十四話
竃の上に鉄の網をのせ、その上でリヨがせっせと野菜や《島》でも食べた、いつ飲み込んでいいのかわからない食べ物にタレを塗り、焼き上がったものをワイワイと皆で食べる
先程ヒバナと名乗った女の人などは美味しい美味しいと泣きながら食べ、それを見たセンが、お前本当に焔の魔女か?と首を捻っていた
テイとキイはお互いの嫌いな物を負けた相手に食べさせると言って、主を失い彷徨うストーンゴーレムの巨体を矢で射っては、次々と巨人をバラバラに崩して遊び
ワンワンは生の葉野菜をバリバリと何もつけずにかじりながら何かに気がついたように
ははん、落人狩りが始まりましたなと街の方を見た
私はいつ飲み込んでいいのかわからない、白くて不思議な弾力の有る食べ物を食べながらワンワンから渡された遠くがよく見える物で野鳥を追いかけていた
時々視界に入る逃げ惑う男達が邪魔でしょうがない
主人様は楽しそうにワンワンが平原に作り出した模様を、飽きずに眺めていらっしゃる
「圧巻ですね」
ヒバナと名乗った女の人が、もぐもぐと《モチ》という名だと教えられた、いつ飲み込んでいいのかわからない食べ物を頬張りながら私に話しかけた
私も遠くがよく見える物を下ろし
いつ飲み込んでいいのかわからないまま噛み続けている《モチ》を食べながら、彼女が草原に見る物を見た
“本当に、ところで”
なんです?と答えるヒバナと名乗った女の人に、私は小声で
“コレはいつ飲み込めばいいのでしょう?”
神妙な顔になったヒバナと名乗った女の人は小声で
「わかりません」
私たちは顔を見合わせ頷くと、同時に《モチ》を飲み込んだ
時を少しだけ遡る
ワンワンが姿を消すと
今度は最初からそこに居たかのように前の領主が率いて来た男達の真ん中に立って居た
そしてその周りの男達は
ワンワンに気付くと同時に眠るように倒れ
また、ワンワンを見た者も同じ様に倒れ
そしてワンワンがその目で見た者も倒れた
そしてそれは波紋の様に広がる
「《死竜》、黒とかげの力だな。生命あるものは唯そこに居れば死に、それを見れば死に、それが見れば死ぬ。ワンワン様が趣味でやられたトカゲ狩りの際、手に入れた力だよ」
テイが花の名を教える様に私にそう語る
「ワンワン様は黒トカゲなどより数段その力を巧く使いこなされる、見てみろ、倒れるのは蛮族ばかり。兵を乗せた翼竜は死ぬが小鳥は死なん、奴らは死ぬがそれを眺める私達はそれを見せ物の様に眺めている」
波紋が丸く広がりきったところでワンワンはフッとそこから消え
今度はずっとそこに居たかのように主人様の前に立っていた
半分くらいだろうか
もっと少ないだろうか
波紋に飲み込まれなかった男達はあっけにとられ
一秒ごとにことを理解し
叫び声や悲鳴が今更のように上がり始めた
「ああなってはダメだ、それにそれを止める者達も大半が骸だ、もう何もできん、まともに逃げる事もおぼつかん」
テイは草原を眺め、薪で己の肩を肩をポンポンと叩く
「さて、せっかくの機会だ、山賊焼と洒落込もう」
リヨが竃に火をおこすと
ドカンという音が草原の方から聞こえた
「火炎砲の自爆でしょう、火をつけ長い時間放っておくとああやって弾けるのです」
ヒバナと名乗った女の人がそう言って、ほらまたと言い、もうひとつドカンと響いた
もう一度草原の方をのぞくと
あんなに見事に四角く揃っていた男達の姿はもう無く
てんでんばらばらに
我先に
辺り構わず逃げ出していた
ある者は来た道を
ある者は草原を
また別の者は街へ向かい
森へ向かう者もいた
丘を登ろうとした者はいつの間に矢を受けたのか、早々に屍をさらしていた
弓で遊ぶキイがテイに話しかける
「勝負をしないか?勝った方が負けた方の食う物を決める、どうだ?」
テイは泣いても知らんぞと言って薪を放り投げ、的はどれにすると聞き返す、キイはあのデカブツと言ってストーンゴーレムの頭を射抜いて見せた
少し肌寒い風と暖かな日差し
エルフ達の楽しげな声が響くなか
背の高いゴーレムは喋ることもなく
ジッと主人様の横で日傘をさして立っていた




