青の炎
蝋燭の火が静かに消えていく。
私は、王の顔色をうかがう。
「シド、私の蝋燭はどれだ?」
「そ、それは⋯⋯」
問いかけには誰も応じない。答えてしまえば首が飛ぶかも知れない。
こんなに大勢の部下も口を閉ざしている。
ここは、宮廷魔術師が教えてくれた禁断の場所。人の寿命がわかる蝋燭がある。青い炎の蝋燭は、今にも死んでしまう。赤い炎の蝋燭は、これからも長生きする。王もそれは重々承知だ。
名前のある王の蝋燭は、青い炎を灯している。
私は、頭を垂れた。
「シド、私の寿命も短いのだな」
吐き捨てるように王は呟く。
悪名高い王は、国民を震え上がらせてきた。逆らう者は、死刑にする恐ろしいお方だ。
「因果応報ということか」
王には、私の親も殺された。ざまあみろ、私は心の底からそう思った。私は、農民育ちでやっとここまで這い上がった。
「最期にシド、私の代わりをお前にしたい」
「──私に?」
「お前ならこの国を任せられる」
この血も涙もない王が私に王を譲るわけがない。なにか裏があるに違いないのだ。
「お言葉ですが、私にはまだ荷が重いのです」
王は、目を閉じて笑った。
「私は、国のために人を殺しすぎた。この罪を償うときがきたのだよ。それが今なんだ」
「しかし」
「なあ、シド。お前の蝋燭も青い炎を灯しているのに気付いたか?」
私は、私の名前がある蝋燭を見た。青い炎を灯している。
「私も死ぬのですか⋯⋯?」
王は、視線を傾け口を開いた。
「青い炎に青い炎を足すと赤い炎になると、宮廷魔術師に聞いた。私は、シドの青い炎に私の青い炎を与えようと思う」
目の前が涙で歪む。
「どうして、そんなことを?」
「今までの罪滅ぼしだ。お前なら民を幸せに導くと思ったからだ。死んでいった者たちには、申し訳なかった」
唇を噛み締めた。
「──私の親は、あなたに殺された」
「すまなかった──」
王は、深々と頭を下げた。今まで威厳がある王は、もういない。
「どうして、今になって⋯⋯こんな」
「⋯⋯すまない。許してくれと言っても許されないだろうがな」
蝋燭の灯火が揺らいだ。
「本当にすまない」
王は、自分の蝋燭を手に持ち、私の蝋燭に近づけた。
「待ってください!」
私は、叫んだ。
「私は、豊かな国を作ります。あなたは私の親を殺したけれど──」
「──すまない」
王の蝋燭は消えた。
消えた蝋燭を眺めた。また、涙がこぼれた。
「王よ、私はあなたを許せない。でも、あなたの想いは忘れない。許せるときがくるのはもうまもなくです」
ふと、私の蝋燭を見つめた。赤い炎の蝋燭はまた青い炎に変わっていたのだ。
「王、私もあなたのもとに近々いきます。そして、酒を飲みましょう。すべてを忘れてね──」
蝋燭の青の炎は、美しく燃え盛っている。




