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大森林の魔法使い  作者: おにくさま
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十話(き)

王国で最大の権力と領土を持つ者

それは勿論王家だ

王国の三分の一は王家の直轄領

圧倒的だ


では王家以外でとなればそれはもう4大領主達だろう

ただし、この4大領主が一つにまとまっても王家には及ばない

さらに王家には二つの分家筋があり其々が4大領主に続く程の大家なのだ


では王家以外で1番の大家はと言えばそれは当家レーレンである

数代に渡り開墾や治水に力を入れ

農地を増やし街を広げ道を繋いで来た

誠に誇らしい


その誇らしい当家に小さなシミが出来たのは先程、王都での天使降臨騒ぎと時を同じくしてだった

王よりレーダに有る長く放置してあった古い屋敷を差し出せと使者が来たかと思えば、答える間も無く屋敷に王が招いた者達が押し入るように住み着いたのだ


噂では異国から招いた王族で

その者は病の娘の保養のため、魔法使いの女と万の軍勢に匹敵するゴーレムを従え訪れたと聞く

それだけならば話はそこで終わったのだ


レーダの街に住み着いた異邦人は、街で我が物顔で振る舞い

何をするにも代官への届出もせず

街に住まい取り仕切る兄の所へも出向かず

使者の一人も送らず

街の商家を取り込み

あの優しい兄を困らせていたのだ


街一番の大店などは異邦人にいい様にたぶらかされ、持てる財を根こそぎ差し出したと聞くに及び兄の気苦労はいかばかりかと涙ぐむ


そればかりか大店は無頼の騎士を集め、木人を買い、森のエルフにまで声をかけ、その上王の許しを得たなどと言い納税まで拒む始末

我慢に我慢を重ねた兄も遂に大店へ自ら出向いたのだが、彼奴めは王の許しは頂いたと言うばかりで兄を追い払い、街のことは自分達と異邦人で取り仕切るから口を出すなと言い放ったと聞く

兄の無念、怒り、その心中察するに余り有る


兄はその足で異邦人が住み着いた屋敷に向かい、主と話があるので門を開けてくれと言うが門は固く閉じたまま

根気強く声を上げていると、魔法使いを連れた屋敷の娘が現れ、魔法使いにあの者達を殺せと命じ、魔法使いはたちまち従者二人を魔法で拷問にかけ殺してしまう

兄は勇敢にも二人を助けようとして、魔法使いに足に傷を負わされながらも生き絶えた二人を抱え館に戻た


容易く人の命を奪う異邦人

それをこのまま野放しにしてはいけないと決意した兄は、野蛮な異邦人をレーダの街から追い出すために急ぎ兵を集めた

しかし兄は物静かな田舎を与えらていて、少ない兵を兵を集めるにも時間がかかってしまう、二日がかりで街の民兵の力を借り、ようやく陣容を整え異邦人の屋敷へ向かうが、既に異邦人は国元から呼び寄せたエルフの兵とゴーレムで陣を固め罠をはり待ち構えていたのだ


兄は勇敢に戦ったが武運拙く、従者ドロンが開いた血路から傷を負いながらも抜け出し

異邦人の悪評を聞き、それを確かめに向かっていた姫騎士と偶然に出会うが傷は深く

兄は姫騎士の腕の中で異邦人と今一度戦い、騙されている街の者達を救うのだと呟きながら天に召された



兄の亡骸は姫騎士御自らによって父の元に届けられた

父は少し粗暴ではあったが心の優しかった兄の変わり果てた姿に言葉を失い

直ぐに上の兄達へと使いを出し

お部屋に戻られると一人で泣いておられた


姫騎士は何か有れば声をかけてくれと、それとなく葬いへの助力を申し出て下さった



たった一滴許したシミは瞬きするほどの間に、レーレンの者の命を奪う程に広がっていたのだ


そして先程王都からの使者がさらなる凶報を知らせた

レーダの街はレーレン家の元を離れ

以後はフッツ商会店主ケースを後見とし、その息子イーブを新領主とする

コレよりレーダは新たな貴族フッツ家が領主として治めるものとする


王都からの使者は兄の死で気落ちする父にそう伝えると直ぐに王都へと取って返してしまった

弔いの言葉もなく


レーダの街など失ってもどれ程のものでもない

しかし私はそれを許さない

街を奪い

兄を奪い

父の領地を奪う異邦人



私は決して許さない


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