷いた
テーブルの上の菓子を全部食べたのがどうだというのだろう
大きなお皿に色々な料理が少しずつ乗せられ、スープとお茶も用意された
ワンワンはこれは少しお上品だなと笑ったが私はシジュウ様と行った最初の保養地を思い出し、シジュウ様にまた《輝》に行きましょうと声を掛けた
シジュウ様は少し懐かしそうに笑い、ワンワンも一緒にどうですと仰る
あそこは何もありませんからなぁと乗り気でないワンワンを私は睨み
キイは私もついていくかなと何処から取り出したのか酒を飲みながら料理をつついていた
ハンモックに揺られながら辺りを眺めた
誰かに言ったことはないが、私は御屋敷のお世話になって以来、いつの間にか夜でも物が見えるようになっていた
主人様の御加護なのだろうとは思うのだが、夜でも闇のない御屋敷では特に役立つ事がない
しかし今日はとても役に立つ
“ワンワン、アレは何?”
「ん?ああ、オコジョだな。小さいが肉食だ」
私のハンモックの下あたりで寝転がるワンワンが答える
“ワンワンは何でも知っているのね”
「何年生きたと思っている」
ワンワンは笑い
シジュウ様に早く寝なさいと怒られてしまう
“ねえワンワン”
「何だ」
「アレは?」
「アレは兵隊だな」
“弓を引いています”
「引いているな」
“放ちました”
「ああ」
飛んできた弓はシジュウ様に掴まれそのまま焚火へ放り込まれた
“あ、泥人形のトカゲが兵隊を食べた”
「ああ、見張りもやらせているからな」
“泥人形なのに食べるのですね」
「一応な、食べたぶん大きくなるぞ」
“面白い”
シジュウ様が早く寝ろと咳払いをされ私は目を閉じた
竜が吼え大蜥蜴が走り回り稲妻が走る
ここは地獄かと思いたくなるような光景だ
ある者は夜空に天使を見たと言うが然もありなん
この様な光景を見れば天使の一体や二体見えてしまうというものだ
暗殺闇討ちに幾人か向かわせたがおそらく帰ってはこまい
魔法使いめ
日が昇りさえすれば組み上がった投石機や弩砲で竜ごと葬ってくれる
賢人達に用意させた火球砲も雨の様にその頭上から叩きつけてやる
毒矢もだ
竜から身代金など取れんからな
見ていろ
間も無く空が白む
ハンモックをゆらゆらと揺らされ、もう!と手を払う
「早く起きなさい、片付きません」
ワンワンかとおもい乱暴にシジュウ様の手を払った事に驚き飛び起きる
“申し訳ありません!ワンワンかと思い”
「分かっています、早く起きなさい」
シジュウ様の手を借りハンモックから降り
辺りを見渡す
“まだ夜です”
シジュウ様は戦さ場の朝は早いものですと仰られ、私の身なりを整えて下さる
私が折角のハンモックでしたが少し体が痛いと言うと楽しげに笑われ、さて行きましょうと仰られた
テーブルではワンワンとキイが戦装束に身を包み私を待っていた
「炊事の煙は戦の狼煙」
ワンワンがそんな事を言って私を席へ誘う
私が席につくとシジュウ様は皆の前に湯気の立つ茶とケルビルストを並べた
“コレだけですか?”
質素とは言わないがシジュウ様がいらっしゃって朝食がコレだけとはと少し寂しく思っているとワンワンが、手早くあまり腹にたまらずそれでいて暖まるのが良いんだと笑い私のケルビルストにトマトソースをかけた
ソーセージもそれを挟んだパンも暖かく茶をも程よく甘い
キイは茶だけを飲みワンワンは二口でケルビルストを食べるとグイと白湯で流し込む
簡単な朝食が終わるとワンワンが嬉しそうに、主人様から何か御言葉は頂いているかと聞かれ、気をつけて行って来いとあとワンワンを頼れとの言葉を頂きましたと答える
ワンワンは笑顔で何とお優しい、何としてもお前に千年語られる戦をさせねばなと稲妻や泥人形の咆哮に怯えるドゥクディモ達を見た
「して御大将、策をいただけますでしょうか」
ワンワンは私に跪きキイもそれに続く
“何度も言いますが私は戦の事など何も分かりません、ただ主人様と御屋敷が安らかで有ればとは思います”
ワンワンは私の言葉に嬉しそうに頷く
「よく言ったスズ、その言葉万策に勝る!ならば安らかに有れと命じられればこのワンワン、主人様の拳としてその使命を果たそう!」
ワンワンは優しい顔のままキイの事を【狂人】と呼び、申し付けた
「お前に後ろは無い!拳が盾に申付けるはただ進めのひと言!」
キイはその言葉を受け満面の笑みで答える
「この【狂人】、眼前の敵をすり潰す事にこそ快楽を覚える身、戦さ場に生まれなかった事を呪う日々、どうぞお申し付けください、この世に地獄を見せろと」
ワンワンは頷きキイは言葉を続ける
「ワンワン様には少し真ん中に隙間を空けV字に泥人形を押し出して頂きたい。シジュウ様、今日の天気は?」
「曇りです」
キイはシジュウ様の言葉を聞き最高だと笑った
「スズ、本陣の守りにはワンワン様を残す、全軍の九割八分だ、お前はそこでシジュウ様と荷物持ち達と共にゆっくりと見守っていてくれ」
キイは金棒をヒョイと担ぐとサゴの背に立つ
「そうだスズ、ワンワン様は夕べ一晩中お前の身を守っていたぞ、礼でも言っておけ」
キイは宙を歩き始めたサゴの背の上で私にそんなことをいってウインクをして見せた
稲妻がおさまると竜の軍勢が夜明けとともに一斉に動き出した
私はこの時を待っていたぞとばかりに声を上げる
「怯えるな!」
投石機と弩砲に指示を出す
「放て!」
万全の準備と一晩ためにためた鬱憤を乗せ岩石と矢が飛び
幾本もの矢が竜に深々と突き刺さり石は竜の彼方此方を砕いた
みたか!
私は叫び兵達は歓声を上げた
だがどこかおかしい
竜はほんの一瞬歩みを止めると、盛り上がる様に砕かれた身体のあちこちが修復され、矢は身体の中に飲み込まれた
竜は何事もなかったかの様に二手に別れ、此方の左右へ向けて突き進む
「ひるむな!放て!粉微塵に撃ち砕け!」
竜の群れに向けて投石が続き、大きな石を受けた小振りな竜が吹き飛び兵達から歓声が上がる
しかしカケラとなったその竜は湧き出る様に身体を取り戻し進軍を続ける
「不死の竜だ!冥界に住む不死の竜を魔法使いが連れて来たんだ!」
私もその光景を目の当たりにし同じ事を思う
空には厚く雲が蓋をする
冥界の者を苦しめる陽の光は望め無い
「魔法使いを殺せ!奴が居らねば竜はこの世に留まれん!」
魔法使いめは余程の自信があるのか己の前には竜を置かずかかって来いとばかりに道を開けて待ち構えている
罠で有ろうが構うものか
兵は友の屍を越えて進むものだ
「騎馬は続け!兵は槍を持ち走れ!目指すは魔法使いめの首ひとつ!」
兵達は竜への恐怖から逃れるため、僅かなゴーレムに守られた魔法使いの本陣を目指し駆け出す
後続も間も無く続くだろう
ドゥクディモ公本陣へは竜は不死身と伝令を走らせた
全軍を上げて魔法使いめを
あの丘で茶を啜る小娘の首を
それでも死なぬので有れば細切れにして灰になるまで燃やしてやる
魔法使い目がけ駆ける私の耳に音が響く
カツーンカツーンと蹄の音が
天から降り注ぐ様に
それは戦場に響く怒号や喧騒の中ハッキリと耳に届く
「まやかしだ!魔法使いめの術だ!惑わされるな!」
己に言い聞かせる様に叫び
兵達と共に魔法使いへと迫る中
先頭を掛ける騎兵達に糸の様な光の雨がパラパラと降り注ぐ
そして私は言葉を失い
兵達は目を疑う
光の雨を浴びた者は粉になり掻き消えてしまったのだ
「ようこそ!地獄の入り口へ!ここからは地獄の住人、この【狂人】と九十九の天からの使者が諸君らのお相手だ!楽に死にたい者はすぐに戻り竜に挑め!私に悲鳴を聞かせてくれる者はさきへすすめ!」
声の聞こえる方を見上げると、天馬とその背の上に立つ、まさに地獄から来たと言わんばかりの浅黒い肌をした女が此方を見下ろす
「惑わされるな!射殺せ!」
私の言葉を受け兵達が女目がけ弓を射る
風を切り突き進む矢は突然天から投げつけられた光の壁にかき消された
「天の使者と言ったが聞こえなかったか?」
浅黒い肌の女が笑う
そして雲が割れ
その羽から光を撒き散らし
暗黒の輪を頭上に浮かべ
白磁の鎧を纏った
天から使者
「もう一度言おう、九十九の天使がお前達の相手だ」
雲を切り裂き次々と舞い降りる破壊と殺戮の使者
愉快そうに両手を広げる浅黒い肌の女
「竜か天使か、はたまた私か、好きな死に場所を選べ」
“ワンワン、アレは?”
私はキイが引き連れ目の前に現れた、昔語りに出てくる、この世の全てを焼き払う天使に良く似たモノを指差す
「ああ、空の歯車だな。お前達は天使とか呼んでいるのだろう?」
ワンワンは天使を眺め続けた
アレはシジュウ様の操るゴーレムのひとつで空やその先まで飛び
光の羽も空を飛ぶためのものではなく私が息を吐く様なもので
吸い込んだ空気から何かを使い残りを吐き出す時に出る残りカスがあの様に見えるらしい
「まあヒトの形をしているのはおふくろ様の御考えで、そもそも争いに使うものでも無いそうだが」
黒仮面のシジュウ様を見ると
あれは星の海を泳ぐために造られたと仰り、まあお前の初陣なのだからこれ位はと仰られた
天使の体から無数の光の雨が放たれるとそれを浴びた者は粉になり掻き消える
それが視界いっぱいに繰り広げられ、
また二手に別れた泥人形達はその先で好き放題を繰り広げる
私はその光景を見てホッと胸をなで下ろす
「御大将、それはまだはやいぞ。奴らとて無能では無い、迂回し此処を目指すものや我武者羅にあの地獄を駆け抜ける者もいる」
ワンワンは蹴散らされるドゥクディモ兵達を見たまま片手を横に伸ばした
其方には数騎の騎兵が槍を持ち此方を目がけて駆けている
ワンワンは伸ばした手をばっと開き直ぐにグッと握った
一体なんだろうと思い駆けてくる騎兵の方を見直すとそこに彼らの姿はなく赤黒い何かが撒き散らされていた
「さて御大将、本陣を少し前へ押し出しましょう」
ワンワンがそう言って笑うと荷物持ちのゴーレムが腕を下ろし、私がそれに腰掛けると別のゴーレムはテーブルを抱えその後に続く
「さて、あの青い旗の立つあたりまで行くとしよう、【狂人】!御大将が進む道を真紅に染め上げろ!」
ワンワンの言葉を受けキイは天空に舞うサゴの上で仰々しく頭を下げ、そこから飛び降り金棒を振り回す
キイが金棒を振り回す度に赤黒い何かが飛び散り悲鳴や奇声が響いた
レーレン嬢の内通もあり国境を越えるのには苦労もなく、ハンディ軍の背後を取った時などは勝利を収めたと思ったものだ
しかし半生半死のイッディモ軍を押さえ素早く反転し此方に向かってくるハンディ軍の姿は流石と唸った
魔法使いの率いる竜達を見た時は腰を抜かし死にたくなったが、古来竜退治の逸話には事欠かん
兵を備えさせ罠を張り巡らし待ち構えた
竜に加え空を埋め尽くす天使の群れが現れたと聞くに至りこれはマズイとなったがまだ手はある
魔法使い一点に狙いを絞りひたすらに攻めかかるのだ
これではまるで寡兵の戦だがそれしか手が思いつかん
まだ勝てる
そう思っていたのだが
「初めまして、私は大森林の魔法使いが僕にして《館》の娘、スズと申します」
目の前の女が名乗りを上げ軽い会釈をして見せた
私は手にしていたサーベルを放り投げると紳士らしく応えて見せた
「これはご丁寧に、私はドゥクディモ公国大公ドゥクディモ=フショウと申します」
私は社交界で身につけた満面の笑みでスズ嬢にお近づきの印にと降伏を申し出た
スズ嬢は魔法使いとは思えぬ朗らかさで、ではそうしましょうと笑い
控える狂犬の如き獣人は、では茶の支度でもと流暢に喋る
浅黒い肌のエルフは私が全幅の信頼を寄せていた黄金騎士団だった物を満面の笑みで金棒を使い潰すのをやめ
二人の4本腕で全てを打ち倒す女はその手で釣り上げていたいた聖堂隊の生き残りを放り投げた
「茶ですか、いいですな。しかし此方にはそのご用意が」
魔法使いのスズ嬢はご安心下さいと言い、火球砲の直撃にもビクともしなかった巨大なゴーレム達に茶会の準備をさせる
さて、国中の黄金を差し出せば命くらいは助かるか?
ああ、魔法使いは銅を喜ぶと聞くな
では国中の銅も銅貨も搔き集めるか
私は先程からこの聖敵めとうるさく騒いでいた聖堂隊長はどこに行ったのかなと思いながら魔法使いのスズ嬢が差し出した茶を受け取った
なんだ聖堂隊長そんな所で寝ていては風邪をひくよ?
気をつけたまえ
魔法にかかれば死体だって風邪をひくかも知れんぞ?




