十四話(う)
姫騎士殿との別れから半年ほどたった肌寒さが抜けてきたある日
私のもとにレーダから一枚の文が届いた
とても上等な紙で、差出人もなく、なんだろうと文を開く
私はそれを一瞥すると握り締め、すぐ隣の息子の家に駆け込んだ
そこにはポロポロと泣きながら手紙を握りしめる息子の姿があった
息子と二人、馬を走らせ馬飼のところへ向かうと、馬飼は群がる子供達にせがまれ何度も何度も手紙を読んで聞かせていた
姫騎士殿の世話をしていた一家のところへ向かうと三人が三人、それぞれ手紙を手に笑っていた
私は暖かな日向に腰を下ろし、あらためて手紙を開く
大嫌いなあなたへ
あなたのことが大嫌いでした
あなたと駆けた日々が大嫌いでした
あなたと交わした酒が大嫌いでした
強くなりたいと泣きながら私の家の前で一晩中座り込んだあなたが大嫌いでした
芋の皮ひとつろくに剥けないあなたが大嫌いでした
日々上達する若い日のあなたが大嫌いでした
好きな人ができたと耳を真っ赤にしてうつむくあなたが大嫌いでした
子供が産まれると鍛錬も手につかなくなったあなたが大嫌いでした
子供が生まれた途端に一皮向けたあなたが大嫌いでした
私の反対を押し切って息子を騎士の道に進めたあなたは本当に大嫌いでした
大嫌いなあなたとの呪われた日々は忘れられそうにもありません
どうかせめて大嫌いなあなたは私のことを忘れて下さい
それではもう会うこともないでしょう
ウソつきより
私はしわくちゃにしてしまった手紙をキレイにたたみ懐にしまう
「レーダに行ってみるか?」
馬の背の上で同じように手紙を読みふける息子に声をかけた
「いらっしゃるのでしょうか?」
「いなければ手紙は出せまい?」
「では急いで支度を!」
「おかしな事を言うな、馬が有り道がある。支度はコレで十分ではないか?」
「姫騎士殿のような事を言いますね」
二人見合わせて笑い、王都を駆け抜ける
こんなに身が軽いのはいつ以来だろう




