旅路
私がオアシスでいた時、青年が現れた。青年はもう何日も飲まず食わずだったのか、頬が削げ、顔も蒼白い。青年は、荷物も下ろさず水を貪るように飲んでいる。やがて水を飲むのをやめると、こちらに気づいた。そして、私の足元に広げられた食べ物を食い入るように見つめている。
私は、その視線に負けてしまい。青年の方に食べ物を幾つか投げてやる。
青年はそれを受け取ると外見など全く気にしていない様子で食べる。その様子は、まるで獣のようだった。
青年は食べ終えると息を吐いてから、こちらを向いて手を合わせて、
「ありがとうございます」と言った。
私は最初から気になっていたことを聞いた。
「なぜ荷物を持っていないのか?」
青年は荷物と呼べるものを持ってはいなかった。旅をするならば、食糧や金、ある程度の荷物は要るだろう。それすら持ってないのはおかしい。
青年は少し困ったような顔をすると、 重く口を開いた。
青年は貴族の出身であること。家に仕えていた奴隷に恋をしたこと。その奴隷を父親が人を雇って殺したこと。そして、怒り狂った青年は自分の手で親をしてしまったこと。今は親殺しということで殺人犯として追われていること。
私は恋をした奴隷のことは今でも愛していかと聞いた。
青年はただ頷いた。
私は急に懐かしくなった。何故なら、自分も同じような境遇だったからだ。貴族の出身で、召使いに恋をした。人目を盗んでは会い、お互いを求めた。それが親に知れてしまい、相手は殺されてしまった。そして、私は家を出た。
私は青年にこれからのことを聞いた。青年は首を横に振る。
私は一つの提案をした。ある言い伝えでは、死者に会える町があるという。そこに行ってみてはどうかと。ただし、その場所は誰も知らない。本当に存在するのかも分からない。
だが、青年のようにこれからが決まってないような人間には目標が必要だ。生きるための目標が。
それから私と青年は、近くの町まで行動を共にした。そして、必需品を買い揃え、青年は旅立っていった。愛する人の元へと。
さぁ、私もまた歩きださなくては。
どこに向かうのか分からない旅路へ。




