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第一章 4

翌朝

雲一つないとは言い難いが快晴である。

パタパタとなにかが動き回っている


「おはようございます。」


その声に驚く。

そうだった昨日からこの穴ぐらにはもう一人いたんだった。


永いこと一人で生活していたため、自分以外の人の気配が此処にあることにまだ慣れない。


ファティはずいぶん早く起きて、洗濯や昨日の食事の後片付けと朝食の準備をしていたようだ。


「おはようファティ、ずいぶんと早起きなんだな」


「あら、もうお日さまはてっぺんまで来ていますよ。ふふっオーキーはお寝坊さんなのですね。」


洗い終わった洗濯物をバタバタと上下に振り、皺を伸ばしながら遅めの朝の挨拶に笑顔で答える


昨日あれほど泣き腫らしていたというのにその名残りは微塵も無い


「昨日のスープが残っていたので温め直したのですが、お召しになりますか?」


起きてからぐーぐーと腹の虫が煩く催促している


「ああ、腹が鳴き止まない。頂くよ。」


「でしたら一緒に食べましょう。私もお腹が空いてきました。」


「しかしよくこのでかい鍋を扱えたな」


「大変でしたよぅ、お鍋が大きいから薪もいっぱい使っちゃいました」


「でも、温めるだけでしたから火さえ着いてしまえば後は火力を気にするだけですから」


悪戦苦闘しながら朝食の準備をしている姿を想像して、何だか和やかな気分になる。

面に出さないよう表情筋にぐっと力をこめて。


「そ、そうか、頑張ったな」

「はい!」


「ん、じゃあ早速頂こう」

二人で大きな鍋を囲む。


「んんー、やっぱりこのスープ何度食べてもほっぺたが落ちそうになります。」


幸せそうにファティははふはふと肉を頬張る。

それを見て自然と頬が緩んでしまった。


「オーキーの笑顔、初めて見ました。」

ファティは目を見開き驚いて見せた


「俺、笑ってたか?」

誤魔化そうとするが彼女は見逃してはくれない


「ええ」


さっきまで何とか耐えていたのにとうとう潤けた顔を見られてしまった途端に恥ずかしくなり、天井を仰ぎながら真っ赤な頬をポリポリと掻く。


なんだか今までの自分では無いような感覚、ファティに出会ってなにか変わったのかもしれない。


「さ、さて、飯も食ったことだしファティのやりたいこと、準備するか。」


照れ隠しをするように立ち上がり、洞窟の外へと動き出す。


「ふふっ」


ファティはそんなオーキーをみて可笑しそうに笑う。


「先ずは墓を作らないとな、この森で亡くなったんだ、森自体が墓みたいなもんだから何処に作ったっていいさ。」


「でしたらせめて静かなところに建ててあげたいです。」


「ふむ、じゃあ先ずは場所探しだな。」


「はいっ」


「静かな場所か…」


オーキーは顎に手を当てて少し考えてから


「心当たりが一つあるが行ってみるか?」


「はい、お願いします。私にはこの森のことはわかりませんからオーキーにお任せいたします」


「それじゃあ俺の肩に乗りな。」

そう言って手を差し伸べる


「えっ!?オーキーの肩にですか!?自分で歩けますよっ。」

その顔は子ども扱いするなと抗議している


「そうじゃない、ここからだとファティの足じゃ時間がかかる。俺の足なら直ぐだ。」


「でも・・」


まだ納得しきれずにいる頑固な少女に


「いいから、大丈夫だ。」

とできるだけ優しい声音で言った


「はぁ…そうですか、オーキーがそこまで仰るのでしたら、失礼します…」


不承不承といった面持ちで差し伸べられた手に近づくと、オーキーはファティの胴を包むように掴んだ。


「きゃっ」


小さく叫んだが怖いわけではなかった。

ただ身体が宙に浮く感じに思わず声が出てしまった。


オーキーは気にせずゆっくり慎重に左肩へ座らせる。

オーキーが普段見ている景色は森の木々と同じ目線だ。


体感したことの無い高さに戸惑いながらもその視界にファティの心は踊る


「わぁー!なんて高さかしら!」


「これがオーキーの見ている世界なのですね。視点が違うというだけでこんなにも世界は一変するのですね」


はしゃぐファティになんだか心が温かくなるのを感じる。


「ファティ、あまり動かないでくれ、落ちる」


「あはっ、ごめんなさいオーキー。こんなに高い場所から森を見渡すなんて初めてだったものですから、つい楽しくて」


小さな足をバタバタとさせながら楽しそうに体を揺らすファティ


それにオーキーはハラハラとしながら

「はしゃぐのは構わないが気を付けてくれ」


「はいっ」


ぎゅっとオーキーのごわごわな髪の毛にしがみつく。


「しっかりと捕まっていろ、動くぞ。」


「わっ」


上下に大きく世界が揺れる


のっしのっしとゆっくり歩を進めるが、その歩幅は一歩一歩がファティの十歩分以上に相当する。


動きはゆっくりだが、その移動速度は凄まじい。

平野を走る馬車と変わらない速度で森の中をぐんぐん進んで行く。


小枝を折るように木々をへし折り、押し倒し、障害物など存在しないような足取りですいすいと深い森を物凄い速度で突き進む。


「オーキー」


急に掛けられた声が、耳を擽る


「どうした?ファティ」


「森が可哀そうです」


「えっ」


「そんな乱暴に森を傷つけてはダメ」


「いや、しかしこうしないと歩きづらいだろう」


「ダメ」


人差し指を立て、子供に言い聞かせる様な仕草でオーキーの大きな目を見つめる


「わ、わかった、なるべく傷つけないように避けていく」


「よろしい」


得意げに腕を組んで、小さな胸を張って鼻を鳴らす


こんな顔もするのかと少し驚きながらも、その微笑ましい子供らしさに息を吐く


「はぁ、木を避けていくとかなり揺れるからな、落ちるなよ」





第4話

読みいただき感謝感激雨嵐!

今日もヘベレケは読んでくださる貴方を想いながら

ぐびっと一杯やっております


次話も月曜日の朝7時10分に更新予定です

少しでも気に入っていただけたならブックマーク、イイネよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
墓を建てるとなると、遠すぎず近すぎずの所を探さないとですね。 森を直進しようとしたのか。ワイルドですね〜。 (・∀・) 自然に配慮するようになって何よりです。 (*´ω`*)
ファティがお母さんみたいで微笑ましいなぁ(´ω`*)☀
「そんな乱暴に森を傷つけてはダメ」 「いや、しかしこうしないと歩きづらいだろう」 「ダメ」 いいなぁこれ、無邪気な子供感でててめっちゃ好き……
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