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大森林の魔法使い  作者: おにくさま
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十八話

「父上、随分と落ち着いていらっしゃいますね」


「ああ、勝てるからな」


「相手は手負いとは言え二万を超えると聞きます、対して我が方は王が三百、領主殿が千、正堂隊は数に入れていいものか」


「イッディモはもっと増えるぞ、日和見を決められんせっかちが集まる」


「ヒバナ殿もなんとか言ってください」


「うるさい」


「ヒバナ殿ぉ」


息子は何とも情けなく怯えて居るが

私は恐怖など微塵も感じない


敵は二万

こちらは千五百

普通にやれば負ける


しかし今、我々は安全な森の中を抜けている

イッディモの連中はこれが出来ん

エルフに阻まれ近寄れん


次に我らにはヒバナ殿が居る

一人千軍と言われた方だ

それにヒバナ殿が寝転がる荷車を引くこの魔獣

白姫様のお話では、出会った頃はひ弱な仔犬だったが魔獣をおやつ代わりにかじらせているうちにこの様になったと言われたいたが

確かに魔獣は母犬らしいそれこそ仔犬の様ななりの犬の言いなりなのだが

この二頭の魔犬も頼もしい


それに御屋敷よりヒバナ殿に貸し出された二体のゴーレム

コレも街の噂では千人に匹敵する聞く

つまり我々は五千の軍勢と変わらんのだ


傷つき見知らぬ敵地で怯える二万など恐れるものではない


「ヒバナ殿、この魔槍ですが、あのバーっと敵をなぎ倒すアレはどの様に」


息子はヒバナ殿から贈られた魔槍を抱えアレができればと自分を奮い立たせ

ヒバナ殿に教えを請う


「え?お前には無理」


「そんな!」


「まあ頑丈で軽い槍だと思って頑張れ」


「そんなぁ!」


ヒバナ殿は荷台の上で果物をかじり寝転がっている


息子は今度は私に寄って来た


「父上、父上は昔から御聖堂がお嫌いでしたよね」


「ああ、奴らと一戦と聞いて笑いが止まらん」


「なぜそこまで御聖堂を?」


「うん、お前にはまだ話してなかったな。私がお前くらいの頃、母ではない女と恋に落ちてな。その人が子供を身篭ったのだが生まれつき病弱な人でな、出産の折何度も祈ったのだが、彼女もその子もこの世のものにはなれなかった。それは仕方がない、命とはそう言うものだ、だが私が心の救いを求めに行った聖堂の連中はなんと言ったと思う?『そんなものだ』そう言ったのだ。勿論もっとそれらしい言い方だが奴らはそう言ったのだ。彼奴らは人の道など説いてはいるがその実は青い石ころを有難がらせ自分達は偉いと思わせているだけなのさ。ある日その事を姫騎士・・ヒバナ殿だな、ヒバナ殿に話したのだが、ヒバナ殿はしっかりと答えを持っていた。私が至らぬから戦に負けたのだと、身体が弱い女と知っても求められれば抱く、そうなれば後はどうなる、わからぬではあるまい?きっと大丈夫とでも思ったか?お前がその女をお前の欲望から守ってやれるほど強く無かったからお前はその戦に負けたのだ。そう仰られてな、清々しいまでに叩きのめされたよ。だから私は石ころを拝む奴らなどより一人の騎士を信じている」


「あの、父上」


「なんだ?感動したか?」


「私は父上が私の今の年頃の頃はもう産まれていたのでは」


「ん?ああ」


「それは不貞では」


「そうかもしれんな、しかしお前もその人にあやされていたぞ」


「は?」


「お前の母には姉がいた事は知っているか?」


「まさか、父上?」


「色々有るのだ、父にも」


「ヒバナ殿!父を叱ってやって下さい!」


「良いんじゃない?別にちゃんと好きだったんなら」


「ヒバナ殿ぉ、いやしかし御安心を、私はあなただけと心に決めております!」


「お断りします」


「ヒバナ殿ぉ」


私達の戯言を聞く王が声を出して笑う

まさか姫騎士がこの様に愉快な方だったとはと


「さてここらで小休止といきましょう」


慣れぬ道で兵達は疲れ聖堂隊などヘトヘトだ

道案内のエルフが呆れた目でそれを見る


荷台の上のヒバナ殿は息子を呼び、道案内のエルフと騎士の半分は見張

兵と残りの騎士はこれ食べて半時休憩と言いつけた

息子は渡された袋を覗き込みコレはと聞く


「干しぶどうとブドウ糖、水もケチらず飲ませておいて」


ヒバナ殿はじゃあ任せたと言って魔犬供に果物を与え自分もそれをかじった


「父上、干しぶどうは分かるのですが【ぶどうとう】とは何でしょう?何か白い四角い物なのですが」


「いや、分からんが名前からしてブドウの類だろう」


息子は、はあと生返事をすると兵達にそれを配って歩き、最後に私と二人それを口にした


「ヒバナ殿、コレは一体?砂糖の様なものでしょうか?」


私の問にヒバナ殿は魔犬を撫でながら元気になる薬と答える

息子と二人顔を見合わせ首を捻った


半時が立ち見張を変わり、残りの者達を休ませる

息子はそそくさとヒバナ殿に近づく


「ヒバナ殿」


「何」


荷台上で相変わらず横になるヒバナ殿


「その御召し物はその、きつくはないのでしょうか?」


「太ってるって言いたいの?」


「いえ!けして!ただ余りに」


「コレはジャージ、運動着よ、とでも楽」


「はあ、な、なるほど!だから草むらに紛れてしまう色なのですね!」


「お前何もわかってないでしょ、あとダサい緑色って言いたいの?」


「いえ!森を表す緑に白の御屋敷を示す白線、見事な戦装束です!」


「なんかすんごくバカにされてる気がする」


「いえ決して!それに私は今のヒバナ殿の御姿に母性の様な美しさを感じます!」


「あんたそれ褒めてないからね」


私は息子とヒバナ殿の馬鹿話を楽しみ鋭気を養う

間も無く森を抜ける

そうすれば最早敵中だ

素早く駆け抜け的の横腹を蹴り飛ばす

それが出来ねば私は無能だ

あとは正堂隊の諸君が落ちこぼれなければ良いが






魔法使いの軍勢がレーダの街を出たと言う話とまだ出ていないと言う話

その両方が我がイッディモ軍にもたらされている

仮に軍勢が向かっているとしても到着は明日以降だろう

それに街道を来るのだから真っ先にぶつかるのは先鋒隊だ

本隊の我々はまだ焦る必要はない


ここ二日、蛮人の闇討ちが続いたが私には寝不足以上の被害は出ていない

勿論死人も出ているが私には関係ない

ああ眠い


ところであんな所に陣取るのは誰だろう?





まさか蛮族同士の戦に首を突っ込む事になるとは

まあシジュウ様の言いつけだし

姉さんにもしっかり働いて来いって釘を刺されちゃったし

それに面白い歯車を貸していただいたから


それにしても不用心ね

簡単に横を取ったわ

それじゃあ始めましょう


それとこのセン様が貸してくださった大樹の枝

こんなの使って平気かしら?





寝ぼけたまなこにハンディ王家の旗と魔法使いの白い旗が飛び込む

見知らぬ貴族の旗も立つがそれはどうでも良い


私は声を上げる

敵襲!敵襲!と


手際のいい騎士達がハンディの旗めがけて駆け出し

賢人達が刃の雨を叩きつけた


そして騎士達は馬ごと細切れになり

賢人の作り出した刃の雨は全て砕かれた


なんだ

なんなんだアレは






おー凄い

さすが御屋敷の歯車

近づく蛮族と半端な魔法もどきを散弾で一蹴だ

おっかないね


シジュウ様からお借りした両腕が銃火の歯車は、その肩に有る散弾砲を使い目の前の蛮族を掃除してしまった

そして今度は目に見える蛮族を片端から銃火で消し飛ばし始める


「ヒ、ヒバナ殿!コレは一体!あの光る矢は一体!」


シミンの坊やが銃火を見て腰を抜かす


「空気を発光するまで圧縮して打ち出しているのさ、あれに当たれば消しとぶ」


私の話を半分も理解できない坊やは、コレが暗い森の魔法ですかと怯える様に呟いた


「さて、手柄を立てるんだろう?私は王様連れてあの見慣れない旗の所に行くからお前はここであのガキ供を守ってあげて」


シミンの坊やは私も行きますと叫ぶが

お前がここを離れたら正堂隊とか言う大層な名前のガキ供は誰が守ると叱り

終わったら褒めてやるからと言って犬を放ち私もそれに続いた

後ろからは王達とケシミ達が続く


銃火にめちゃくちゃにされた蛮族の本陣は悲鳴を上げるばかりで

私が目の前の男を邪魔だと大樹の枝で殴るとその男は消し飛び、その先にいた男達は燃え上がり灰になった


この枝、絶対ヤバイヤツだよね


私は大樹の枝のあまりの魔力に呆れ

その枝をポンポンと叩く

まあ蛮族だから良いかと割り切り枝で地面を叩いた

すると辺り一面が炎に飲まれ蛮族の本隊は半壊する


今日から炎の魔女とか名乗っちゃおうかな





光の矢を背に魔犬を引き連れ駆け抜ける姿はまさに姫騎士のそれであった

違いといえば手にしているものが槍から魔法の杖に変わったことか


王が先頭に立ち敵を蹴散らす

そんな事を企んだのだが姫騎士は敵陣を魔法の杖で焼いてしまった

魔犬達は逃げ惑うイッディモ兵を手当たり次第食い殺している

魔犬に挑む者もいるが槍や剣が通じている様には見えない


さてさてコレではいかんなぁ

もう少し苦戦せねば行かんのだが

恐らく従兄弟殿はこの機会を逃すまい

【世界地図】を使っているのだからこの様を見逃すはずがない

千人もいれば本隊はが消えたイッディモ軍など挟み撃ちだ


しかし本当に頼もしい

お爺様や父上はこの様な思いで姫騎士を見ていたのだろう


ん?正堂隊の諸君が動き始めたか

まあせいぜい戦気分を味わってくれたまえ

お代は諸君らのお命で




ヒバナ殿とゴーレムが開いた血路へ王や父達が雪崩れ込む

此処にどれほどいるのかは知らないがイッディモ軍本隊は最早添え物切りの有様

コレは勝負あった

若輩の私でも分かる

いくら応援が来ようとこの有様は覆せない

近づけば光の矢で砕かれるかヒバナ殿に焼かれるかしか無いのだから

私がヒバナ殿に見惚れていると後ろに控える正堂隊が我らも行くぞといきり立った


「ダメだ!ヒバナ殿から言付かっている!我らは後詰めだ!父達の指示があるまで此処で待つのだ!」


目が血走った正堂隊は今行かねばいつ行くのですと熱り

ついには私の制止を振り切り駆け出す


私は止めねばと思ったが、動いた正堂隊を見たイッディモの一団がこちらに向かって来る


私がやらねば


私は槍を姫騎士の様に構えイッディモ兵達の前に立ちはだかった







「御先祖の気持ちが分かったよ」


私は従兄弟殿にそう呟いた


「魔法使いの力を見てしまうとな」


「それは私も同感です」


案の定王都から打って出た従兄弟殿は散々に混乱するイッディモ軍を打ち破り王都包囲網を引き裂き

潰走するイッディモ軍を追いかけ此処で私と涙の再開と相成ったわけだ


「コレからの方が悩ましく思えますね」


従兄弟殿は焼けた国土を思ったのだろう


「何、私には頼れる貴族諸君がいるではないか」


私の言葉を聞き従兄弟殿は貴方はそう言う人でしたねと笑う

この度の戦だけで言えば損害は軽微だ

開戦からの事を考えても十分取り返せる

三公国からたっぷり

土地も金もむしり取ってやる


まあこちらで痛い目を見たといえは正堂隊の諸君とその盾になったシミン君だ

正堂隊には謝状でも

シミン君は命があれば貴族にでもしてあげよう


それにしても白姫様とレーレン嬢には感謝しかないな

レーレン嬢は特に厚く遇さねば




言わんこっちゃない

正堂隊はイッディモ兵達に揉みくちゃにされ随分と数を減らしていた

シミンの坊やも


「ヒバナ殿・・私はこれまでです・・あなたのおそばに・・ひと時でもいれた私は幸せ者でした」


「いや、こんなのかすり傷だから、こんなので死んだヤツ見た事ないから」


「しかしこんなに血が」


「そりゃ出るよ、切られてるんだから」


「どうか私のことは忘れて下さい」


「あ、それは大丈夫、すぐ忘れるから」


「そんな!」


「ほら元気だ」


大体この槍を持っているのにそんな簡単に死ねるわけないでしょうが

素人だってこれが有ればなんとかなるわよ

全く


「せめて最後にもう一度貴女をこの腕で抱きしめ」


「だからそう言う目で見るのやめてくれる?」


本当に全く


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