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大森林の魔法使い  作者: おにくさま
12/100

十話(い)

スズのヤツに逃げろと伝に行き

シジュウからお前が逃げろと言われちまった


あいつの事だ、魔法で何とでも出来るんだろう

そうなるとむしろ危ないのは私達の方か

これはヤバイな

白の屋敷とかかわっているとなれば、あのバカ息子はシジュウに追い払われた腹いせに家を襲うかもしれない

シャレにならねぇ


急いで戻ると、家の前に見たことも無いデカイ荷車が止まり、オジさんとかあちゃんがせっせと金目の物や仕事道具を積み込んでいた

何だよこれはと駆け込む

かあちゃんが言うには町の大店が大事になる前に匿うから直ぐに用意しろと

荷車と人をよこしたらしい


私も急いで荷物をまとめ

持ち出せそうも無い物は床下に隠し

戸や窓に板を打ち付けるのを手伝った

雇われの職人やオジさんの弟子たちには、ここは危ないかもしれないと言って金を持たせ家に帰らせた

私はスズから貰った木剣を腰にさし、屋敷から持ち出した白磁の皿を抱え、荷車の隅に乗り、大店へと向かった


途中、スズの叔父の店に寄り

纏めた荷物の前で途方にくれているスズの叔父を荷台に押し込む

すまないねと困った様に笑う顔は何処かスズと似ていた


大店の屋敷に着くと、先に到着していたフウの家族が荷車に幌をせっせと被せああでも無いこうでも無いと言って汗を流していた

私達の荷車がその隣に着くと、必要なものだけ下ろし後はここに幌をかけて置いておけと言われる

まあこの屋敷の中ならウチらの物なんかとる奴はいないだろう


館に通されると大店の店主が面倒くさそうに出迎え、真金様の頼みなのでお前らを特別に匿う、客間を使え、その人数では少々狭かろうが文句は言うなと言い捨て何処かへ行っちまった

ウチらとフウ達とスズの叔父が客間に入ると、そこには先客が椅子に、それも偉そうに踏ん反り返って座っていやがった


「何であんたがここに居るんだよ」


先客は足を組み替え、めんどくさそうに答える


「お前らのどれかが欠ければスズが悲しむかと思ったのだ」


「スズの側にいなくていいのか?」


「私がひとりいないくらいでは毛ほども」


ああそうか、そうだよな

こいつはゴーレムの方だ

本物のシジュウがスズから離れるわけがねえ


「そうかい、じゃあ邪魔するぜ」


私はうろたえるオジさんとかあちゃんを部屋に押し込み、事情の分かっていないスズの叔父を引き入れ

呑気にあらどうも何てシジュウの偽物に挨拶するフウのおばさん達を呼び込んだ


「確かにこの人数だと狭いな」


私が呟くとフカフカの寝台で遊ぶリンがここは自分の場所だと言って私を睨む


「へいへい、取らねえよ、私は床で十分だ」


窓を開け庭を眺める

畜生、金持ってんなぁ

これが金持ちってんじゃウチは成金にもなれてないぜ


「確かに狭い、それに暗い」


王様みたいに踏ん反り返っていたシジュウが突然口を開いて文句を言う


「店主を呼べ」


シジュウはお前に言ったんだってな感じで私を睨んだ


「呼べって、お前」


「大声で叫べ、誰か来よう」


「へいへい」


私の声を聞き、うるさいと文句を言いに来た大店の使用人は、シジュウを見るとしばしお待ちをと叫び飛んで行った


「コレは真金様、このような所にようこそいらしてくださいました」


大店は先程とは別人の様で

シジュウに揉み手で跪く


「狭いし暗い、どうにかしろ」


「はい、すぐに」


店主はシジュウの言葉に迷わず答えると、人を呼び他の部屋を準備させ館中の光石を持って来させた

スズの叔父は1人で一部屋を与えられ

フウ達家族は別の一部屋を与えられた

私達は部屋に残り、先程リンが領有を宣言した寝台に寝転がった


「お前は床で寝るのではなかったのか?」


「ある物は使うんはだよ、それよりあんた何でウチらと同じ部屋なんだよ」


「何故私が動かねばならない」


「そうかい」


居座るシジュウの相手を諦め、窓から庭をもう一度眺める

オジさんとかあちゃんは柱や家具を熱心に見ている、ありゃ多分居心地が悪いんだな

しかし何か違和感を感じる

何だ?

庭を見て何で違和感を感じるんだ?

ああ、そうか


「おい、あんたひとりじゃねえな?」


私は庭を見たままシジュウに声をかける

答えはないが、時々どこかがほんの少しだけ歪んで見える

大工ってのはその手の事には敏感なんだ

物陰にガラスで出来たゴーレムを潜ませてるな


振り返るとシジュウは私を指差し

その指をクイクイとして見せる

何様だよ

シジュウ様だな


ヘイヘイと悪態をつきながらシジュウの前に行き、何か御用でございましょうかってワザとらしく言ってやった


「よく言えた、その態度忘れるな」


こいつ王様か

ああ女王さまだな


「腰の物をよこせ」


返せよ?と言いながら木剣をシジュウに渡す


「この木剣は金貨ならば40枚、それもスズの私財で賄われたものだ」


「何回も聞いたよ、言っちゃ何だがこれくらいなら私でも作れるぜ?銅貨十枚で。それにその焼印もなんて書いてあんだか分からねえし」


シジュウは木剣を手でもてあそびながら焼印を見つめる


「私の国の言葉で《かがやき》と焼印されている」


ふーん

まあ仕上げは悪くないが輝なんて大袈裟だな

シジュウは木剣の柄のあたりをポンと叩いた


驚いたね

木剣がピカピカと光りやがる


「銅貨十枚で作れるのだったな」


シジュウは私をバカにした様な口振りでもう一度柄をポンと叩き、ピカピカは収まった


「光らなくなったら日向に置いておけ、また光る様になる」


シジュウは私に木剣を投げ返すと、何度も木剣を光らせる私を見つめる


「何だよ」


シジュウは少しだけ表情を和らげ


「スズもそれを欲しがっていた」


まあそうだろうな

コレは凄い


「目を輝かせていたよ」


「買ってやればよかったじゃないか」


「アレは主人様にお使えし、いずれ《館》を治める身だ。それが主人様の前でそんなおもちゃで喜び遊んでいる訳にもいくまい」


「それで代わりに首飾り買ってやったのか」


シジュウはまあなと言った顔をしてみせた




日が暮れ、外が騒がしくなる

大店が雇った騎士達が館の回りを固めているらしい

オジさんとかあちゃんは長椅子に腰掛け、落ち着かなげに窓の外を仕切りに気にしていた


私はシジュウに菓子をたかりに来たが今日は無いと追い払われたリンの遊び相手

外が気にならないではないが、シジュウの側に居れば命を取られる様なことは無いはずだ

そんな事を思いシジュウを見ているとヤツと目が合っちまう


「何か」


私はしょうがねえなとシジュウの側に行き、小声で声で言ってやった


「まばたきくらいしとけ、気づかれるぞ」


シジュウはそうだなって呟くと、何かを私に放って寄こす


「褒美だ」


受け取った包みを開くと中には砂糖菓子


「持ってんじゃねぇか!おい!リン!菓子だぞ!」


その時突然戸が開く


「騒がしい!」


大店の店主がおっかない顔で睨んで来やがった


「お前こそ騒がしいぞ」


シジュウは店主を見もせず言い放ち

店主はこれは失礼と頭を下げた


「何事か?」


私が来て以来、椅子から一歩も動かないシジュウは、店主に対してもまるで主人の様な口振りで

店主もそれが当然と言った態度


「お食事の用意が整いましたので」


「そうか、ではお前達も付いて来い」


シジュウは私達を顎で指すと立ち上がり、早く他を呼んで来いと、よりにもよって私に言いつけた




広間に用意された食卓に、シジュウに続いて案内され

シジュウは奥の方の席へと案内され

私達は手前へ


分かっちゃいたけど露骨だね

運ばれてくるご馳走も、向こうとこっちじゃえらい違いさ

ご馳走には変わりないが物も量も段違いだ

リンなんざ羨ましそうにシジュウの前に並ぶ皿を眺めてやがる


「さあ真金様、食前酒など如何でしょう?」


店主は笑える笑顔でシジュウに酒を勧める


「泥水の様な葡萄酒なら断る、蒸留酒は無いか、命の水だ」


はい只今と答えた店主は、使用人に一番良い蒸留酒を取って来いと命じ

シジュウは自分の前に並ぶ料理にナイフを軽くあて、口元に運び味を見る


「口に合わんな、コレはお前達で食べると良い」


ハナからゴーレムじゃ食えないくせに

シジュウはさも気に入らないって口振りでリンに早く取りに来いって言い付け

リンは大喜びでそれを受け取った

店主はコッチを見た時だけ睨んでやがるが知ったことか


シジュウの前に何処で手に入れたか聞かなくても分かる作りのグラスが置かれ、そこに酒が注がれる

シジュウはそれを一口飲むと、悪くは無いが好みでは無いな、保存が良く無いと宣いやがり、店主はこれは参りましたなとヘラヘラと笑う


「今日は私が酒を振る舞うとしよう」


グラスを置いたシジュウがそんな事を言うと、シジュウの後ろからジワジワと滲み出る様にガラスのゴーレムが酒瓶を持って現れた

私以外の連中はみんな腰を抜かすぐらい驚いてたね


シジュウが酒瓶を受け取るとガラスのゴーレムはすうっと消えちまう

あっけにとられる店主に向かってシジュウは注いでやるからグラスをよこせと良い、少し抜けた声で有難うございますなんて抜かす店主のグラスを酒で満たし、少し待てって言い水差しを手に取って店主のグラスに傾けた

取り敢えず驚くのは慣れてんだけどさ


水差しからは水じゃなくて氷の粒がコロコロ落ちて来て、店主はこれが魔法かって目を丸くしてたね

シジュウは自分のグラスにも同じ様に酒と氷を入れると、今夜はこれで十分と抜かす

店主はそれでは、なんて抜かし酒を飲むと目を剥き、これは!とか言ってシジュウの持っ酒瓶を見る

余程美味いんだな


私らはシジュウの分まで晩飯にありつけたしそれはそれで満足さ

シジュウはお前もどうだと言ってオジさん達に酒を瓶ごと渡し

店主は惜しそうにそれを見る

ざまあみろだな

そしたらシジュウが欲しければ樽ごとやるぞと冗談じゃ無い感じで言う

店主は是非に!って大喜びさ


しばらくシジュウと酒を飲んでいた店主は私をみて


「おい、その木剣は何だ?礼儀も作法も知らんのか」


オイオイ、からんできやがった

おお、いいぜ、受けて立つよ


「大店様、これはな、白のお屋敷のスズお嬢様から頂いたそれはそれはありがた〜い木剣だ、それにイチャモンつけるとは感心しないぜ?」


私は柄をポンと叩いて木剣を光らせてみせ

店主は驚きシジュウを見、シジュウが頷くのをみて


「それは、悪かった」


なんて抜かしてシジュウの方を向き、宝具でしょうかとか聞いてやがる

シジュウも答えぬとか言うもんだから焦ってやがった


「コレもスズから貰った!」


リンがスズから貰ったぬいぐるみを自分の頭に乗せてみせるに至っては、さすがの店主もそうか良かったなとしか言わなかったけどな


私らの晩飯が終わる頃合いを見計らった様に、シジュウがお前達は部屋に戻れって言ってきて、私は酔っ払った大人達を連れて立ち上がる

シジュウは、店主、今日の詫びに明日は私が腕を振るおう。おい、お前手伝えと抜かして私を指差しやがった

店主は畏れ多いってビビってるけど

マジかよ



私はかあちゃんと二人でフカフカの寝台

オジさんは長椅子で横になる

寝台はもうひとつ有るんだがシジュウが使うだろうと言って開けてある


かあちゃんとオジさんは高い酒を飲んだもんだからかすぐに寝ちまった

私も疲れたなと思いウトウトしているとシジュウが部屋に戻ってきて

朝まで飲んでてくれりゃ良かったのにと舌打ちし、とにかく寝たふりしてるうちに本当に寝ちまおうとしてたらシジュウが話しかけてきた


「起きているな」


「何だよ」


「家を出、スズに仕えろ」


「やなこった」


「いい暮らしが出来るぞ」


「そいつはいいな、でもよ、私は人に何かを決められるのが死ぬほど嫌なんでね」


「だからこそ声をかけた」


「悪いな、そんな事なら嫁にでも行っとくよ」


「肉屋の息子か?」


「何でフウだよ!」


「違うのか?」


「あいつは子分みたいなもんだよ」


「なるほどな」


「何だよ、寝るぞ」


「ああ」




早朝に蹴り起こされた

本当に蹴っておこすか?


正直寝床が柔らかすぎてよく眠れなく

すこぶる眠い

そんな私はシジュウに引きずられる様に館の台所に連れられ、館の使用人達はシジュウが台所から追い払った


「で、何を手伝えって?」


シジュウは台所の戸を閉め辺りを見渡す


「しかし暗いな」


私の話なんか聞きゃしないシジュウは自分で締め切っといて文句を言う


「ホラよ」


何でか持ってきちまった木剣を光らせからかってやる


「褒めてやる、しかし無用だ」


ヤツがそう言うと突然台所全体が明るくなった

いつの間にか台所の四隅に立っていたガラスのゴーレムが光石よりも明るく光ってやがる

呆れるぜ


「ほんで私は何をなさればよろしいのでございますですか?」


光るゴーレムを木剣でつつきながら竃を覗き込むシジュウに問いかける


「そこから覗かれぬ様に見張れ、窓からは覗けぬ様にしてある」


「はいよ」


私は戸を内側から大きな音が鳴るように蹴り飛ばす


「覗けばクビが飛ぶぞ〜痛いぞ〜」


何人かが廊下を走り去る音がした


「終わったぜ」


「ご苦労」


いつの間にかシジュウの足元には色々と入った籠が置かれていて

シジュウが竃を覗くと全ての竃の薪が勢いよく燃え上がった


「凄えな」


私の声を聞き、シジュウは振り向きもせずに喋る


「モノを擦れば火がつくのは知っているか?」


「家でよくやらされてるよ」


「結構、空気も同じようにしてやれば熱を持ち火がつく」


「何言ってっか分かんねえな」


「だろうな」


「んでどーすんの」


シジュウは呑気に材料と包丁を取り出す

なんか手伝おうかと言いかけて声を詰まらせちまった

シジュウの手が4本になったんだ


「気がついていたのだろう?それとも驚いたか?」


ビビってちびりそうになった私を笑うように、シジュウは4本の手を使い、すごい速さで料理を始める


「別に何ともねえよ、ちょっと意外だったけどな」


必死に強がって見せたが声が上ずっちまう

シジュウは、そうか、頭の回るお前ならば人にふれて回るような事はせんだろうからな、なんてぬかしやがった


「なあ、ホンモノのお前も手が4本生えてんじゃねえだろうな」


私は精一杯強がり


「さあな」


シジュウに答える気は無いみたいだ


「出来たぞ、人を呼んで運ばせろ」


シジュウが持ち込んだらしき白磁の皿の上には、スズが自慢するシジュウの料理が並んだ


「冷める前に運べ」


あの時間で人数分作るなんてバケモノだな

私は大声で館の使用人を呼び集め食卓に運ばせる、それにしても


「なあ、多くねえか?」


台所に並ぶ朝食は、私らと店主夫婦の分を運んでもまだまだあって


「人数分だが?」


シジュウがお前馬鹿かってな感じで私を見た


「ウチら家族が3人、フウん家がバァ様とおじさんとおばさん、それにフウとリンの5人、大店の店主夫婦とスズのオジさん。お前を入れても12人だぞ?」


朝食はまだその倍は用意されている


「間違いなく人数分だ」


「それってまさか」


「何だ?」


「いや、何でもねぇ。残りはここに置いとけばいいと思うぜ」


使用人の分まで作ったお人好しって事か


いつの間にか台所にいたガラスのゴーレム達は消えていて

私は部屋を回って朝飯だぞと声をかけた


広間ではガラスのゴーレムが水差しと山盛りの焼きたてパンが乗った籠を持って立っていた

本当にどうなってんだか


シジュウが腰掛けるのを待って朝食が始まる

シジュウはゴーレムからグラスを受け取ると、いい匂いのする果実水をお上品に口に運ぶ

私はゴーレムが差し出した籠からパンをこれでもかと取り、皿の上の朝食に手を付けた

ナイフを刺しただけで崩れてとろけ出すオムレツ

口に運ぶと、中にはコレまた溶けたチーズ

なんて贅沢しやがるんだ

付け合わせの野菜はタップリと油を使って焼いてある

それにこの腸詰め

フウにゃ悪いが、フウの店で売ってるのとこれと比べちゃいけないな

香辛料が痺れるほど入ってやがる

それにこのスープ

こんなもん見たこともねえからなんて言っていいか分かんねえよ

クソ、スズのヤツ毎朝こんなモン食ってやがんのか

店主はしきりにシジュウの料理を褒めてるがコレはお世辞じゃ無いな



朝食の後は部屋に引きこもる

家の事が少し心配だが命には変えられねえ


貴族様みたいに昼食を食べていると少し外が騒がしい

店主がシジュウに何か耳打ちしたがシジュウはああそうかと言ってガラスのゴーレムが淹れた茶を飲む

私たちはふかふかの切りパンの上にタップリと肉と刻んだ野菜を乗せたものに齧り付く

外では領主の馬鹿息子が嫌がらせでもしてんだろうな

うちのオジさんやスズのオジさんが外の喧騒に狼狽えるもんだからリンが不安そうにしちまって

しょうがねなあ


「オジさん、食わねえならそれくれよ」


それを見たリンも私のマネをしてバァ様にいらないならちょうだいって言って皆んなを笑わせた


シジュウがお高価そうな茶碗をお上品にテーブルに置くとガラスのゴーレムが現れた

手には見たこともない楽器

ガラスのゴーレムは外の喧騒を掻き消す様に陽気な音楽を奏で

その演奏が終わる頃には外の喧騒も収まっていた



日が暮れ、私達は店主が色々挽回を図った晩飯を食い

結局それに手をつけなかったシジュウが出した酒を大人が飲んでいると、シジュウは急に立ち上がる


「終わった様だ、私は館に戻る。お前達は夜が明けてから戻るがいい」


真金様と真顔で話し掛ける店主


「後はお前の好きにするといい、この者達のことは任せたぞ?領主殿」


領主殿と声をかけられた店主はシジュウに傅き、お任せ下さい真金様と家来の様な仕草を見せた

唖然とする大人達を他所に、シジュウはスタスタと広間を出ると玄関に向かう

私はそれを追いかけた


戸の外にはこんなにいたのかって数のガラスのゴーレムが居並び、シジュウを迎えている


「おい!大店が領主ってどう言う事だよ!」


シジュウは振り向くと私に向かい表情も変えずに言い放つ


「お前も傅く相手を間違わなければ貴族位にはなれるぞ」


スズか

吐き捨てる様に呟く私を、シジュウはその物言い、やはりお前は見所があると言い、そのままゴーレムを引き連れ立ち去った


店主は上機嫌で、使用人や番兵達にまで酒を振る舞い、忙しくなると嬉しそうに酒をあおる

オジさん達は突然のお祭騒ぎに戸惑いながらも楽しんでいるし

皆楽しんでいる

私を除いて


「おい、ちょっと来い」


私は振舞われた果物を摘んでいたフウを連れ出した


「何だよ、自分で取って来いよ。いっぱいあるだろ」


「後でな、それより今から白の屋敷を見に行くぞ」


フウは少し考え、良いよと答えた

こいつスズの事考えたな

クソ



大店の館は簡単に抜け出せた

酔った門番に家の様子を見てくると言うと、好きにしろ酒を飲みながら答えるだけだった


貧民街に入ると辺りの様子がおかしい

戸は堅く閉じ

道端には物乞いの一人も見あたらない


白の屋敷が見える所まで行くと一面にフウの家の様な匂いが漂っていた

血と肉の匂いだ


いつもと変わらず輝く白の屋敷

立ち込める血と肉の匂い

目を凝らし辺りを見渡すが死体は見あたらない

おかしいなと思った矢先、突然フウにしがみつかれた


「な!なんだよ!」


突然の事に驚き心臓が踊る


「あれ!あれ!」


フウは暗闇を指差し

暗闇は白の屋敷の明かりでいっそう見えづらく

目を凝らしてみると


何だよ

アレは


今度はコッチがフウの腕を握りしめていた

私達は急いで引き返し、店主の館に駆け込んだ

酒宴はまだ続いていたが、フウのバァ様とリンは部屋に戻って眠っていた


「痛いよ」


フウに言われた私は、その腕を折れるほど強く握っていることを思い出し

手を離した


大人達の喧騒に紛れ込む

そうすれば気がまぎれる気がしたからだ

フウは誰かから渡された木の実をかじっている


「くれよ」


「いいよ」


フウからかじりかけの木の実をもらい口に放り込む


味はしない


「ねえシャン、さっきの」


「黙っとけ」


忘れなきゃな

トカゲの化け物なんて

忘れなきゃ

トカゲの化け物がつぎつぎと死体を丸呑みにしてたなんて


おいスズ

お前の大好きな《あるじさま》ってのは何者だ?


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