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大森林の魔法使い  作者: おにくさま
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菓子泥棒

棚の菓子?

知らんぞ?お前が自分で食べたのだろう?


コラ!毛を抜くな!


全く、だいたい一日お前の勉強に付き合わされていたのに菓子など取りに行けるか?

時を止めた?

そんな事で一々止めん!

やるならば堂々と食いに行く

それに私はお前が食べる様な菓子は食べん


私か?

ははは、最近とんとご無沙汰だが昔はよく食べたよ

【カリカリ】と【フニフニ】


ん?いや、お前が食べても旨くはないぞ?

うん、昔よくおふくろ様にな

懐かしい話だ

思えば私が生まれて初めて腹一杯食べたのも【カリカリ】と【フニフニ】だったな

うん?そうだな

少し昔話でもするか


億年前と言って分かるか?

ははは、センなど私からみたらお前と大して変わらんよ


コラ!だから毛を抜くな!

全く


その頃の私はいつも腹を空かせていた

見ての通り体も小さく兄弟たちの中でも一番ひ弱だった

産みの母はいつも心配していたよ

その日も何処かにネズミでもいないかと兄たちの後ろを地べたばかり見ながら歩いていたのだ


いや驚いたな

突然見たこともない物がそこに現れたのだから

むせる様に熱くてな

あとで主人様に聞いたのだが溶岩の海から越してきたのだそうだ


兄弟皆身を隠し様子を見ていたよ

一人は群に走っていたな

程なく声がしたのだ


何も迷惑はかけないし縄張りも犯さないと

ただ此処に住むだけだと


森の中に主人様がいらっしゃった瞬間だ

勇気のある兄が姿を見せろと叫ぶと少し待てこれでも食べて待てと声がしたのだ


驚いたよ

身を隠す私達の前にそれぞれ器とそれに山の様に盛られた見たこともない物が置いてあったのだから

何が起こったのかも理解できなかったな


兄たちは何だこれはと警戒したが、いつも腹を空かせていた私は一つくらいならとつまんで口にしたのさ

それが【カリカリ】【フニフニ】との出会いだ

美味かったな


ああ、いや今食べれば大したものではないのだがな

うまいうまいと食べる私を兄たちが大丈夫かと不安げに見ていたよ

空になった器をみてもっとあればなと思ったものさ

兄たちの物をとる事は許されんしな


驚いたよ


あればなと思った時にはもうあったのだから

それを見た兄達も私の様にがっつきはしないが皆食べ始めると目の前に誰か立っていたのだ

分かるか?

立ったではなく立っていただ

皆驚いたよ

それが主人様だったのだ


何だこの毛無

最初の印象だ

全く不敬な事だな

体に何かを纏った毛無

それが私の主人様への最初の印象だ


君たちの邪魔はしない

いや出来れば仲良くしたい


主人様はその様に仰られてな

ちょうどその時、群の者達が駆けつけてな

主人様は私達兄弟に話したことを群の皆にも話された

ありがたいことだ


しかしあの頃の私たちは、こいつ何言っている位にしか思えなくてな

主人様は、では私は君達が百代困らぬ様にしよう返事はそれからでいいと仰られ、いつの間にか目の前には小川が流れ先程の食い物が山と置かれていたのだ


気がつけば主人様はそこにはおらず

私達は訳も分からなかったがその日から食う物も飲む水にも困らなくなった



私達は主人様の御屋敷を取り囲む様に暮らす様になった

食い物はいくら食べても減る気配がない

有り難かったよ

そんなある日、声がしたのだ


遊ばないか


皆顔を見合わせたさ

誰もいないのに皆声を聞いたのだから


今思えば群一番の馬鹿だったのだろうな

私はよく考えもせず、あれをたくさんくれるならと食い物を指差し答えたのだ


千年あげるよ


その様な声がすると主人様がそこにいらっしゃり色々手にしていらっしゃった

今思えば私達を犬と間違えたのだろう

愚かな私は主人様が投げてよこされた球を受け取りもせず

転がるそれをみて、コレくれるのかと

不敬にも程があるな


主人様は笑われたよ

それを投げ返してくれと言われてね


しばらくそれを繰り返したな


また明日遊ぼうと仰られて主人様は消えられた

何なんだと思ったよ


それからしばらくはそんなことが続いたな

そんなある日、屋敷の中からそれはそれは美しい方が現れた


おふくろ様だ


素晴らしい毛並みに美しい牙

見上げる様な体躯に引裂けぬものなどないだろうという爪

見惚れたよ

ん?

そうだ、私と同じ姿だ


コラ!なぜ毛をむしる!


おふくろ様にとって姿などどうにでもなるのだ!

全く


おふくろ様は仰られた

主人様はお前達のことを大変気に入られた

特別に付き従うことを許すと


何を言っているのだと群の皆は戸惑った

こいつは何を言っているのだ

この女は何を言っているのだ

皆そんな顔をしてな

そんな時また声がしたのだ


その言い方は良くないと


主人様が現れるとおふくろ様が平伏し、群のものはそれを見て驚いたよ

そして主人様は仰られたのだ


友達になろうと


群で一番頭の悪かった私は、何も考えず、お前の遊び相手か?いいぞと答えたのだ

群の皆もあいつならいいだろうとでも思ったのだろう

産みの母だけがやめろと言ってくれたよ


おふくろ様が平伏したまま主人様に僕ならんと申し出るものが御座いますと仰られ

主人様はお前の名はと

ワンワンと答え

ではワンワン、ただいまこの時より私とお前は友達だと仰られてな

偉そうにいいぞと返事をしていたよ


主人様はではお前が面倒を見てやれとおふくろ様に申され

おふくろ様は私にこちらに来いと言い

ダメだと言う産みの母に何処かに連れて行くわけではない屋敷で寝起きするだけだと言って私を御屋敷の中に連れられたのさ



それからはまあお前も似た様な経験をしたと思うぞ

いや、私の出来の悪さは折り紙付きだ


ある時など食い物を食った手を舐めてその手を切り落としたいとおふくろ様に嘆かれたのだからな

ん?お前もか

お前も中々出来が悪いと見える


だから毛をむしるな!


屋敷に住まう様になってからは群の皆は私のことを見ては変なやつと言ってな

服を着せられ立ち姿などを直されて


群の皆?

おふくろ様のお姿を前にしては何も言えんよ

群長とて黙るばかりよ

産みの母だけは毎日心配していたな

事ある毎に変なことをさせるなとおふくろ様に文句も言っていたよ


本当に母とは有難いものだ


群か?

見る間に人数は百倍にも膨れ上がったよ

おふくろ様に挑む者もいたがおもちゃの様に転がされるばかりさ

おふくろ様もその者達を特に罰することも追い出すこともしなかったな


年は矢の様に流れた

産みの母も死に兄達も死んだ

群の者も顔も知らぬものばかりになってしまった


しかしなぜか私だけがあの日の姿のまま

悲しいでは足りぬと言ってもその時の私はでは何と言えばいいのかも分からぬ


そんな時おふくろ様が仰ったのだ

ならば私を母とは思え

私はお前を子と思うと

情けない話だかな

いい年をして泣いたよ


それから私は産みの母とおふくろ様のために千年かけて男になろうと励み、千年で足りから万年励んだ

それでも足りぬので億年たった今も励んでいる



二人の母の思いに答えねばならんからな


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