十三話
街の紅にひろがる丘の頂上
そこに明日には到達しようとしているレーレンの軍勢を迎え討つワンワンを、主人様が見守る観覧席の設営が始まった
突貫工事と言うものだそうで
黄色い兜と淡い青の揃いの衣装を身に纏ったゴーレム達が、陽のあるうちに終わらせよと駆けずり回る
私とシジュウ様はそれを見ている
シジュウ様はあれこれとゴーレムを動かしているのだろうが私は本当に見ているだけで
「間に合うのでございましょうか」
後ろから震える声が聞こえた
“陽のあるうちに終わらせるそうです”
私の返答を聞き、声の主はいやそうではなくと口籠る
どうやら観覧席がレーレンの軍勢を迎え討つ出城か何かと思っているのだろう
“ワンワンが言っておりました、問題は《勝てるのか》では無く《どの様に勝つか》だと“
声の主はこれは心強いと引きつった笑顔を見せる
“領主…はあなたですね、ああ、あなたのお父様にもお伝え下さい”
少し前まで大店の若旦那と呼ばれていた男の人は分かりましたと足早に街へ戻った
大店の店主は貴族として街に戻り、幾日もしないうちに若旦那を次の領主に指名していた
その後も、あいも変わらず店主が街のことを取り仕切っているので、皆店主の事を領主と呼び続ける
シジュウ様が言うには土台が乾くまではその方が賢いと仰られたのでそうなのだろう
土台が乾く前に上物も建てておきたかったのだろうとも仰られていた
街の寄合の求めで、昨日から街の外側を人馬のゴーレム達がぐるぐると休まず見回っている
シジュウ様は後で汚れたゴーレムを洗うのが億劫だと溜息をつかれていたが
街の人達はあれ一頭で千人の軍勢と変わらんらしいぞなどと何処から出たのか分からぬ噂で持ちきりらしい
「不備はないな」
シジュウ様は己に問いかける様に出来上がった観覧席を見回る
草は刈り込まれ、四方を腰程もない低い壁が取り囲む
中央にはテーブルとそれを囲む様に椅子が並び、少し離れた所には竃の様な物が用意されている
壁の四隅、その外側には丸い窪地が作られ、そこに太い三本の鉄の筒を並べた、私の背丈ほどはある大きくて重そうな鉄の何かが置かれていた
シジュウ様はそれを覗き込み、少し離れるとタンとバンの混ざった様な音がし、光の矢が一本、鉄の筒から飛び出した
綺麗なのはいいがうるさいのは嫌だななどと思っている内に残りの三ヶ所からも同じ様に光の矢が打ち出され、シジュウ様はこんな物かと言われた
シジュウ様に光の矢は一色だけなのですか?と私が問うと、シジュウ様は笑われ、続けてもう少し静かなら良いのにと言うと私もそう思いますよとまた笑われた
ゴーレム達はシジュウ様の指示を受け黄色い兜を脱ぐと、一斉に倒れ込み、虫の様に四肢で這いつくばり、草むらに消えた
私もシジュウ様に言われ黄色い兜を脱ぎゴーレム達が積み上げた兜の上に重ねる
シジュウ様は私をヒョイと抱えるとフワリと跳ね上がり、一飛びで御屋敷へと戻った
庭ではワンワンがソレしか無いか、いやアレはどうだろうと呟きながらウロウロと歩き回り。カラス達がその後ろを面白そうについて回っていた
“男らしく諦めてはどうです?”
私がシジュウ様の真似でワンワンをからかうと、お前は明日の準備でもしていろと追いかけ回される
ワンワンは私を捕まえ何か言おうとしてハッとなり
私の後ろ首を強く握る
痛いと文句を言うと折角だからお前も見ておけと言われ
ソレが突然頭の中に
しかもハッキリと見えた
たくさんの人や馬
それに馬車や荷車が何処までも列をなして蟻のように進んでいる
それを空の上から
真上から見ているのだ
「どう思う?」
ワンワンは面倒くさいだろうと言わんばかりに私に聞いた
「おふくろ様が空の上の歯車を使い見ている風景だ」
関を作るかどうかで揉め、挙句こんな大人数を連れワンワンに仕返しをしようと言うのだから貴族の考えることは本当に分からない
それに
“ひとり転べば皆将棋倒しですね”
私は蟻の行列の様な行進を見て変な心配をしてしまう
するとワンワンは、やはりソレが一番かと溜息をつき私の首から手を離した
頭の中の風景が消え、少し残念だなと思っていると
ワンワンはお前が私でも同じ考えだったと言うことかと言って笑う
子は親に似ると言うことだなと、私をポンと放り投げるように下ろすのでその尻尾を蹴り飛ばしてから御居館へ戻る
はしたないぞと叱る声は聞こえぬふりをした
台所ではリヨが明日の下ごしらえだと言ってせっせと肉や野菜を切り分けている
私が戦の支度は良いのですかと聞くとリヨは困った様に笑い、ワンワン様が居て私達に何の出番があると言った
“盾の皆も強いでは無いですか”
私が言うとリヨは、かりに盾が七人揃って一糸乱れずに挑んだとしても、寝ぼけたワンワン様にも及ばんよと野菜の痛んだ所を選り分けた
夜、陽が落ち犬達を小屋に戻す
犬達の晩御飯を片付け、暇つぶしに犬の毛づくろいを手伝いに来たキイと二人、犬達と戯れていると何か人の声の様なものが聞こえて来た
小屋から出て耳を澄ますとそれは大勢の男達が雄叫びを上げる声だった
「丘の向こうに着いたのだろう、ああやって夜通し叫んで相手を眠らせないのはよくやる手さ」
キイはそう言って今夜はうるさいのを我慢しろよと犬に言って聞かせる
“キイ達が毎夜繰り返す《会議》の方が余程です”
本音がポロリと漏れたがキイはそれを強がりとでも思ったのか、お前のレジナルドも大概だぞと楽しそうに笑った
夕食の席では部屋から魔神刀を持ち出したテイがひと駆けして来てはいかんかなとウズウズした様子で、魔神刀をチンチンと鳴らしてはセンにいらんことはよしておけと窘められてを繰り返していた
普通に夕食をとる四人に明日があるのに食べても良いのかと聞くと
明日の朝は控えるよと言って酒まで飲み始める
どうやら戦と言った雰囲気の物ではないのだなと思い、挽肉の包み焼きにナイフを入れた
溢れる肉汁を見る私をセンがこの野蛮人めとからかい、例の葉っぱを包み焼きの上に刻んで乗せ、よく噛めよと意地悪に笑う
キレイに葉っぱだけを残し夕食を平らげる私をみてエルフ達は笑い
シジュウ様も上達したものですと笑われた
私が皿を下げる前に葉っぱをヒョイと口に放り込み、飲み込むのを見て、センが良い子じゃないかと呟くので
あなたに言われると複雑ですと丈比べの仕草をして見せた
やはりこいつらは馬鹿の集まりだ
陽が落ちる頃に街の紅に広がる丘につくと、そこかしこで雄叫びを上げ始めた
せめて最後の夜くらい静かに眠れば良いものを
丘の上には煌々と光る観覧席が見えた
明日、大森林の者達が彼処から歯車に挽肉にされるこいつらをあちらから見物するのだろう
蛮族達には怪しげだから近づくなと言っておいたがどうだろう
人の言うことを聞かない連中だ
痛い目を見れば良いさ
四隅に見えるアレが私の知るものなら地平線の向こうに隠れでもしない限り命は無いのだ
そのうえ我々は取り囲まれ見張られている
それも知らずに呑気に雄叫びを上げているかと思うと色々なものを通り越し悲しくなる
私はなるべく安全な所で夜を過ごそう
支度があると言い決戦前の酒宴も断った
何処か安全なところから街でも眺めよう
詫びの言葉の練習もしておかねば
陣営を抜け出し街が見える木陰に腰を下ろす
途中、見張りの歯車に出くわしたが、どうやら私はまだ大森林の住人と認識されているらしく何事もなかった
木陰からは煌々と輝く街の白にある御屋敷がよく見える
彼処に主人様がいらっしゃるのだろう
お会い出来るだろうか
この際御屋敷に住まう方なら誰でも構わない
這いつくばりお話を聞いて頂かねば
手土産の首は選り取り見取りなのだから
夜が明け陣営に戻ると其処彼処で炊事の煙が上がっている
マズイくてクサイ食事もこれで最後かと思いながら粥を啜る
本当にマズイ
「姫騎士殿!」
レーレンに仕える何とかが駆け寄り、夕べ観覧席に手を出そうとした一団が消し飛んだ事を聞かされた
やはり罠でしたかと私がそれらしく言って見せると、何とかは聞いてもいないのに五十人ばかりが光の矢を受け粉微塵となった、その他にも斥候に出したもの達が半分も戻らないと声をひそめた
それはそうだろうと言いたい所を堪え神妙に頷く
姫騎士ごっこも今日が最後なのだから頑張らねば
食事が終わり各自が陣形を整え始める
三百人でひと固まりを作りそれを三列に並べそれらで次々と前と言わず横と言わず攻め寄せる
大軍の戦い方としては常道だ
一万を少し超える大人数でそれをやるのだ
三百人の塊が三十以上で入れ替わり立ち替わり押し寄せる
相手がただの街ならばひとたまりもあるまい
ただの街ならばだ
あーあ可哀想に
その上こちらは馬防柵に使う丸太が不足している
森のエルが全く協力せず、それどころか近づくだけで矢を射かけて来るらしい
エルフ達は主人様のご威光にでも触れたのだろう
まあ仮にそんな物があったとしても歯車に蹴り飛ばされた丸太の下敷きになって死ぬのがオチだからこいつらにとってはあっても無くてもどうでも良いのだ
陽が高く登るのに合わせ
トカゲが飛び立ち、石でできた歯車の出来損ないが起き上がり、賢人と呼ばれる何処が賢いのか分からない奴らが何かを唱え始める。火炎砲と大層な名前の火のついた石を少し遠くへ飛ばすだけのおもちゃが前に出された
私はそんな諸々などどうでも良く
観覧席に目をやるとそこに一人の人影が見えた
私は槍を持ちレーレン達が集う本営へと高ぶる胸を抑え駆け出した
姫騎士殿は見回りから戻ると雑兵に混じり粥を食された
皆を勇気付ける為なのだろう
丘の上で夜通し光る何かに、物見として出向いた一団は皆光の雨を受け細切れにされた
姫騎士殿の仰る通り罠だったのだ
送り出した斥候も半ば以上が未だに帰らぬ
街のそばまで行って帰ってきた者もいれば直ぐそこを見に行かせた者が未だに帰らぬ
それらにいちいち物見を出していては堪らんし、それが奴らの狙いかもしれぬ
何せ相手は我々を羽虫のようにしか思わぬ暗黒の術を修めた魔法使いと血も通わぬ鬼姫なのだから
姫と言えば我らが姫騎士の何と慎ましやかで慈悲深いことか
勝っても驕らず
恩賞も官位も爵位も何もいらぬと言う方なのだ
王都の外れにある館というには慎ましい家に住まう方なのだ
先先代の王の治世に現れ、幾たびか国を救い数え切れぬ勝利をもたらされた方なのだ
歳をとらぬことをきみ悪く思う者もいる
皆口には出さぬが母親がエルフなのだろう
そう言った者に数百年も生きる者がいる事は皆知っている
賢人ですら皆目けんとうもつかない術を使うがエルフ達にも同じ様な秘術を操る者がいる
つまりそうなのだろう
だが彼女は勤勉で勇敢だ
酒も飲まんし歌も歌わん
エルフと言えば備えのために丸太を切り出そうと森に近づいた一団が弓を射かけられ近づくことも出来ずに追い返される事が多く
その弓も我等の物の3倍は遠くから射かけたと言う
魔法使いめ、蛮人供を酒と武器で手懐けたか
そんな私の話を聞く姫騎士が何かを見つけたのか、駆け出した
その方向には本営がある
兵達も箱型に並び前進の号令を待ち構えている
エルフは元来目がいい
私には見えぬが
現れたのだろう
魔法使い率いるゴーレムの軍勢が
腕がなる
私は馬に跨りサーベルに手を掛け号令を待った
そこに声が響く
よし!と私はサーベルを抜き前進と叫ぼうとした時
直ぐそばを駆け抜けた伝令の叫び声を聞き耳を疑った
「姫騎士御乱心!姫騎士御乱心!」
結局テイ達は朝食もしっかりと食べ
形ばかりの出陣式と支度を済ませ
それも戦支度と言うよりは山歩きの支度に見えた
私に用意された支度も似たようなもので
きっと今日はワンワンが前の領主の大勢の手下を吠えて追いかけ回すとかそんな事になるのだろうなとその光景を思い浮かべ吹き出した
「いかん!主人様はすでに向かわれた!」
押っ取り刀と言うものだろうか
私の部屋に駆け込んで来たワンワンが早くしろと私と茶道具の入った行李を抱え、それではおふくろ様お先にとシジュウ様に言うと、そのまま風の様に駆け出す
頬を切る風
流れる風景
紅の城壁を植込みの様に飛び越え
草原を抜け丘の観覧席へと駆け込んだ
「早いじゃないか」
観覧席でくつろがれる主人様はワンワンを褒め、乱れた私の身なりを直して下さった
主人様が席に戻ると、その側には日傘をさす背の高いゴーレムが立っていた
「お茶の仕度を」
背の高いゴーレムがシジュウ様の声でそう仰り、私は行李を開け支度に取り掛かった
少し残念な事だがシジュウ様達は今日は皆お留守番をされるのだ
なので主人様のお世話は私に全て任された
目を凝らし街の方を見ると騎乗したテイ達が沢山のゴーレムを引き連れ御屋敷を出る所が見える
主人様にお茶をお出しすると、ここへお座りと席を勧められた
そこはとても眺めが良く
四角く並んだたくさんの人達がよく見えた
「何かありましたな」
同じ様に四角く並らぶ人達を見つめるワンワンがそう呟く
私は目を凝らしたくさんの四角を見渡すと、確かに真ん中より少し後ろの方の大きな四角が歪んでいた
“何でしょう?”
私の問いにワンワンが誰か来るなと呟く
必死に目を凝らすが多くの人が蠢くばかりでその《誰か》を見つける事が出来ない
「使うか?」
ワンワンにコップを二つくっつけた様なものを渡され、覗いてみろと言われ覗き込む
“これは凄い!ワンワン!主人様!遠くの小鳥が見えます!あ!御屋敷もこんなにハッキリ!”
いやいやコッチだよとワンワンは笑い
あちこちを覗く私の肩を押さえ、たくさんの四角の方を向かせた
“白い、女の人でしょうか?ゴーレムの槍を持っています”
「男の首もな」
ワンワンが目めを細めた
「何故大森林の者があそこに居る?」
ワンワンは四角を蹴散らしこちらへと向かう白い人を見て首を傾げた
白い人は追っ手を振り切り丘を駆け上がる
「打ちませんな、やはり大森林の者か」
ワンワンは一度四隅の鉄の筒を見、背の高いゴーレムを見上げどうなのです?と問いかける
「《村》の者だと腕輪が答えました」
「ふむ、一体」
「照会しました、六十年前に銃刀の持ち出しの疑いが有るとして捜索願が家族より出されています」
「これはおてんばだ」
「名は《ヒバナ》、《村》の長の妹です」
レーレンの陣幕に駆け込みその中を見渡す
クソ!実質一族を率いるレーレン=レーの姿が見えない
仕方ないと割り切り当主のレズとその弟のレレ、二人の首をはねる
周りはポカンとし、私や胴だけになったふたりを見つめている
二つの首を掻っさらい陣幕を駆け出し
目の前に群がる蛮族を蹴散らし、ひたすらに丘の上にある観覧席を目指す
何人か知った顔とすれ違うが邪魔だと思えば退けた
「姫騎士御乱心!」
後ろからそんな叫びが聞こえるがもう知ったことではない
丘を駆け上りあと少しと言うところで観覧席に有る重火が火を噴く
そんなここまで来てと嘆くその時
背後からひめいの様な、馬の叫びの様なものが聞こえた
私は振り返りもせず観覧席の前に滑り込み、手にしていた二つの首と身隠しの仮面を投げ捨て叫んだ
「どうか!どうか!お許しください!」
綺麗な光の矢を撃ち出す鉄の筒が白い人を追う騎士達を消し飛ばした
せっかくの光る矢がこんな事に使われるとはとても残念だ
白い人は手にした物と付けていた仮面を投げ捨てると観覧席の壁の前に這い蹲り泣きながら叫び出した
どうか許してほしいと
ちょうどその時、早駆けで来たのだろうエルフの皆が何だという顔で白い人を覗き込む
「お前は何だ?」
テイはさも怪しげに白い人を覗き込む
「《村》の《村》の者でございます!名はヒバナ!森を出た愚か者でございます!」
うん?とテイとキイは首を捻り、少し遅れたリヨは何の話だとやはり首を捻った
「森の外に住む蛮族にも人並みに生きる事をと浅はかにもつけあがり、人助けと思い上がりました、しかしほとほと愛想もつき疲れ果てました、どうかどうか、どの様な罰でもお与えください、大森林に戻る許しをお与えください、そこが大森林であれば例え牢の中でも喜んで向かいます、どうかどうか」
「あれは何だ」
白い人の話を怖い顔で聞くセンが放り出された白い人の抱えて来た物を指す
「この度の騒動の首魁、その首でございます」
「手土産か?」
「いえ、その様な下心は」
「どの様な罰でも受けるといったか」
「喜んで」
センは無表情に白い人を見る
そして
「ではその腕切り落とさせろ、この魔女め」
聞いたこともない恐ろしい声でそう吐き捨てるセン
「大森林に戻れさえすれば。私の知らぬ私があなた様に恨みを持たれる様なことをしていたのならどうかそれもお許しください」
「よく言った」
セン腰の鞭に手をかける
「許してやれ」
主人様がセンをたしなめ、センは一瞬躊躇いハイと無表情に傅く
「覚えているよ、《村》の娘、お前の知らないお前の事も覚えている」
「あなた様は?」
白い人の言葉にセンは控えろと怒鳴り
このお方こそが大森林そのものたる主人様であると睨みつけた
「これは、これは何という、どうかお許しを」
「良いよ、許す、《村》へも戻してやろう、ただしあのうるさいお前の姉が何をするかは知らんぞ?」
「感謝します」
「センもいる事だ、教えよう、この娘は昔罪を犯した、私はコレに森の外を彷徨う罰を与えた、コレは己の意思で大森林を出たと思っている様だがそれは私がそう仕向けた。そもそも悪事を働いた者はこの世から私が消した、それがセンの姉達への弔いだ、その上で抜け殻に新たな生活を与えもう一度罰を与えた、だからセンそう怒るな」
センはハイと答え横を向いた
ワンワンはああ、あの時かとつぶやきセンの肩を叩き
お前の姉達の事はこの私の落ち度だ、すまんと慰める様に声をかけた
「ありがとう、ありがとうございます、感謝致します、ではせめてもの償いにあそこに並ぶ不届き者を私の手で」
「それには及ばん、それは私の役目だ」
ワンワンが白い人の申出を断り観覧席を後にする
「一つお聞き届け頂けませんでしょうか」
白い人はワンワンに這い蹲り指を指す
その先には槍を突きつけられ取り囲まれた数人の男が見えた
「あれは私に付き従ったこの地のもの達です、世話を受けたジジババの息子とスケべで子沢山な馬飼、己の弱さを恥じた剣士とその息子です、どうかあれらはお見逃し下さい」
ああおぼえておこうと答え
ワンワンは消えた




