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RANBU

作者: 綿乃 ゆな

 

争いという名の風が、村を襲う。


 風は10年吹き荒れ、村は死んでいった。





RANBU





 この村に生まれた少女、乱無。


“らんぶ”と読むのだが、彼女を知らない者には、昔からおかしな名だと言われてきた。


彼女の里は、もう無い。親さえいない。


なぜならば、村の風がやむと同時に村全体が失われてしまったから。


家族、友人、景色、動物。乱無が愛した全てのものが、たった一日で。


それなのになぜ、乱無一人だけが生きているのか。


それは彼女の出生に秘密があるらしいのだが、その詳細を知る者はいない。


何しろ彼女を知る者は、村とともにみな消えたのだから。




 ある年、村の領土を広げようと、長達が隣の村へその話し合いへ行った。


だが、そう簡単に成立するはずも無く、かなわぬ思いは口論へと化した。


やがて時が経つと、長達には疲労が垣間見え、次第に2つの村では争いの空気が漂い始めた。


それはもう、今日でなくても明日には戦争になるであろうというギリギリのところで踏みとどまっている様な状態だった。


そんな中、村のある若い夫婦に赤ん坊が生まれようとしていた。嫁の名はりん


二月五日。その空気を察したのか静かに生まれたのは、それでも元気な女の子だった。


夫婦は戦争に駆り出される心配の無い女の子でよかったと安心したのだ。


そして、“乱が起こることの無いよう”と、幼子に乱無と名付けた。


しかし、争いは起こってしまう。皮肉にも、乱無の名が定まったその直後から。


村の若者達は次々と戦火の中で死んでいく。若かった乱無の父も犠牲になった。


村が、隣の村に戦力ではとてもかなわないと気付くのは遅すぎた。


五年の年月を経て、村は、争いの中に消えた。




――――――――――10年。


 乱無は十五になった。


相手だった村の、心優しい老夫婦に養子として迎え入れられ、乱無は成長した。


乱無は村の少女達とは特別接点を持つことなく、まるで成人したての青年のようだった。


無口だったことも手伝ってか、彼女は村のものから少し浮いた存在となり、


何も知らない子供達からは暴言を受けることがしばしばあった。


物事を、自分を、里を深く考えるようになり、乱無は自分を探す旅にでた。


自らの謎を、明かしておきたかった。




 旅で分かった数々のこと。どれもが乱無を苦しめた。


何しろ乱無がいなければあこがれた母も、優しい父も、友も、兄弟達も今生きていたかもしれなかったのだ。


乱無がいなければ、村はまだそこに在ったはずだった。その事実。




 二月五日。それは乱無が生まれた日であり、争いが始まった日。


そのためか、乱無には不思議な力があった。


争いを鎮められる力、争いが続き滅びるまで終わらない力。


その2つの力は乱無のもの。


だから、乱無はある意味での神だった。


争いの神。彼女がいる限り世界で争いが絶えることは無い。


反面、彼女が死ねば争いは終わる。


けれど神だから。神は争い、戦火の中で死ぬことはありえない。


他人の手によって命は落とされないのだ。


戦争を嫌い、平和を愛した神が自ら命を絶つことで、世界は争いから救われるのだ。


だから、あの争いで乱無一人が生き残り、村は永遠に失われた。


そして、もうひとつ・・・。




 乱舞。それが彼女の本当の名前。


“乱が起こることの無いよう”ではなく、“乱が舞う”だった。


神であった乱舞に付けられた残酷な名は、対である平和の神の誕生か、


彼女を知るものが消えたことによって忘れ去られ、


それでも乱舞自身永遠に苦しむことになるのである。









初めまして。初投稿になります。

この小説はHPからの再掲載なんですが,

もともとは小学五年生のときに書いたものなんです。

辻褄が合わないところがありましたら,見逃してください。

ワタシにしては珍しいファンタジーです。

読んでいただき,ありがとうございました。

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